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「トロイアの女」のこととか

ちょっとだけ、書くと言っては書いてなかった宿題を片づけておきます。

先日、北九州市立美術館のルオー展に行って来ました。
子どもの時、美術の教科書のルオーの絵を見て、こんなんどこがいいかわからんと思っていました。大学生の時だったか、福岡でルオー展があって、初めて原画を見て、その暖かさ、力強さに魅了されるとともにショックを受け、「絵画って、実物を見ない内は、見た気になっちゃだめなんだ」と確信したのだから、貴重な体験でした。

その時に比べると、規模も小さかったし、感動もそれほどではなかったけど、やっぱりほのぼの安らぎました。
それとあそこの喫茶室はよさそうだった。時々行ってみよう。

その少し前に、博多座に宝塚を見に行きました。これは最近子どもの本で読んだ(普通の文庫本では前に読んでいた)「大尉の娘」を、どう劇にしているか見たかったからですが、なかなかうまくやっていました。
私が若いころの宝塚は、男役の人でもどことなく女性っぽい体つきだったんですが、今はもう完璧に声も姿も美青年そのもので、すごいとしか言いようがない。主役のかっこよさはもちろん、忠実な従者役や、もうけ役の悪党(でもないか、革命家の反逆者だから)役の人たちの太い声や、それらしいしぐさに感じ入りました。

その革命家役の準主役のプガチョフを演じた人が、これは人気があるだろうなあと思っていたら、パンフレット見ると「ウェストサイド」でベルナルドやった人だって。さもありなんすぎて笑ってしまいました。

これは宿題じゃないけど、書いておかないと忘れそうなので。
若い人に「トロイアの女」の映画を説明していて、つい、日本でやった演劇の「トロイアの女」も見たくなり、利賀(とが)の演劇祭の時のDVDを買ってしまったけど、うーん、白石加代子の演技は迫力で豊かで文句ないんだけど、他はつまらんなあ。映画と同じにするわけにはいかんだろうから、工夫したんだろうけど、時間ないから乱暴に言うと男がでしゃばりすぎ。もうすみからすみまで。

男がやった戦争の後で、男がいなくなった時に、残った女たちだけが、味わう悲惨の話だよ。そこに今さら男が出てきて、男のすることいろいろして悲惨さ強調しなくてもいいの。

この劇では、男がいなくても、男の作った悲惨な世界を見せなきゃならないから、男はいちゃだめなの。だいたい、あの変な地蔵のもったいぶった悲劇っぽさは何よ。最初から最後まで何深刻ぶってんのさと、歯が浮いて吐き気がしたよ。あんなのを舞台中央に、すみっこでもいいけど、とにかくおいて、世界の象徴みたいにすると、ぶちこわしだろ。

この世界を支配して、まとめるのは、ヘカベーでなくちゃならんのです。かつての女王、悲惨な老女、やがて死ぬ運命の人。彼女の統括し、見通す世界なの、ここは。エウリピデスの昔から。

ほんとに、こんなにしたり顔で、なーんもわかってない舞台も珍しい。その演出家か脚本家かの方が、演劇論とかをいろいろ語っておられる後半を、バカにしながら見てたから、それも疲れた…いや実は、そこそこ楽しんだけど。

ぎゃあ、もうこんな時間。片づけ仕事にかからねば。

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カツジ猫