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さてと、この手は?(水の王子覚書11)

「湖よ」が何とか行けそうだし、「川も」もちょっとおぼろに固まってきたし、「沖と」はもはやぐつぐつ煮詰まってる段階なので、そろそろ書き始めようかしらん。でも、他の仕事もたまってるからなあ。奥庭にレンガを運ぶとか、枯れた鉢の花を植え替えるとかいただいたセロリをサラダにするとか(笑)。

このイラストは「沖と」に使う予定の、イナヒです。タカヒコネのペットのけもの。まだまだ大きくなる予定。
 サルタヒコがどっかの港から仕入れて来て、オオクニヌシ一家にくれて、スセリが名前をつけたのですが、恐れ多くももともとは「古事記」上巻のラストに出て来る、「海のかなたに行っちゃった」神さまの名前です。だもんで、イナヒもどっかに行くんですかと心配して下さる方もいらっしゃいますが、そこはもう一度読み直していただきたいので、スセリは名前をつけるとき、ちゃんと「幼なじみで海で遊んでいる時に行方不明になっちゃった男の子」の名前からとったと言うてますやん(笑)。実はちょびっと子どものころに大好きだったオールドリッチ(佐々木邦訳)「わんぱく少年」のエピソードも思い浮かべながら書きました。

これに限らず「水の王子」の名前のつけ方は超適当で、特に最初のころは手当たり次第に神話の中から拾ってきていたので、主要人物以外は、いろいろとすごいことに(笑)。「あんな立派な名前、あそこで使いつぶすんじゃなかった」って後悔することなど、もうしょっちゅう。

「村に」以降では、さすがにちょっと気をつけてますが、それでも話がどんどん進んで名前の手持ちがなくなると、もともとカラスだったはずが、力自慢の少年になったり(「町で」に登場するヤタ)、古事記の上巻最後の皇孫に直結する立派な神さまが極彩色の怪しげな鳥になったり(「畑より」で登場するウガヤ)、それにこのイナヒとか、もはやもう、やりたい放題。

正直、この物語をとっとと完結させて公開してしまっておきたいのは、世の中がどうかこうか変化して、不敬罪でも復活しようもんなら、発禁にされかねないと若いころ、かなりびびっていたからです。まあ最近、他の日本神話ネタの諸作品をネットで拝見するたびに、もうしばらくは大丈夫かと、ひそかに胸をなでおろしてはおりますが、それにしたって油断ができない。

それに、思ってもいなかったちがう方面からの制限も生まれかねなくて、もう何十年も前ですが、出版社の方とお話したとき、のっけからきっぱりと「ヒルコというのは差別用語ですから変えていただきます」と言われて、あーこりゃだめだとそれ以上のご説明はすっぱりあきらめたのですが、言葉狩りってほんとにすごい。そりゃ筒井康隆も断筆宣言したくなるわな。まあ、そっちもこのごろは少しは落ち着いてるようですが。いい方にか悪い方にか知らんけど。

何しろ、この物語は日本神話で出てきたとたんにすぐ消える、ヒルコとハヤオが主人公ですからねー、もうそこんところから世の中にけんか売ってるようなものだし。

天皇制の復活と人権意識の高まりと両方にびびりながら目配りしてると、目がパノラマになりそうですが、こんなことぼやいてる間に、最終おまけの続編を、とっとと書き出せって話よね。画竜点睛になるやら蛇足になるやら、自分でもようわからんのですけれど。

ところで、イナヒの首っ玉をつかんでいる、この手はいったい誰のでしょう? タカヒコネじゃないんですよ、念のため。あらすじはまだ私の頭の中にしかないもんで、どうなることか、お楽しみに(笑)。

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カツジ猫