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江戸時代概観

(本当は年表(図表)の解説なので、これだけではわかりにくいですが、その内に年表もアップしますので。)

1600年が関ケ原の戦い。勝利した徳川家康が3年後に幕府を作る。
1868年が明治維新。この間、江戸時代ほぼ3百年。

そのほば真ん中が享保の改革。その後、寛政の改革、天保の改革、と3つの改革。
江戸時代は武士が公務員で、本職の戦争のないまま平和が3百年続く。
平和な時代では、たとえ「士農工商」とさげすまれていても、商人の力が強くなりブルジョワジーが発展するのが自然で当然。武士の力は衰える。

西欧の時代区分の「中世封建社会」と「近代市民社会」の要素が入り交じるから、江戸時代は「中世」「近代」ではなく「近世」と呼ばれるのも、そこが原因。

その流れを食い止めて、武士の力を取り戻そうとするのが、3つの改革。武士に対する商人の借金をチャラにしたり、贅沢や華美や風紀の乱れなど、平和だと盛んになるものを抑制し制限し、質素で禁欲的な武士の世界に引き戻そうとする試み。しかし、時代の流れではないから無理があり、後になるほど失敗して、明治維新に至る。

江戸の文学には3つの山がある。前半の真ん中が「元禄」、享保の直後の「宝暦、明和、安永、天明」、後半の真ん中が「文化、文政(まとめて化政)」。
江戸には多くの年号があるが、「元禄」は「力強く華やか」、「安永、天明」は「しぶくて、おしゃれ」、「化政」は「頽廃、爛熟」というイメージが、ぱっと思い浮かぶようにしたい。

心中とか、わびさびとかの「元禄」が健康で力強く、勧善懲悪の読本とか誰も死なないハッピーエンドの人情本とかの「化政」が頽廃とか、一見変だが、作品を読むと、近松の男女は心中してもパワーにあふれているし、芭蕉のわびさびは実は派手である。一方、馬琴の表現は道徳的でも病的で異常だし、人情本はけだるく弛緩している。どちらもどれも魅力的だが、そういう雰囲気はやはり時代のはじまりと終末の差である。(この部分はあとで補充したから、配布資料にはありません。口頭で説明します。)

元禄文化は京坂が中心、化政文化は江戸が中心。古い伝統の土地から、新興の政治の中心へ文化が移動したため。
元禄文化の代表は、西鶴、芭蕉、近松の三大大御所。安永・天明と化政文化は「戯作」。

「戯作」は、江戸時代後半のもの。「寛政の改革」を境に「前期」「後期」に分かれる。
戯作にはいろんなジャンルがある。読本、滑稽本は、前後期とも名称が同じ。洒落本は人情本、黄表紙は合巻になる。

読本は前期が秋成、後期は馬琴。京伝は前後期、全ジャンルにわたって活躍。後期の人情本は春水。滑稽本(談義本も)は前期が源内、後期は一九。黄表紙は春町、合巻は種彦。

この中で黄表紙と合巻は、全編が絵本。戯作の中では最も低級とされる。これは「草双紙」と言われるジャンルと重なり、元禄以来の赤本、黒本、青本に引き続く。

江戸時代の演劇は、人間がやる歌舞伎と、人形が演じる浄瑠璃。
歌舞伎は初期の阿国歌舞伎、女歌舞伎、若衆歌舞伎を経て、現代と同じ野郎歌舞伎になる。元禄ごろは、江戸の荒事(市川団十郎)、京坂の和事(坂田藤十郎)が栄える。化政以後は鶴屋南北の「生世話物」など。
浄瑠璃は、初期の金平浄瑠璃などを経て、享保のころに合作制度で「忠臣蔵」「千本桜」「菅原」の名作を生む。

今では知られた、以上の江戸文学は、当時の人には「俗文学」で、正式の文学ではない。昔のマンガ、今のラノベやケータイ小説もどきの一段下の非公式な存在。
それ以前からあった、和歌、連歌、物語などの「雅文学」が、あくまでも正式な文学。

和歌は、哲学の歴史ともかかわる。初期の朱子学、続いて流行する古義学、古文辞学、から生まれた国学が、万葉集の評価を高め、勤皇思想にもつながる。

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