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ひとり相撲で死闘(笑)

やっとやっと「水の王子」の第六冊目の紙本が、完成しました。表紙の色が薄かったりして何度か修正したりして、手こずりましたが、おかげでなかなかきれいな出来にはなっています。

中味は巻8~10で「畑より」「町で」「丘なのに」の三話が収録されています。ただし、前を読んでなくても、これだけ読んでもお話はわかりますし、楽しめますので、どうぞご購入を。前の二冊が3000円台だったのに比べると、少しだけ薄い分、2500円程度に抑えてありますので、よろしかったら、お試し気分で、お気軽に。なお、電子書籍だと500円。しばらくは無料でも読めるのかな? こちらでお読みになる方もぜひどうぞ。

年内には、あと二冊出して、「水の王子」シリーズ全巻完結という、恐ろしい予定を立てているのですけれど。編集を担当して下さっているパソコン担当の「dynamis life(デュナミス ライフ)」さんが、イラストの挿入や装丁をすごく上手にして下さるようになっていて、多分、作業も早く進むはずなのです。

実際、今も次の第七冊の原稿の最終校正に入っています。実は、年内どころか、十一月までに全巻仕上げて、引き続き、「グラディエーター」シリーズ(全八冊)に入るという、さらに大胆すぎる計画もあったりするのです。

無理はしまいと決めているのですけれど、これがなかなか、そうもいかなくて。
 現在校正中の原稿は、「水の王子」第七冊(「湖よ」「川も」「渚なら」の三編を収録)なのですが、先週末にはほぼ校了と、たかをくくっていたところが、とんでもないミスが見つかりました。イラストを原稿に挿入するとき、私がうっかりして二個所、「※」をつけて空行にして段落をわけるのを忘れていたのです。つまり、段落を変えないまま、文章が続いてしまった個所が二つある。

ふだんなら簡単に、空行を入れて、と指示するだけですむのですが、イラストをきれいに入れてくれているし、行がずれて行くと、何だかややこしいことになりそうで。

このままにしようか、あるいは近くの前後で少し内容を変えて字数(=行数)を減らして調整しようかとも思ったのですが、ここがまた「渚なら」の中の「どうしても知りたくて」の部分で、オオクニヌシとタカヒコネの会話が中心で、ものすごく緊張した場面で、一言一句一文字も、どう考えても変更できない。

案外デュナミスさんにとっては、そんなに大変な作業じゃなくて、あっさり行をずらして下さったのかもしれないんですが、でもとにかく、自分でできるだけはやってみようかと。

老後の資金を吐き出してのたれ死にするのも覚悟で、大枚はたいて自費出版するからには、絶対にかけらも妥協や後悔はしたくない。原稿を書き換えるなら、絶対に前よりいいかたちにしないと、生きてきた甲斐がない(笑)。

まる三日間、原稿をにらんで、読み直して、のたうちまわって、悶え苦しんで、ベッドでだらだらしてました(だんだん話が大げさになってる)。
 その内にふと、削ってもいい個所を思いつきました。そこは、削除したら、むしろ作品としても全体がしまって、よくなる。そう判断できました。

小説でも漫画でも絵画でも、何かを創作する方はおわかりと思いますが、こういう判断はまったく微妙で、わかりにくい。他者の感想や批評は参考にはできても、決して信用できません。とことん孤独な、闇の中の死闘です。
 若いときは、そういう選択や決定をするのが、それはもう恐かった。気が狂いそうになるほど、自分の感覚に自信が持てなかった。
 これだけは、今はちがいます。どこがいけないか、どこをどうした方がいいか、どちらの表現がいいか、困ったり迷ったりはしても、わかる時は完璧にわかります。わかったことを確実に感じられます。それはさすがに年を取った成果で、ものすごく助かります。自分が幸福とつくづく思います。

そういうわけで、今日さっきやっと、修正個所をリストアップして、担当者にメールしました。どの程度、ご迷惑をかけることになるかもしれませんが、もう私にできることはこれ以上は多分ないです。ひたすら、お願いし、お祈りするしかありません。

どれだけの方に読んでいただけるかはわからない。でも、こうやって、公開するからには、最高のものを作り上げたい。残された時間があとどれだけあるにしろ、自分の力があとどれだけ残されているにしろ。

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カツジ猫