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「壺石文」残り。

◇例の紀行の残り。これで最後です。

家人おどろきて、すなはち、むかひとりて、とかう、くすし(医者)などたのみ来て、とりまかなひけれど、われかのけしき(意識不明)にて、かひなし。二日ばかりは、ひとことをだに、いはざりけるが、みか(三日)といふにぞ、うつゝごゝろいできて、ありし事ども、つぶつぶと、まねびてける。ほとりの人々つぎつぎ伝へきゝて、きとぶらふ(訪問する)毎に、としごろ、おのがなしたる、まがわざ(悪事)どもを、ことごとに、みづからかたるめり。かたらふほどは、やけそこなはれたるきずのいたみ、すこしはゆるびぬるこゝちすめれど、もだある(沈黙している)時は、たへがたくなん。やかれたるあとは、くりにこがれて、うみ血もいでず、ふくれあがりて、蟹といふものゝ甲のごと、かたく見ゆ。十日ばかりがほど、くちばしり、かたりのゝしりて、しにけり」となん、真福かたらひける。

◇なるほどね。このまま死んだら何があったか、誰もわからないわけで(笑)。懺悔か贖罪のために、死ぬまでに自分の動物への虐待などの悪事や、その結果どんなめにあったかを、訪れた人に話し続けなければならない。
江戸時代には、他にも猟師などが夢を見て反省して仕事をやめるみたいな話もあって、動物を殺したり傷つけたりすることに、抵抗があったことがわかります。それにしても、この話は、かなり強烈な方でしょう。

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カツジ猫