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「水の王子」通信(95)

草原でなかば骸骨の怪物になってたクエビコ。オオゲツヒメと同様に、本来の姿で描きました。半分骸骨になってる設定なので、手足や骨盤の骨を飾っています。
ぶっちゃけ、修正して乳首を描こうかどうしようかと、かなり迷った作品です。ちょうどぎりぎりの位置だもんで。結局自信がなくて、このままにしました(笑)。

日本神話では、彼はカカシの祖先?だとあるだけで、特に記事はなかったと思います。(検索してみたら、ナカツクニの村づくりでオオクニヌシに協力していました。カカシの神というのは、身体がこわれているからだし、知恵と知識の持ち主ともいうから、案外、私の物語の、この怪物のイメージと合ってるかも。)

私の物語のこの怪物のポイントは、「口にした予言がすべて実現すること」という恐ろしい力を持ちながら、それを使おうという積極性はあまりないこと、そして、その予言は「聞く者がいなければ実現しない」ということです。

ちなみに、私の恩師の一人中野三敏先生から、学問研究とは何の関係もなく(笑)私がほめられたのは、中野先生はご自分は運転はなさらないのですが、いろんな人の車に乗せてもらって、九州近辺の山や森を楽しんでおられて、ある嵐のあとで、どこかの場所で巨大な樹木が何本も、重なるように倒れていたダイナミックな情景に強い印象を受けられて、皆に「行ってみろよ、すごいよ」とすすめておられました。お調子者の私はさっそく老母といっしょにおんぼろ車で、現地をさぐりあて、直径が私たちの背ほどもある巨大な樹々が入り乱れて横倒しになっている景色を楽しみました。薄暗い中、写真もいっぱい撮ったのですが、今見つからない。ひょっと見つかったらアップしますね。

次に何人かで食事したとき、その報告を中野先生にして、写真も見せておしゃべりしました。その時に私が、「すごい嵐だったのだろうけど、あの樹々が倒れる場所にいて、その様子を目で見たかった」と口走ると、先生は私がちょっと照れて対応に困って、気の利いた返事ができなかったぐらい、「この話をずいぶん皆にしてまわったけど、そういうこと言ったのは君が初めてだよ」と大喜びでくり返し、「ほめてあげる」みたいなことまで言われたような。

昔何かの本で、山奥で木が倒れたとき、その音を誰も聞かなかったら、その音は存在したことになるのか、というような問題提起がされてたのを、うろ覚えに覚えていたのかしれないけど、私は即座に、そう思ったのです。中野先生にあんなに露骨にほめていただいたのが、こんなことだとは恥ずかしいけど、でもうれしい思い出ではある。

クエビコの姿をこのようにしたのは、その思い出もちょっとはどこかに残っていたからかもしれません。

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カツジ猫