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お笑い担当

とっくに亡くなった大正七年生まれの母は、昔は女性の野球ファンなど皆無だったのに、六大学野球に熱を上げ、縁もゆかりもない慶応のファンになって、フィギュアを集めたりスコアブックをつけたりしていた。プロになった「推し」の選手を見ようとして、旅館の裏の藪の中まで行って、その選手がお酒で赤い顔をしていたのを見て来たりしていたらしい。

母の死後も何となくいろんな競技を見るたびに、母のあとを継がねばならない義務感というか、母に伝える話題を探してしまうというかの本能が働いて、大相撲では母が気に入っていた琴の若の弟子で息子の琴櫻の成績が、何となく気になったりする。プロ野球ではホークスで最近頭角をあらわしている、いわゆる「慶応三兄弟」の三選手の話題が、母に教えてやらなければと、つい耳をそばだててしまう。

ホークスのニュースは地元だからよく入るので、他のチームのことは知らないから、よそもそうかどうか知らないが、人気者の柳田、周東、栗原選手をはじめとして、妙にキャラが立っているお笑い担当みたいな選手が多い。私はワイドショーでもその他でも、受けをねらってわざとバカなふりや見当違いの解答をするタレントが男女を問わず大嫌いで、リモコンが手が届くところにあれば、即チャンネルを変えるほどだが、ホークスの選手たちには、そういうわざとらしさやウケ狙いはかけらもなく、否応なしににじみ出る人柄が、立派にお笑い担当になっているのが、しゃくにさわるが、目をはなせない。

最近この点で飛び抜けてきているのが、いつもライバルと目した相手にからんではいじけたりしている、牧原大成選手で、書き出せばとまらなくなるぐらい、そんな記事が多い。新しく来た山本祐大捕手が、慣れないグラウンドで歩いていると、いきなり話しかけて変な冗談を言い、ファンのコメントで、「ジブリ映画で主役を不安にさせる行きずりの妖怪みたい」と例えられて大盛り上がりになっていた。下についているコメントがすごく多いのですが、ジブリだの何だのの部分はがんばって探してみて下さい(笑)。

他にも、なかなか取材に来てくれないとか、球場の看板やポスターに自分が出ないとか、いじけてぐれてすねるのが、もう言いようもないぐらいおかしくて、うざいけど楽しくて、最近ではすっかり皆から愛されている。昔、周東選手に嫉妬して敵意を燃やしていたのに、いつの間にか仲よしになったのを、私は周東選手のしたたかさかと思っていたが、牧原選手の憎めなさもあったのかなと最近考え直している(笑)。

その牧原選手は最近、慶応三兄弟を目の敵にしている。「出身大学ばかりとりあげられるけど、それがなんや」ということらしい。
 おっとりのんびりして品が良い、「長男」の柳町選手に比べて、最近めざましい活躍ぶりの「次男」正木選手は一見大人しそうだが、けっこうそうでもなくて、最近ホークスの選手たちがつけさせられている、変な鎖のペンダントで牧原選手の顔がついているのを、わざわざヒーローインタビューで首にかけて来て、「なんか勝手にライバルにされてるようだから」「今日は僕が勝ちです」とか大胆な刺激的発言をしていた。

正木選手は別のインタビューで、「たまたまだけど、今ホークスに来ている慶応の三名は皆おとなしい。別に慶応全部がそうだというわけではない」と言っていて、「ホークスの中で一番慶応っぽい選手は」と聞かれると、一番今宮、二番渡辺陸、三番栗原の各選手と答え、「一番慶応っぽくないのは」と聞かれて「牧原さん」と答え、「からんでくるけど、あどけない」とか言ってたから、けっこう強気で、周東選手以上にしたたかそうだ。

が、その正木選手が「(先輩の自分を)舐めてますね」と評するのが、「三男」の廣瀬選手で、二人そろってのインタビューで、どちらも「自分の方が賢い」と言い張って譲らないのも、なかなかに笑えた。たしか廣瀬選手は周東選手に借りたバットが気に入って「返さない」と言ってたし(まあ周東選手も以前に松田選手のグローブを「もらいまーす」「ええよー」と強奪してたようだから、そんなもんかもしれないけど)、朝、正木選手と会っても挨拶もしないし(親しすぎるとわざわざする気になれない、とか言っていて、正木選手は「自分はいいけど、他の先輩にそれはいけない」と教えていた)、なかなかふてぶてしい後輩かもしれない。

笑えるのが、その廣瀬選手が、「ノックもしないで部屋に入ってくる」と文句を言っていた、図々しい悪ガキっぽいのが、昨日立派な投球をした新人の二十歳の若い前田悠伍投手で、上茶谷投手をはじめ、他の先輩たちからも生意気と思われつつ、かわいがられているらしい。

そう言えば以前に見た短い映像で、周東、栗原両選手が、前田選手と話していて、「投手なのに九番なんて珍しいね。高校ではたいがいは投手も強打者で四番とかになるのに」と二人が言ったら、前田投手は、「それは中堅高校(自分の出身の大阪桐蔭はもっと程度が高い)」と普通に答えていて、大先輩の人気者のスター選手二人が、「ふーん」と突っ込みもせず感心していたのは、鼻白んだのか、おかしかったのか、いずれにしても優しいなあ(笑)。

牧原選手などはときどき「若手に覇気がない」「二十代の若手の代走に三十四の自分が出るなんてどうなんだってことですよ」とぼやいたり愚痴ったりしているが、それでもこうやって並べて見ると、ホークスの選手は年長者が先頭に立って猛練習をするのが有名だが、それだけでなく、年上が優しくて若手が生意気なのかなと、ふと思う。これは尊敬されたり恐れられたりするのが嫌いらしい柳田選手や底抜けに優しそうな栗原選手の影響かとも思うし、一方で今宮選手や周東選手のように、優しそうでも、どこか鋭くて一線を超えたら容赦なく厳しそうな危険な雰囲気が羽目をはずさせないでいるのかとも思う。

ところで、最近の試合では栗原選手は打ち出の小槌みたいに、ここぞのところでホームランを量産してるし、周東選手も活躍してるが、彼についてはそれ以上に「鷹祭用の白いユニホームが、まるで色白な高校生のように見えた」「白のユニホームがまるで王子様のようだった」(後者は実況放送の合間にファンの感想として、アナウンサーが口走ったのですよ)などと、タレント化、アイドル化に拍車がかかっているようで、これはこれでありがたいけど、何かと大変だろうなあ。今さらそれに溺れたり崩れたりするような人ではないし、そういうことへの対応や処理も身につけてはいるんだろうけど。

ちなみに周東選手は、数年前よりは今の方が顔も身体も洗練されて大人っぽくなってるので、昔はもっとどういうか未完成で荒削りな感じです。先日、彼について書いた書き込みで、日焼けサロンの火傷とか、生卵呑みすぎて体調崩したとか私が書いたら、何人かから、初めて聞いたが本当にそんなアホだったのか、子どもの時に山でうさぎを追っかけてたという逸話同様ガセじゃないか話を盛ってないかと聞かれました。それで、本人がそうしゃべってる昔の雑誌をひっぱり出して来たら、そのころ(六年ほど前)の写真もありました。記事のほうは写真に撮ったけど読めますかしらん。そして、このしゃべり方も編集のせいだけじゃなく、何だかいかにも若いですね。いらんこと言うと、やけどの話とか、まるでイナバの白ウサギみたい。

たまにはバスで(笑)

 

ともあれ、ここまで名前をあげた選手たちは、生意気な若手にせよ、優しいベテランにせよ、いじけるにせよ、したたかにせよ、ひとり残らず、それ相応の成績をあげ、ライバル間の争いに勝ち残っている。それでこそ、アホなことを言い合ってもしあっても、崩れないしだらけないし、たがいを尊重し尊敬しあえる。そこが、たがをはずさず、品位と人間性を保てるポイントなのかもしれない。

わー、母の思い出を書いていたはずが、何でこんなに長くなる。しかし思えば、母が生きていた頃、ほとんど毎日毎晩、私は母とこんな話をして夜ふかししていたんですよ。昼間、学校で眠かったはずだわー。

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カツジ猫