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うまく行けば

今日、スーパーの横の川っぷちを歩いていたら、桜のつぼみがふくらんでいた。開花までにはまだ数日かかりそうだ。週末は雨で寒いらしいけど、うまく行けば、それが過ぎたあとで花が開いてくれることになるかもしれない。

わが家の庭では、オキザリスががんばってピンクの花弁を広げているし、ユキヤナギもまだ健在だ。でも週末が雨なら、また雑草が勢いづくだろうなあ。今日少しでも庭仕事ができればよかったが、どうにも時間がとれなかったのよね。

菊池寛の「マスク」をちびちび読んでるが、暗い話題なのに、妙におかしい。スペイン風邪にまつわる話が多いのだが、それで死んだ新聞社のあまり人に好かれていない同僚の通夜に誰が行くかともめる話など、今でもいつもありそうだし、どうっていうことは何も書いてないのに、強烈に何か笑える。全然好かれてないやつだったから、誰も他人事で同情する気になれてないのが、かえって妙に軽やかでよくて、うーん、こんな死に方もいいかもしれんとこっちも正直に思ってしまう。悲しみや痛みを周囲にまったく与えない死って、もしかしたらカッコいいのではあるまいか。Amazonの批評のコメントで、

他の小説もそれぞれ印象深かったが、『簡単な死去』は何度も読み返した。快く思われていなかった同僚の死に対する主人公や他の同僚の対応について、最初は冷徹だと思ったが、「コロナ禍だからこそ人とのつながりを大事にしたい」とかいっている自分の心の中を見透かされているようにも思えてきた。

と一人が書いておられたのには、何だかうれしくてニヤニヤしてした。

黒船に乗りこんで世界に羽ばたこうと思う青年武士二人も、その志に同情する異国人たちの話も変に熱っぽくていい。これって実話かどうか知らないが、ありそうもないけどありそうな話のように思わせてしまうのが、またうまい。
京都の自殺者を救いつづけるばあさんの話も、自殺の名所の説明なのに書き出しがのほほんとして楽しく、ばあさんの運命もまるで西鶴の短編のようだ。

石田衣良の「娼年」三部作もいつの間にか読んでしまった。さらさらきれいに書いてあって炭酸水みたいに心地よく、いろんな点で刺激的だった。ローレンス・ブロックのマット・スカダーシリーズで、主人公の多分生涯の伴侶となる高級売春婦が商売をやめるのに対し、こちらの主役は夫婦になっても仕事を続けるのも、どう考えるべきか大きな問題を提示している。
たださ、欠点ではないんだけど、いやらしさやエロティックさがほとんどないんだよね。終始涼やかで清潔で快適で。読み上げたあとも読んでる途中も、マスターベーションでもしようかってもやもやした気分には、ほんとにかけらもならないで、なぜか強烈に掃除や料理や書類の整理や、要するに日常の家事がしたくなったのは、ありがたかったけど複雑だった(笑)。そういう方向にパワーやエネルギーがわくのだよ、この小説、変に。私だけかもしれんけど。

もうひとつ、かなりショックだったのは、三冊のどれかの解説で、この小説の舞台化(まあそれもすごいが。映画にもなってるらしいから更にすごいが)の際、客席の男性たちがあからさまに不快そうにしていたとのことで、まあ舞台の出来もあるかもしれないけど、そんなにこういう内容に耐性のない男性が多いのだろうかと、それもちょっと信じられない。でもAmazonのコメントを見ると、そうなのかなと思って、それもちょっと驚く。

伊方原発の差し止めが解除されたのは本当に腹立たしい。でも、毎日新聞に対岸の大分の人たちの怒りの声が載っていたのは、うれしいというかありがたい。前から私は言ってるが、あの原発の位置は四国の人にとっては端っこの端っこで、海が間にあるだけで大分と目と鼻の先なのですよ。私の故郷の宇佐神宮も仏の里の国東半島も温泉で有名な由布院も、あの原発に何かあったら全部いっぺんで汚染される。八幡神の総本山なのに神道関係者は何も言わんのかいと毎回思う。大分県はこの件について、もっともっと大騒ぎするべきだ。対岸の火事なら平気だろうが、対岸の原発はそうは行かないぞ。

オリンピックの開会式で、女性タレントをブタに見立てたショーをするという案があったことで、また問題になってるが、森さんの女性蔑視発言のあとでこれだから、そこがもう救えないよ。あんなことがあった今、これで何も問題にならないと思っているその感覚が、けたはずれとしか言いようがない。
ソフトバンクの犬のお父さんのCM作った人なんだよね、発案者は。私はあのCM普通に好きだったし、まるで反感も違和感も感じたことがなかったから、逆にあんなCMを作れるような人でも、そういうところには警戒心も自制心も働かないのかと思うと、日本の女性に対する意識って、どんだけ根強く腐ってるんだろうともうほとんど感心する。これについては、

渡辺直美さんは、豚の鼻つけてと言われれば快諾して、踊ってみんなにウケるだろうし、本人も堂々とやり遂げて、バカにされるよりも人気はますます上がるだろう。しかし、その陰で、全国の太った子どもや女性や、男性もだが、「豚の鼻つけてみて」と気軽に言われるようになるのは容易に想像できる。@regiusheinrich·

というツイートに特に納得した。

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カツジ猫