「蜘蛛の糸」のカンダタ気分
よそでは満開なのに、なかなか咲かなかったわが家のチューリップが、やっと開き始めました。わりと変わり種のを植えていたのだな私。あれおまえチューリップ?と見直したくなるぐらい、小さめでかわいいです。
桜の後にすぐ続く源平つつじも開き始めました。刈り込んだのがよかったのか、今年は下の方の源氏の旗色の白いつつじが、いやに勢いがいいですね。
どちらにしても、最近は野良猫があまり来なくて、糞害もないのがとても助かります。隣の空き地に不動産屋さんが立てた、立入禁止の札が功を奏して、遠方からわざわざ車で餌やりに来られていた方が、いらっしゃらなくなったのかしら。わかりませんが。
それでも猫たちはときどき、ぞろぞろ連れ立って空き地に来て餌やりの人を待っているようです。先日私がラグラスを植えたあとで、土の残りをパンジーの鉢に補充しようとしていたら、突然すっと中ぐらいの大きさの猫が二匹現れて、私にすりついて来たのでびっくりしました。多分、エサをやっていた人が土の袋と同じような大きな袋からエサをすくって与えていたので、勘違いしたのでしょう。土を入れた花の鉢をのぞきこんだりして、かわいそうでした。
まったく無警戒にくっついて来てなでさせるので、ははあ、これなら餌付けしたらわりと簡単になつかせて、去勢避妊に連れて行けるなと妙な勝算を抱きました。実は年度末に地域の自治体から、コロナで総会ができないこともあって、要望などないかというアンケートが来たものですから、次のような文章を家の表に掲示しようかと思っていることを伝え、組長さんたちも折りがあれば野良猫問題を話し合ってほしいのだが、と回答していました。
三郎丸地区に野良猫が増えて、糞害などの被害が多くなっています。
花壇の花や畑の野菜をだめにされたり、侵入を防止するために高い猫忌避剤や用具を購入したりしている家もあります。
また、庭で子猫が生まれたり病気の猫が死んだりして対応に困っている家もあります。
野良猫たちは避妊や去勢をされていないため、年に数回は4~5匹の子猫が生まれ、現在は十数匹に増えています。
このままでは、害獣ということで、毒や罠などで殺処分を始める家や、虐待をする人が出てくる可能性もあります。猫のためにも不幸なことです。
餌を与えるのをやめれば、猫はいなくなるでしょうが、与えている方にもさまざまな事情や信念があるのだろうと思います。中には三郎丸以外の地域から車で餌を与えに来る方もおられて、餌場になっている土地の管理者も困っておられます。
もし、餌を与えるのをやめられないとすれば、次善の策は野良猫の全頭を避妊して、一代限りの猫として増やさないようにすることです。避妊している印に耳にカットを入れて「さくら猫」と呼んで、地域で見守る「地域猫」としている地域も各地にあります。
避妊には一頭数万の費用がかかります。餌を与える人だけでは無理なら、協力できる人たちで負担してでも、これ以上は増やさないようにしないと事態は改善されません。
現在では自治体(市役所や保健所など)ではこのような問題への対処はしません。無料で避妊手術を行っている動物愛護団体に相談して対応してもらうにも、地元の住民が、会場設営などそれなりの協力や準備をしなければなりません。
被害を受けている家もいろいろで程度の差もありますから、一律に対応することは無理でしょうが、よい解決策がないか、話し合って行きたいと思います。
当面は、次のことをお願いします。
1.餌を与える人は、何らかのかたちで避妊に協力していただきたい。
2.できれば家に連れて帰って、飼い猫として育ててほしい。
3.ただし、猫エイズ(人間には感染しません。かかった猫も発症しなければ長生きもできます。ただ、他の猫には感染します)にかかっている猫もいそうなので、注意して下さい。
4.また、なついている野良猫でも完全に成長していない子猫には、首輪やリボンは絶対につけないようにして下さい。常に見守って管理してやれないなら、成長するにつれて、首がしまって、時には腐敗し、とてもかわいそうな状態になります。
以上、よろしくお願いします。
これは、それなりに迷ったあげく私の出した結論でした。少しずつでも手なづけて、避妊去勢をすることからはじめるしかない、たとえ個人的にでも、と決めたのです。もちろんお金はかかりますが、無責任な人に迷惑をかけられたからって、同等の水準で生きたくないもん。そんな人らに影響受けて自分まで精神腐らせたくないし、前向きに生きたい。
しかし、不動産屋さんの処置もあったことだし、組長さんからの回覧板でも、猫の外飼いはやめるようにとの要望が多いことを書いて注意喚起されていましたし、何だかだで、このまま猫たちがどこかへ行くのなら、まあそれでもいいとも考えていました。
でも、その二匹があまりにもなついて来るので、まずはこいつらから、飼いならして避妊去勢をしてやろうか、と考えました。
ところが迷いながら立ち上がったとたん、どこからともなく十匹近い野良猫がわらわら現れて、まつわりついて来ました。中には慣れていないらしい子猫もいて、逃げながら、また寄ってきたりして、典型的な野良猫集団です。
ああ、この数じゃとてもじゃないが対応は無理だ、とあきらめて、庭から追い出して家に入りました。
まるっきり芥川龍之介の「蜘蛛の糸」で、救われようとする人の数の多さにパニクって、見捨てたカンダタの気分でした。もちろんそれきり私の人道的前向き計画は頓挫しています。雲散霧消するかもしれない。
これについては、また書きますね。
組長さんに渡した文章は、まだ掲示していません。ただ特に最後の、かわいがっているつもりで、子どもたちなどが、成長していない野良猫や野良犬の子に首輪やリボンを巻くのは、本当に残酷です。故郷でそうやってつけられた首輪で、首が腐ってちぎれそうになっている犬を見たこともあります。好意や愛情(中途半端とはいえ)からしていることなのだろうから、ますますやりきれません。
リボンを結ばれていた、かわいいキジの子猫は、最近姿を見ません。どこかで自分で木にひっかけたりして外してくれていることを祈るばかりです。
写真はまあそのちょっと「蜘蛛の糸」にちなんで、叔母の遺した蓮の花の写真です。