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発表資料(3)

(もう少し見やすく編集するかもしれませんが、一応アップしておきます。)

いるかさん

⑴    江戸時代の人の理屈っぽさについて

【参考文献➀】

『「江戸っ子」の人物像とその実体』田中克佳、2003年、慶應義塾大学

・江戸は、政治・経済・文化のあらゆる方面にわたって日本の中心地であった。江戸の住民は独特の気風・文化を持った「江戸っ子」と呼ばれ、古い伝統を持った公家の町衆や大阪の町人と並んで近世日本の庶民を代表する一つの類型を形成したのである。

・「江戸っ子」とは、けんかっ早く、浅慮で、向こう見ずな人のことである。『東海道中膝栗毛』や『浮世風呂』のような滑稽本には江戸っ子の悪口が散々に書かれているが、これは江戸っ子は本を読むことがないために遠慮なく書かれたと思われる。

・「江戸っ子」は江戸ではだれにも相手にされなかった。そのため、田舎者が来るとここぞとばかりに気前を見せるのだが、気前を見せるためにはお金が必要だ。江戸っ子はあまりお金のかからない手拭や足袋に気を遣い、田舎者の古びたこれらを見つけてはあざ笑っていたという。

 

上記が『「江戸っ子」の人物像とその実体』の要約である。江戸時代の人の理屈っぽさについての記述を見つけるためには江戸時代の人間の人物像についての記述を探せばいいのではないかと考え、この論文を読んだのだが、この論文には江戸時代の人の理屈っぽさについての記述はなかった。

分かったことは、「江戸っ子」は見栄っ張りだったということであった。

 

【参考文献②】

『夏目漱石の『坊ちゃん』における江戸っ子と個人性』ジャメ・オリヴィエ、2009年3月1日、天理大学学術研究会、49巻

・1906年に出版された小説『坊ちゃん』において、主人公は江戸っ子気質を持った人物として描かれている。「漱石が描こうとする江戸っ子気質は、天真爛漫さや率直さ、真実らしさが現れる個性の生粋な状態での噴出と完全に一致し、見せかけや社会的偽善や自由の制限に断固として反対する。 」

・坊ちゃんを性格付けているのは、次の四要素である。

➀行動様式・言葉・外観の他の人物との相違。

②衝動、血気、短期、前後の見境のない性格。

③素朴さ、素直さ、堅気さ。

④江戸っ子に相応しく振る舞うという真の理想像。

・坊ちゃんにおいて具現化されている江戸っ子は、他人の自由を尊重しつつ行動する個人に一致する。当時輸入されていた西欧思想の個人主義の影響は受けていないようだ。

 

 上記が『夏目漱石の『坊ちゃん』における江戸っ子と個人性』の冒頭部分の要約である。この論文には江戸時代の人の理屈っぽさについての記述はなかった。その代わり、漱石の描く江戸っ子は素朴であり、素直であり、堅気であることが分かった。

 

【参考文献③】

『日本の教育思想⑴~江戸時代の教育機関から見えてくる教育思想~』中田正浩、2013年3月15日、環太平洋大学研究紀要、第7巻

・江戸時代とは強固な身分制度によって形作られた時代であり、儒学思想はその秩序を維持する最適な思想だった。しかし、学問をすることの意味は時代・支配者・被支配者によって多種多様である。

・江戸時代には、儒学を基盤とした朱子学が栄えた。時の権力者は「五倫の道」を正しく実践する生活を庶民に求めたのである。「五倫の道」とは、封建制度のもとにあって人と人との関わり方、ひいては生き方を説くものである。このような人を固定的にみる思想は、江戸幕府の幕藩体制維持にとって好都合だった。

 

 上記が『日本の教育思想⑴~江戸時代の教育機関から見えてくる教育思想~』の要約である。江戸時代の人の理屈っぽさについて教育という観点から記述を探してみたのだが、この論文には確認できなかった。しかし、江戸の人々にとっての学問をする意が、幕府などの支配者によってコントロールされていたものであることを知り、もしかすると理屈っぽいという特徴にも支配者と被支配者の関係性が関わってくるのではないかと思った。

 

【参考文献④】

『浮世絵にみる江戸の生活展』江本祐子、1980年発行2020年10月22日公開、65巻

・浮世絵版画は十七世紀の半ば、当時の江戸庶民生活をテーマに菱川師宣の墨一色による墨摺絵に始まり、筆彩色の丹絵・紅絵・漆絵、さらには色摺版画として紅摺絵・錦絵へと順次その制作技法を発展させつつ、常に各時代時代の世人風俗描写、つまり人間生活の千姿万態を描き尽くしていた。

・浮世絵と言えば一部研究者や愛好家は別として何か遠い昔の古めかしい美術のように思われがちであるが、江戸時代において浮世絵、特に版画はその低廉性・複製化・速成性において絶大な支持を持ち庶民に受け入れられ、絵師もまた鑑賞者である民衆生活を写して彼らの好みに応じたため、浮世絵はますます江戸社会の文化的・美術的な軸として進歩発展し、その役割も現在で言うニュース性や流行をふんだんに盛り込んだものだった。

・浮世絵は、江戸時代のもっとも先端を行く文化社会を形成していたと言えるだろう。

・庶民にとって生きやすいとは言えない江戸封建化にあって、版画一枚一枚に彼らの心の叫びや旺盛な活力が満ちている。そのエネルギーが現代を生きる我々にもひしひしと感じられるのが浮世絵の魅力である。

 

上記が『浮世絵にみる江戸の生活展』の要約である。庶民生活を描いた浮世絵にならば、江戸時代の人の理屈っぽさについてのヒントが隠されているかもしれないと考えこの論文を読んでみたのだが、それらしき記述を見つけることは出来なかった。

しかし、参考文献④と同じ、「庶民にとって生きやすいとは言えない江戸封建化」という記述があったため、支配者と被支配者の関係性は、江戸時代の人の理屈っぽさに何らかの関係があるのではないかと考える。

 

【まとめ】

 今回4つの論文から「江戸時代の人の理屈っぽさ」に関する記述を探してみたが、それらしきものを見つけることは出来なかった。しかし今回のレポート作成を通して、江戸時代の人々が愛した文化や生活、江戸っ子の実態など、今まで知らなかったことを知ることができたように思う。

その中で私が気になったのは、「江戸封建社会における支配者・被支配者の関係性」である。幕府によって思想の統制が行われるなど、庶民にとって決して生きやすいとは言えない江戸社会において、江戸時代の人々の特性は現代人の自由な姿とは異なっているはずだ。このことから、理屈っぽいという性質は社会的な背景があると考えたため、今後は論文と合わせて関連する図書も探してみたい。

 

 

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