「インセプション」感想(1)。
って、この映画見たら、もうあと、今かかってる映画で見たいのがほとんどなくなった。もっと、ちびちび見とくんだったなあ(笑)。
「インセプション」、細かいことはとにかく面白かったです。あっちこっちきっと、わかってないとこやまちがえてるとこはあるんだろうけど、そんなことはどうでもいいぐらい、画面はきれいで役者はうまくてテンポはよくて、「もうさっぱりわからん」と観客がさじを投げたくなるぎりぎりで、一応面白く見られる程度にちゃんとわけわかるようにしてくれているし(笑)。
でもねー、いきなりいちゃもんつけると、タイトルなんとかならないのかなあ。私の英語力はさっぱりだけど、それにしたって、いんせぷしょん、とか言われたって、まるで何のイメージも浮かばないぞ、少なくとも私は。
こういう、わけわからん映画だからなおのこと、横文字カタカナ使いたかったらそれでもいいから、もうちょっと何とかイメージの伝わるものにしろや。手抜きだろーが。
発想は誰でも、とは言わないけど考えつく人はいると思うんですが、「人の頭の中に進入して、脳を乗っ取る」というのは、そんなに珍しい設定じゃないし。ただ、それをこれだけ、不自然でないように細部をつめて、つじつま合わせて、リアルに気持ちよく見せてくれるのがすごい。
脚本や撮影もうまいのかもしれないけど、案外この映画を、これだけリアルに見せてるのは、まさに王道の、役者の演技のうまさじゃないかなあ。ディカプリオもコティヤールも、その他の皆も、こんなとんでもない設定を全然、不自然に見せない、それこそ文芸大作級の演技をしてる。
特にコティヤールときた日にゃあ。下手したら、ホラー映画のお化けなみに恐くなるはずの役で、実際ぞっとするほど恐いのに、切なくて哀れで美しくて、憎めないし拒絶できない。だからディカプリオの気持ちが、ものすごくよくわかって、ものすごい説得力がある。そこがなかったら、この映画の芯というか要というかがぐらぐらになるんだけど、そこがしっかりしてるから、あとはもう、何がどうでもとにかく共感させられてしまう。
ディカプリオって最近こんな役多いんで、それもどうかって思うんですが、彼の相手役の女優が普通程度にしかうまくなかったら、そこをあんまり表に出したり中心にすえたりできない。だから、彼の葛藤や苦悩を観客が脳内補完するしかない。
今回は、その心配がないから、これでもかってぐらい、彼の悩みが説明されるし描かれる。多分、映画全体の中でかなり時間とってないか?普通なら、あの活劇の中で、あんな愛の苦悩をだらだら描かれたらだれるのに、そこがまるでムダにも邪魔にも感じられない。しっかり本筋にからんで、支える。
ほんとは、その愛の話だって、実はあっちこっちおかしいし、よく考えたらそうか?ってとこもあるような気がする。でも、もうそこを、コティヤールの表情やたたずまいは、「ようわからんけど、そうなんだろうなあ」と見てたらついつい納得させてしまう。理屈じゃないんだよね。まあ、演技ってそうあるべきなんだろうけど。
そこがしっかりしてるから、あとはもう、何でもやれるってぐらいのもんだよなあ。どんな派手なドンパチでも、どんな突飛な設定でも、その根本にコティヤールのかなしーい表情があれば、もう何があったって、作品世界はゆらがない。
もちろん、彼女のそのうまさが、浮かない、ムダにならないだけの演技をディカプリオはじめ、皆がしっかり、きちんとやってることもあるけれど。
はたして長すぎたんで(笑)、わけます。