おそろしい事態が進行中なのに
あまりにもみっともなくてみじめな地方選挙の結果が、NHKのラジオでさえもあまり話題にならないし、解説も「それほど与党の勝利と言える状況ではない」とか言う調子なのを、最初は何となくちょっと救われる気でいたが、日が経つごとに恐くなってきた。これほどに恐ろしく危険な状態が進行中なのに、一見何事もないかのように、静かにのんきに穏やかに、時間が流れて行くのがとても、とても恐い。あんまり例えに引くようなことではないが、あきらかにガンの兆候が現れているのに、恐くて検査にも行けず、毎晩酒のんでケーキ食って仕事にはげんで楽しく暮らしているような中年男性(なぜそう思うかわからないが、そういうイメージ。女性でも若者でもいいけどさ)を見ているような気がしてならない。
岸田首相はさっそく、「自分たちの政策が認められた、力強く進めてくれというメッセージだ」と、選挙結果について述べている。「新しい」だの「異次元」だの「ていねい」だのとみっともないことばを飾り立てるだけで肝心なことは何もしないこの首相が、20%そこそこの投票率で、「力強く進めてくれ」と言われたという口実に使うのは予想通りであくびも出ないが、この人が進めようとしているのは、増税、軍国化、原発再開、その他すべて世界にも日本にも命取りの政策ばかりで、あえて言うならそれもいい。私と意見がちがう人が政権についているのは不愉快でもしかたがない。
問題は、その意見の出し方、決め方、進め方だ。議論を避け、質問を封じ、すべてを閣議決定で決め、法律を無視し手続きを無視し、苦しまぎれの思いつきと金と権力しか行動基準がない、この人を中心とした指導者層の精神状態だ。積み残されて放置されて忘れ去られることを期待されている森友サクラ問題をはじめとした、あり得ないほどの非常識な過去のすべてが、腐敗して悪臭を放ちつつ枯れて行こうとする上に、サミットだのコロナの終焉だの桜の開花だのと、華やかな派手なものをおっかぶせては、醜い過去を隠して行き、真実と誠実の死骸の上に、自分たちの利権を積み重ねる。
こんな、腐葉土にもならないごみと残骸の上にどんどん築かれて行く未来に目をつぶって、私たちは皆生きている。せめて国と自分の身体の末期症状を見つめて、死ぬまでにできることを考えよう。そのくらいしか幸福になる道はない。
私はその中で快感や幸せを探して、味わう。狂わずに生きるために。正気を保ってまともな道を進む元気を保つために。幸福を味わうことを、決して、決して、現実を無視したり、逃避したりすることには使わない。それだけを宣言しておく。決意しておく。