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発表資料(8)

さばさん

② 江戸時代に関する論文や著作を読み、「江戸時代の人のぬれぎぬ好き」について、何らかの言及があるものを探す。

 

[はじめに]

 今回の課題に取り組むに当たり、事前にテーマが四つほど示された。中でも初めの二つは、「江戸時代の人物に関する特徴」に関するもので、一つは「理屈っぽさ」、もう一つは「ぬれぎぬ好き」である。私は初めにこのことを聞いたとき、具体的なものが自分の中で浮かばず首をかしげていた。しかし、他の受講生が、「落語で考えると確かにそうかもしれないと感じた」と発言しているのを聞き、言われてみるとそのような側面があるかもしれないと非常に納得した。

 そのため今回私は、テーマの二つ目「江戸時代の人のぬれぎぬ好き」について主に落語の面から考え、論文等を調査していきたいと考える。

 

[調査結果]

1.

福盛貴弘 「『刻うどん』にあって『時そば』にないくだり-暑けりゃ肌脱げ、寒けりゃ袷着-」

(『北海道言語文化研究』14巻 2016年3月)

概要:16文のうどんを15文で食べるために、勘定の時にお金を数え上げながら途中で「今何時か」と問い、1文ごまかしたという話を聞き、それを真似しようとした人が失敗してしまうという「刻うどん」の話と、よく似た内容の「時そば」の話を比較するという内容の論文である。

→江戸時代の人のぬれぎぬ好きについての言及は無し。

 

2.

西村大志 「上方落語『無いもの買い』考-比較文化論とコミュニケーション論の視点から」

(『日本研究:国際日本文化研究センター紀要』27巻 2003年3月)

概要:上方落語である『無いもの買い』という作品について考える論文である。この作品の落語全体での位置づけ確認と比較文化論的検討をし、コミュニケーション論について考察している。

→江戸時代の人のぬれぎぬ好きについての言及は無し。

 

3.

中井和子 「『ぬれぎぬ』考」 (『京都府立大學學術報告、人文』13巻 1961年9月)

概要:平安時代前期辺りから使用がみられる「ぬれぎぬ」という語であるが、この時代では代でもよく使う意味をもつようになっていった。どのようにしてこのように意味が転じて「濡れた衣」の意味として使用されていた。しかし時代が下るにつれ「無実の罪」という現いったのかについて歌を用いながら考察していく論文である。恋愛とぬれぎぬとの考察が多く見られた。

→江戸時代の人に対する現代語の意味での「ぬれぎぬ」との関連性についての言及はなかったが、「濡れ」という者に対して、好色文化の栄えた江戸時代での用いられ方については言及されていた。

 

4.

菅野則子 「江戸時代における女性の犯罪」 (『帝京史学』21号 2006年2月)

概要:江戸時代の犯罪についての内容を身分の点から確認し、その中でも女性の犯罪について特に言及する論文である。追放刑のあり方に特徴的なことがみられるという結論を導いている。

→江戸時代の人のぬれぎぬ好きについての言及は無し。

 

5.

鈴木貞美 「日本の小説話法の特殊性をめぐって-曽根博義『小説の方法』批判」

(『日本研究:国際日本文化研究センター紀要』5巻 1991年10月)

概要:日本人特有の「曖昧さ」という観点において、外国との比較において実際には英語の方が曖昧さを与える表現もあるなどと、違和感を覚えるところを示し、その事を踏まえたうえで、日本小説の話法について論証する論文である。江戸時代の落語については、伝統的話法の紹介として取り上げられる。

→江戸時代の人のぬれぎぬ好きについての言及は無し。

 

6.

渡邊弘 「日本人の倫理観の変遷(その1)-江戸時代から明治時代まで-」

(『作大論集』10号 2020年2月)

概要:現代の日本における、諸外国からの心配りや礼儀正しさに対する評価を元に、日本の倫理観や道徳観がどのように変容したのかを江戸時代から明治時代までで検討する論文である。江戸時代の倫理観の特徴としては、「修養や養成、またそれに類する言葉などを通して、全人的な視点から自己の素地をしっかりと耕し鍛えていくことこそ人間としての生き方の根本である」「個々の人々が関係的状況に応じて内面に抱く倫理的な超自我としての『天道』を思想的拠り所として、日本的ともいえるきわめて渾然としたコスモロジーに生きていた」などが挙げられている。

→江戸時代の人のぬれぎぬ好きについての言及は無し。

 

7.

吉村一郎 「江戸時代の商人像」 (『関西国際大学地域研究所叢書』1巻 2004年3月)

概要:江戸時代の商人について主に西鶴の訓言を見ながら考察する論文である。「儲かる話を持ち掛けられたら、断る」「商人は学んだ知識に独自の創意工夫を加えた『知恵』を活用することで立派な商人となる」「時間管理を細かくする」など、江戸時代における商人がどのようなことを大切にしていたのかが書かれている。

→江戸時代の人のぬれぎぬ好きについての言及は無し。

 

[おわりに]

 今回、「江戸時代の人のぬれぎぬ好き」というテーマに基づいて様々な論文を読み、言及されているものがないかについて調査を行ったが、少なくとも私が見た7つの論文ではそのことについて述べられていなかった。しかし、江戸時代に関する論文や落語に関する論文等を読み進めると、挙げたテーマと観点は異なるものの、「ぬれぎぬの語源」について書かれているものや、「江戸時代の商人の人柄」について書かれているものなど、興味を引かれる内容が多くあった。

 今後は、さらに多くの論文や著作に目を通し、再度「江戸時代の人のぬれぎぬ好き」について言及がないか調査を進めていきたい。また、「ぬれぎぬ」という言葉の語源には私自身非常に興味をもったため、そちらについても研究してみたいと考える。

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