発表資料(21)
たこさん
テーマ:「江戸時代の人の理屈っぽさ」について
①鎌田道隆「江戸時代の庶民の家出と伊勢参り」奈良史学29号 2012年10月
・江戸時代の京都では、市民の家出が多発していた。
・経済的に恵まれていない市民が、生活環境の貧困からの家出が多い。
・伊勢参宮が家出の理由であれば、信仰という観念を含むため、家出としては届けられていない。
事例の中に、雇われた店のものを持ち出して家出し、数日後元のまま持ち帰ってきた者がいた。対応としては、被害はなくとも盗みと同じ行為だとして、解雇の選択肢が挙げられていた。被害はなくとも盗みは盗みという態度をとるが、家出であっても参宮であれば家出としないというのは、筋が通らず、むしろ理屈っぽくないと感じた。
②中舎林太郎「江戸時代庶民の法的知識・技術(二):飛騨国を中心に」名古屋大學法政論集 2009年12月
・江戸時代の庶民は文章作成技術を活用していた。
・交渉技術を有した仲裁人による合理的な判断により、紛争を和解させる事例が多く見られた。
・法廷では、訴訟能力を欠くと思われる当事者と共に出廷・助言する者が認められていた。相手の提示する証拠の証拠能力を低下させて、自分を有利に導くという弁論技術を庶民が用いていた。
理屈っぽさに関する記述は見られなかったが、少なくとも法廷という理屈っぽくあることが望ましい場で、十分に活躍する能力を庶民が持ち合わせていたことがわかる。
③宇佐美英機「江戸時代庶民の破産と再興」福井県文書館研究紀要 2006年3月
・幕末から明治にかけて、分散(自己破産)が多く見られた。
・借金を、現在は返せないが将来返すことを約束する「出世証文」の慣習があった。
理屈っぽさに関する記述は見られなかった。
④石川寛子「江戸時代と江戸の暮らし考」1994年
・人口の増加から停滞、都市に人口が集中するという傾向は、現代と江戸時代で類似している。
・社会が平和になるにつれて女性が生活の実権を握るところも多くなった。
・江戸時代の職人・商人階級の暮らしは、武士・農民と違いまずまずの気楽なものであり、中流意識のもとに生活水準が向上した現代と共通点がある。
理屈っぽさに関する記述は見られなかった。
まとめ
今回、江戸時代の人の理屈っぽさについて見つけることはできなかった。しかし、江戸時代の庶民には交渉技術や弁論技術、契約を書類にする等の管理意識があったと考えられ、このようなきちんとしている特徴が、見方によっては「理屈っぽい」に発展していくとも考えられる。