あー、でもそのへん、実はちょっと微妙。
◇キャラママさん。
前田武彦さんに対するテレビ界の態度は、いろいろもう、ろくなもんではないというどころじゃないと思うんですが、でも、あの時期のテレビのしょーもなさぶりについては、マエタケさんも一役かってなかったわけじゃないって気もするんですよね。完全に私のシュミに限って言えば。
たしか、あのころ人気の高かった、夜の歌番組で、マエタケさんが司会のやつで、もう恒例というかお決まりになってたのが、当時の若い女性歌手たち、はー、もう名前も忘れたけど、いしだあゆみとか小川知子とか伊東ゆかりとか、ごめん全然ちがってるかもしれんけど、そーゆー歌手の女性たちが、恋人が死んだとかその他もろもろで、歌を歌っちゃ必ずぼろ泣きすんのな、もう。それをマエタケさんがいたわって、なぐさめて。
私は、これも同性愛がわかってテレビその他から葬られた佐良直美が好きだったのは、レコード大賞とっても彼女がまったく泣かなかったことで、とにかく歌手が歌わずに泣くのって大きらいで、しかもそれが毎回番組のお約束ごとになってるときちゃ、もうマジで吐き気がしてました。マエタケさんこんなの好きでやってんのかなーとか思いつつ、彼の考えや態度は好きだったから、ワルクチも思いきり言えず、見るたび聞くたび、いらいらしてました。めそめそしてはマエタケさんにいたわられてる女性歌手たちって、ほんとに薄汚くて卑猥でした。
おまえの深読みは映画だけにしとけって言われるの百も承知で言うと、私、あんな番組やってたマエタケさんも何だか忸怩たるもんがあって、それで、あのしょーもないバンザイ事件のとき、しっかり抵抗も反撃もできなかったんじゃないかしらんなんて考えてしまう。ほんとに自分に満足できる、誇りを持てる仕事をしてたら、いくら何でももうちょっと何か戦うぐらいできたんじゃないかとか。えーもう、すべて想像、妄想ですけどさ。
また話をねじくらせるけど、私、井上ひさしが、離婚問題でごちゃごちゃしてる最中、憲法九条を守ろうって集会で、ちゃんと発言して、しかも「こんなことやってる場合じゃないんですけど」なんて冗談も言って笑いとってたの見て、ほっとすると同時に心から尊敬したのだよね。
離婚といっしょにはならんかもしれんけど、映画「レイ」の中で、主人公の盲目の黒人歌手レイ・チャールズが、麻薬に溺れて相当にヤバいとき、黒人差別について抗議行動をする決心をするのを見ていて、これまた、すごい、えらい、私にはそこができん、と感服したのです。実はあの映画、ほとんどそこしか覚えてないぐらい。
公私ともに、自分が弱点や欠点をさらして、それが攻撃されかねない時、自分自身が自分に自信を持てないでいるとき、それでも不当な攻撃や納得できない状況に対して、声をあげられる勇気って、強さって、賢さって、ほんとにほんとに、すごいと思う。
正しいことを言えるために、理不尽な敵と戦うために、身辺はいつもキレイにし、たたいてもホコリが出ないようにしとくべきなんだろうけど、でも、実際にホコリが出そうな時にでも、そうしなくちゃならなかったら、発言し行動し、自分でも自覚してる醜い自分が注目されることを恐れちゃいけない。どんなにボロボロの自分でも、どういうか戦う戦艦はそれしかないんだから、それで向かっていくしかない。そういうことを、いつも思って、そしてあらためて、マエタケさんの場合はどうだったのか気になるんだよなー。何もおっしゃらないままだっただけに。
あの、しつこい不作法なマスメディアのパパラッチ精神は、こういう時にこそ発揮してほしいもんだのに。こっちがちゃんと知りたいことを彼らが取材してくれた試しがない。