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いっそ、ころして

ずっと連絡していなかった友人が、元気でいるのか心配になって、びくびくしながら電話したら、めいっぱい元気な声が返って来て安心した。仕事も今が一番面白いとかで、もう本当に何よりだ。

もうひとりの友人とも電話で話したら元気だったが、彼女の地元の町では、例のクルーズ船に3組6人の方が参加されていたようで、感染してなくて帰郷された、その人たちが誰なのか話題になっているそうだ。まあわかったってどうしようもないけどなあと、友人は笑っていた。

私の方はあいかわらずだ。まだ立ち直れていない。
そもそも、立ち直ろうとする気力が生まれて来ない。
今日は用事があって町に出たのだが、帰りに地下街を歩いていると、体調が特に悪いわけでもないのに、どうしようもない倦怠感に襲われて、駐車場まで歩いて戻れるか心配になった。

何十年もかけて築き上げて来たものが、あとかたもないほど消えてしまったのだから、立ち直ろうとする方がおかしいのかもしれない。
奪われてしまったもの、失われてしまったものが大きすぎて、足の力も抜けそうになる。

私が触れて、何かにしなければ、ただのごみだったものが、本当にただのごみになってしまった。
そして、私自身も、ただのごみとして死んで行くしかないのか。

いっそ、中途半端ではなく、ひと思いに全部奪ってくれたらよかったのに。
そうしたら、もう何もかもあきらめて、自殺でもしてしまえたのに。
ごみのままで。ごみらしく。ごみにふさわしく。
この、ごみになりかけの、生殺しの残骸のような今の状態が、一番苦しい。やりきれない。
あきらめてしまうことさえできない。過去を捨ててもしまえない。
捨てたって、もうそこに向かって新しく歩き出せる未来もないのだが。

多分、私がこういう状態になっていることを、その原因を作った人は知らないだろう。
知っても、そのわけは、決して理解はできないだろう。永遠に。絶対に。

私のことを何一つ知らないのに、知っているつもりになっている人。
自分と私が同じだと思っている人。
結局は、そういう人が、一番私にとどめを刺し、息の根を止めるのだ。

それにしても、これほどまでに、ひどいことが起こってしまうとは。
今でもまだ、信じられない。
ときどき、夢を見ているような気がする。
忘れていては思い出して、あらためて奈落の底に突き落とされる。

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カツジ猫