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断捨離新世紀(6)トネリコでクリスマス

トネリコでクリスマス

バロンのお墓

今まで飼ったペットの命日には、庭の墓に花を植えてやったりしていた。次第に忙しくなったり命日も増えてきたりして、なかなかそれも思うにまかせなくなり、最近では寄植えの鉢を買ってきておいたり、花や木の鉢を買ってきて並べたりする。今、うちの庭で一番立派な花を咲かせる赤いバラは、しっかり者の三毛猫シナモンの命日に買った鉢植えを、そのまま奥庭の月桂樹の横に地植えしたもので、さすがはシナモンらしいと、妙に感心させられる。

猫は多いが、犬はたった一匹しか飼っていない。バロンという血統書つきの立派なスピッツで、賢くて穏やかで、優しいようで意地も強い、純血種の優秀さを感じさせる純白の名犬だった。スピッツとしてはとても大柄で、めったに鳴くこともなく静かだった。ブリーダーの方の説明では、もともとスピッツとはそういう犬種で、流行のために粗製乱造したから、小さくて神経質でキャンキャン鳴く個体が増えてしまったのだそうだ。

十四歳まで長生きしたが、私が手入れを怠ってブラッシングをさぼったせいか、猛暑の夏に庭で倒れて熱中症で死んでしまった。私は自宅の一部の、彼が暮らしていた物置の土の床を掘って彼を埋め、その上に大理石かなんかのタイルを張り詰めて、彼を埋めたところだけに真っ白いタイルを敷いた。ある意味、墓としては一番上等かもしれない。

トネリコを植える

それからもう二十年にもなるのだが、数年前の彼の命日に私は何を考えたか、たまには樹木もよかろうかと、小さいトネリコの鉢植えを買った。そして、命日後しばらくして、何気なく玄関脇のツツジの茂みの横に、そのトネリコを植えた。
私は知らなかったが、トネリコとりわけシマトネリコの成長と言ったらものすごいもので、あっという間に大木になるから、よく考えて植えるようにとネットでは注意書きがされている。

私はいまだに、わがトネリコがシマトネリコか何か知らない。いずれにせよ、最初はそうでもなかったが、いつからか、突然、枝が四方にのびはじめ、朝夕水まきのたびに切ってもめげずにどんどん生えてくる。しかも上にも伸びて行く。
この家はもともと農地だったこともあって、土がよいのか花も樹木もよく育つ。特に数年するといきなり育つスピードが増す。それはわかっていたけれど、この木の早さは常軌を逸している気がした。

しかも私は最近庭造りにいそしんでいて、この玄関脇の前庭は、ちょっと気持ちだけ日本風の古風な感じにしようと、ツツジにモミジにサザンカにツバキといったようなレトロな苗木を選んで植えていたところだった。
そこにトネリコは、どうやっても合わない。いっそ切り倒してやろうかと思ったが、けなげなバロンの顔を思い出すと、それも何だかしのびなかった。

刈り込めば、もしかして

とにもかくにも、てっぺんの部分は切って、成長をとめた。広がる枝を毎日切っている内に、ふと同じことなら切りそろえて、かたちを作ろうかと思った。もちろん動物のかっこうにするとか、そんな高級なことは望めないが、三角形のクリスマスツリーに近いかたちぐらいなら何とか行けるのではないだろうか。

今、それをめざして毎日刈り込んでみている。案外そうなると枝は伸びてくれなかったりして、まだ道は遠いが、クリスマスごろまでにはツリーに近いかたちにならないだろうか。
そう思うとつい、通販で、ツリーにまきつけるチェーンの鎖までいくつか買ってしまった。その内に、上につける星なんかも、どこかで見つけてこようかと考えている。
クリスマスに、うまく雪でも降れば、玄関前に生え抜きのツリーもどきが誕生するかもしれない。だったら、ここにこの木があっても、そう悪くはないんじゃないだろうか。

よせばいいのに、とどまるところを知らない私は、ついでのついでに竹も一本買って、トネリコの向かいに植えておけば、七夕も自前の木でできるじゃないかと途方もないことまで考えたが、その話はまた今度。(2021.10.29.)

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カツジ猫