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かいぬしと、おかあさん(カツジ猫)

みなさん、おはようございます

けさはあめで、かいぬしは、
「しめしめ、みずまきをしないですむな」と、
あさから、よろこんで、ごはんをたべています。

ぼくは、うえのおもやにいる、
しょだいねこの、おゆきさんと、
いきているときの、はなしをしようと、
あさから、でかけていきました。

おゆきさんは、まだかたづいていない、いえのなかの、
ぶつだんのまえのいすで、ねていました。
 ぼくをみると、あくびをして、「おや、はやくに、どうしたの。
あめのひも、たまには、しずかで、いいね」といいました。

ぼくは、ふるいそふぁに、すわって、なるべくていねいに、
 「あなたが、しんですぐ、かいぬしについて、いなかにいったのは、
なにか、ようじがあったのですか。
 まだむさんに、あいたかったのですか」とききました。

「そうだんしたいことがあったのさ、それも、なるべくいそいでね」と、
おゆきさんは、いいました。
 「わたしは、そのころ、もうじゅうななさいで、なんどか、しゅじゅつもしたし、
だんだん、よわって、ぐあいがわるくなっていたのさ。
 それでも、ちゃんとあるいて、そとのといれにもいっていたし、
きょうあすということは、なかったけど、かいぬしはしんぱいして、
ずっとまいにち、そばにいてくれたよ。
 でも、しごともいそがしくて、いなかのいえに、ずっとかえれなかったから、
そこで、ひとりでくらしていた、かいぬしのおかあさんが、
まだ、そのときは、おかあさんもわかくて、げーとぼーるとかして、げんきだったけど、
なにか、ようがあったのか、ただ、かおがみたかったのか、
かいぬしに、たまには、かえるように、なんども、いってきていたのさ」

「かいぬしは、わたしのことがきになって、いえをあけたくなかったけど、
おかあさんから、なんども、でんわで、そういわれると、
だんだん、わたしがしぬのをみとどけてから、かえろうとおもうのが、
わたしのしぬのを、まってるようなきぶんになるのが、いやで、
とにかく、さっとかえって、すぐもどってこようとおもって、
わたしに、『まっていてね、ゆき。むりはしないでいいけども』といって、
いそいで、くるまで、おかあさんのいる、あのいなかのいえにでかけたのさ」

「あつい、なつのことだった。
このごろのような、ひどいあつさじゃなかったけどね。
 わたしは、つめたいふろーりんぐのへやのゆかが、きもちよくて、
ずっと、そこにねていたけど、だんだん、ちからがぬけてきて、
そとに、おしっこにいこうとたちあがって、あるいたら、
となりのたたみのへやで、たおれてしまって、
おきようと、もがいたけど、もう、うごけなかった。
 たぶん、もう、いきをしてはいなかったけど、
そのとき、かいぬしがかえってきて、へやにとびこんできて、
めを、かっと、あけたまま、たおれているわたしをだまって、だきあげた。
 わたしの、あつい、おしっこが、たらたらとながれだして、
かいぬしのからだをぬらしたけど、かいぬしは、なにもいわないで、
そのまま、ずっと、わたしをだいていた。
 そのあと、にわの、がらすどの、すぐそとに、あなをほって、
ていねいに、うめてくれた」

「あとで、まだむさんに、きいたところじゃ、かいぬしは、
さんじかんほど、くるまをとばして、いなかのいえについて、
おかあさんは、げんきで、げーとぼーるをして、
きんじょのひとと、あそんでいて、それをみながら、
だいどころのゆかに、ぼうっと、しばらくすわっていてから、
すぐ、たちあがって、またくるねといって、ひっかえしたらしい。
 いきも、かえりも、ものすごいいきおいで、
くるまをとばしたらしいけどね。
 けっきょく、わたしのさいごには、まにあわなかったってわけさ」

「そんなんじゃ、かいぬしは、おかあさんを、うらんだんじゃないの」と、
ぼくがしんぱいすると、おゆきさんは、
 「わたしもそれは、きになったけど、そのしんぱいはなかった。
かいぬしは、『おまえの、しを、だれかへの、にくしみなんかで、
よごさせたりは、ぜったいにしない』と、おはかのまえで、ちかったし、
それをじっこうしたからね。
 だれのことも、にくまなかったし、うらまなかった。
 もちろん、じぶんじしんのこともね」

「それでも、なんだか、きになって、わたしはそれから、なんどか、
かいぬしの、くるまにのって、いなかのいえに、ようすをみに、いったのさ。
まだむさんとも、そのときにあったのよ。
 そのころ、このいえにいたのは、いきてるのも、しんでるのも、
しょだいねこのわたしだけで、
ほかのどうぶつは、はむすたーがちょろちょろしていたぐらいだったけど、
いなかのいえは、にぎやかで、にわも、いえのなかも、どうぶつだらけで、
みな、いきていたときのように、たのしそうにしていた。
 まだむさんは、まだそのなかでは、わかいほうだったけど、
ひとりでに、みなのまとめやくになっていて、わたしも、かんげいしてくれた」

「かいぬしは、おかあさんとも、ふつうにはなして、わらって、たのしそうだった。
ただ、いきかえりの、くるまのなかでは、いつも、はをくいしばって、
とても、くるしそうだった。
 わたしをおいていって、まにあうようにかえろうと、
ひっしで、はしったときのことを、ずっとずっとまいかい、おもいだしていたのさ。
 わたしは、いつもそばにすわって、だいじょうぶだよ、ここにいるよと、
おしえようとしていたけど、どのくらいわかったのかねえ」

「そのことを、まだむさんにもはなして、かいぬしはだいじょうぶだろうかと、
じょうほうを、こうかんしていた。
 そのうちに、ふたりのいけんがいっちしたのは、
かいぬしは、たしかに、おかあさんをちょっとも、にくまなかったけど、
もうにどと、むかしのようには、あいせなくなっているってことだった」

「まだむさんと、こどものめすねこの『こみー』も、とてもなかがよかったらしいけど、
かいぬしと、おかあさんは、おやこだからというだけじゃなく、
だれよりも、なかよしの、どうしみたいなふたりだった。
とくに、かいぬしは、いっしんどうたいみたいに、おかあさんのことを、しんらいして、
だれよりも、こころから、あいしていた。
 でも、にくしみをうまないように、うらみをけそうとしていたら、
そのあいじょうも、しんらいも、いっしょにうすれて、
きえて、なくなってしまったらしい。
 ふつうに、なかのいいおやこだったけど、もうそれいじょうのあいだがらじゃなかった。
 ひとも、どうぶつも、かなしみや、にくしみを、けそうとすると、
あいじょうも、いっしょにきえることがあるのさ」

「たぶん、それでいいんだろうと、わたしと、まだむさんは、はなした。
かいぬしは、おかあさんをあんなに、あいしていたから、
もしも、あのままそれがつづいていたら、おかあさんがしんだときに、
たちなおれないかもしれないから、かえって、よかったのじゃないかってね。
 でも、かいぬしは、たしかにあのとき、えいきゅうに、なにかをうしなったのさ。
 それはもう、にどと、とりもどすことは、できないのさ」

なんか、すごいはなしをきいたようで、ぼくは、ぽかんとしてしまいました。
 「おゆきさんが、いきていて、かいぬしが、ちょっとでも、しにめにあえたら、
またちがっていたのかな」というと、おゆきさんは、
 「どうだろうね。もうちょっとだけ、がんばって、めをみて、
にゃあと、ないてやったら、すこしは、かわっただろうかね。
 でも、それも、あんまりわたしらしくないし、
どっちみち、わたしには、あれがせいいっぱいだったし、
せきにんをかんじないわけじゃないけど、しかたがないさ」

「なにかを、とても、あいしたら、そのぶん、にくしみや、かなしみも、うまれる。
 かいぬしは、まだだいがくいんせいのとき、あぱーとにまよいこんだわたしを、
はじめてのじぶんのねことして、かってくれて、
そのあと、いろんなしごとさきにも、ずっといっしょにつれていった。
 いろんなぼうけんを、いっしょにして、『わたしの、はじめてのねこ。
きぐらいのたかい、じょおうのような、さいこうの、おゆきさん』と、よんでくれた。
 でもそれだけあいしたおかげで、かいぬしは、おかあさんへのあいを、うしなった。
 そのあとで、きゃらめるをあいしたおかげで、しんだあとにのこった、
きょうだいの、みるくをみているのがつらくて、おかあさんにあずけてしまった。
 そんなもんなのよ。あいして、こうふくになるということは。
きずついて、きずつけて、くるしんで、くるしめるものなのさ」といって、
おゆきさんは、また、あくびをしました。

「こんどまた、まだむさんに、あいにいこうよ。おんせんもたのしいよ」と、
ぼくがさそうと、おゆきさんは、「まあ、かんがえてみようかね。
そのまえに、いえのかたづけを、かいぬしに、なんとかさせておくれ。
ぐれいすが、うるさくて、かなわないよ」と、いいました。
 「でも、そろそろ、また、えいがをみにいきたいと、いってたよ」と、ぼくがいうと、
おゆきさんは、「こまったおひとだよ、あんたの、かいぬしは」と、
いきなり、ひとごとを、きめこみました。

したのいえに、もどったら、ひさしぶりに、くろねこの、あにゃんさんがいて、
きゃらめるさんと、むぎをかじっていました。
 かいぬしは、ひるごはんは、てぬきをして、かってきた「たかなまき」の、
おすしをたべていました。
 ぼくも、べっどで、まるくなって、いまからひとねむりします。

そういえば、まだむさんって、ちょっと、きゃらめるさんと、
にてるかもしれないな。

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