発表資料⑳
皆さんは「それいけ!アンパンマン」を知っているか。
知っている人は、「それいけ!アンパンマン」にでてくるバイキンマンについてどのような印象を抱いているだろうか。
きっと、私達が「ぬれぎぬ」という言葉について抱いていたように、悪いイメージを持っている人が大半だろう。私は、本当にバイキンマンがイメージ通りの悪者なのかがとても気になった。
そこで私は、テレビアニメ「それいけ!アンパンマン」の第48話「アンパンマンととぶ木馬」における「ぬれぎぬ」について、物語の内容をおさえつつ考えていく。
第48話「アンパンマンととぶ木馬」はカーニバルのシーンから始まる。(アンパンマンの世界ではカーニバルと呼ばれているが、見た目は私たちの世界における遊園地に近い)カバやねずみなど多種多様な動物が楽しそうにメリーゴーランドで遊んでいるところを、バイキンマンは「楽しそうだなぁ~、俺様も乗りたいなぁ~」と言いながら茂みに隠れてみている。我慢が出来ないバイキンマンは、変装をしてメリーゴーランドの順番を待つ列に並ぶのだが、その際に並んでいる人?の間に割り込んでしまった。そのため、割り込まれたウサギさん?と口論になり、騒ぎに気づいたチーズ(犬)にしっぽを噛まれ、変装がとけてしまう。姿をあらわにしたバイキンマンを見た人々は「わぁ~バイキンマンだ、また何か悪さをしに来たんだ、逃げろ~」と言ってカーニバルから去っていく。周りに誰もいなくなった後、一人バイキンマンは「ちぇ…誰もいなくなっちまった。俺様はただメリーゴーランドに乗りたかっただけなのに」と寂しそうに言って空き缶を蹴飛ばす。
このシーンにおける「ぬれぎぬ」は、バイキンマンの姿を見ただけで、周りの人々が悪さをしに来たと決めつけていることである。
バイキンマン:「楽しそうだなぁ~、俺様も乗りたいなぁ~」
バイキンマン:「ちぇ…誰もいなくなっちまった。俺様はただメリーゴーランドに乗りたかっただけなのに」
上の、二つの発言から、バイキンマンは悪さをしに来たのではなく、メリーゴーランドに乗りたかっただけであることは明らかである。また、カーニバルを茂みに隠れてみなければならない、変装をしなければ列に並ぶことも許されないという状況も考えると、少しバイキンマンがかわいそうに私は思えてくる。
さて、物語にもどろう。場面は、パン工場でのアンパンマンと周りのキャラとの会話に移る。以下が、その会話の内容である。
アンパンマン:「え、カーニバルにバイキンマンが。それでどんなイタズラをされたんですか。」
バタ子:「それが変なのよ。バイキンマンがいなくなってから調べに戻ってみても何も壊されたりなくなったりしていなかったの。」
このシーンでも、先程のシーンと同様にバイキンマン=悪さをすると決めつけているという「ぬれぎぬ」がみられる。たとえ胸の傷が痛んでも、みんなの夢を守るため行動を起こすアンパンマンでさえ、バイキンマン=イタズラをすると決めつけていることが発言から見て取れる。バタ子に関してはわざわざ言うまでもないだろう。
この後、バイキンマンは自分一人でもメリーゴーランドに乗れるよう、エネルギーを持った手綱をつくり、誰もいないカーニバルに行くが、手綱を木馬にかけたところでドキンちゃんにその木馬を横取りされてしまう。バイキンマンは怒ることなく手綱を用いた木馬の操作方法をドキンにレクチャーするが、エネルギーが暴走し、ドキンを乗せた木馬が町の夜空に飛び立ってしまった。バイキンマンはドキンを助けるべく例の乗り物に乗って木馬を追いかける。その姿を目にしたアンパンマンも二人のあとを追う。バイキンマンとアンパンマンは二人で木馬を追うのだが、その途中、バイキンマンはトンネルに衝突し乗り物が破損し、「あとは任せて」と言ったアンパンマンも滝に突っ込んで顔が濡れてしまい力が入らなくなってしまう。どうしても、ドキンを救いたいバイキンマンはアンパンマンの新しい顔を求めて、泥にハマって動かなくなったアンパンマン号のもとに駆け付ける。
バイキンマン:「アンパンマンの新しい顔をくれ。俺様が届けてやる。」
バタ子:「だめよ~信じられないわ、あなたがアンパンマンを助けるなんて」
チーズ(犬):「アンアン」
バイキンマン:「ドキンちゃんが大変なんだ。嘘じゃない。信じてくれよ」
ジャムおじさん:「よし分かった。アンパンマン号につんである新しい顔をあげよう」
このシーンでは、バイキンマンの自分のプライドを捨てて、ドキンちゃんのために敵であるアンパンマンを助けようする、優しさが感じ取れる。しかし、相変わらずバタ子はその優しさを目の当たりにしてもバイキンマン=悪さをすると決めつけている。(ぬれぎぬ)プライドを捨ててまで、大切な人のために頼んだにもかかわらず、理解されず、あからさまに悪者扱いされているバイキンマンの心情を考えると、私まで辛くなってくる。
結果的にその優しさを見抜いたジャムおじさんのおかげでバイキンマンは新しい顔をアンパンマンの元にとどけることができ、元気百倍アンパンマンと共にドキンちゃんの救出に成功する。
以上が、テレビアニメ「それいけ!アンパンマン」の第48話「アンパンマンととぶ木馬」の物語の内容と見られる「ぬれぎぬ」である。
私は、今回「ぬれぎぬ」に着目して「それいけ!アンパンマン」を見て、バイキンマンは私たちが思っているほど悪いやつではないと感じた。また、集団で一人の人に「ぬれぎぬ」を着せることで、着せられた側がどのような思いをしているのかを想像すると同時に、その危険性も感じることができた。
あまり「ぬれぎぬ」とは関係のない部分ではあるが、第48話「アンパンマンととぶ木馬」で私が印象に残ったジャムおじさんの発言が二つある。一つ目はアンパンマンの新しい顔を抱え、アンパンマンのもとへ駆ける、バイキンマンの後ろ姿にむけた「信じてるよ。バイキンマン。」である。二つ目はドキンちゃんを救出したあと、ドキンちゃんがアンパンマンにお礼を言っている中、敵であることを理由に、素直にお礼の言えないバイキンマンに対しての「また、困ったことがあればいつでもおいで」である。私は、このジャムおじさんのように、自分の身の回りのバイキンマン(なんらかの「ぬれぎぬ」を着せられていることによってつらい思いをしている人)に気づき、その人を信じて、救いの手を差し伸べることのできるような教師、人間になりたいと強く思った。
《参考資料》
・「アンパンマンの映画大好き」〈https://アンパンマン.net/tobumokuba/〉(2020年 7月10日閲覧)