すげー
へなへなの身体に鞭打って、山のような冬物の服をクリーニングに持って行ったら、多分これまでの新記録で二万円ちょっとの料金になった。まあ覚悟はしていたからそれほどのショックではないが、やっぱり年金生活者の財布には痛い。
例年なら、今年はこの服は着ないでおこうと来年回しにするのだが、ここが高齢者になると、もう来年はないかもしれないから、この服も今年は着ておこうかと、洗いざらいつい着倒してしまう。若い時には想像もしなかった「後がない」って感覚だ。
一方で体力がなくなり交際範囲やハレの場も減るから、服もそんなにいらなくなるし、減らして行くのがまっとうなのだが、ここまで残っている服はどれも高かったのも安物なのも、それなりに性があって手放し難いものばかりだから困る。
亡くなった叔母は多分富裕層のはしくれで、高価な服も山ほど持っていた。亡くなった後で、いろんな人に大量にもらっていただいたのだが、それでもなかなか減らなかった。二部屋ぐらいにいっぱいに保管していて、季節の変わり目には、クリーニングに出していたが金額も膨大だったろうし、整理してまとめるだけでも大仕事だったようだ。働いてもいたから晩年にはきつかったらしく、私も何度か手伝いに行った。
多分、今の私かもうちょっと若い頃か、叔母はその仕分け仕事に音を上げて「もういっそ自殺しようかしら」とまじめに口走ったことがある。温厚な叔父は驚いて「何も死なないでも」と言っていた。
お手伝いさんもいたのだが、長年の人がご主人の仕事の関係でやめざるを得なくなった後は、なかなか人が見つからなくて、結局叔母が自分でそういう仕事もやっていた。
お洒落で華やかなものが大好きで、まめできれい好きだった叔母は、そういう仕事が好きだし上手でもあったが、今にして思えば、そろそろ体力が衰えて、そういう作業に身体が追いついて行かなくなった頃だったのだろう。
そんなことを思い出すにつけても、私も今のうちに気に入った服だけにしておかないとと思いつつ、それは結局どんな晩年を送るつもりかってことにも関わって来て、なかなかどっちにも踏み出せない。そもそも来年再来年、生きてるか歩けるかよそ行きと寝間着の区別がついているかもわからないのだからな。母がやはり晩年に、今度のお出かけに着て行こうと思うと言って、派手なネグリジェを壁にかけていたのを間一髪でやめさせていたりしたのも思い出す。
庭ではユキヤナギが散り始めて、本当に雪のように玄関前の通路をいろどっている。
ところで話は変わるけど、第三者委員会のパワハラ認定も受け入れないで悪あがきしているらしい兵庫県知事に関する記事をネットで見ていたら、
斎藤氏は3月19日に第三者委の報告書が公表されて以降、報道陣のぶら下がり取材はのらりくらりとかわしつつ、遅くとも21日には担当の県幹部にこう命じていたという。 「謝りたくない。でも、いかにも謝っているかのように聞こえるコメントを作れ」 無理難題と言うほかないトンデモ指令は、県幹部を苦しめた。 「そんなことできるわけないだろ……」
っていう話が出ていて、本人も否定していないようだから、まんざら嘘でもなさそうだ。もう笑っちゃいけないのだが、笑ってしまった。笑うしかない。すげーとしか言いようがない。
「誤りたくない。謝っているかのように聞こえるコメントを作れ」って、担当者に命じたってあんたもう、それ「キャッチ22」なみの狂気の世界だぞ。そもそもどーでもいいけども、そんな作文を自分で作る能力もないのか。
つくづくくやしい。こんな人のために、ちゃんとした立派な人が二人まで自殺に追い込まれたなんて。どこかで今も同じような立場で苦しんでるかた、絶対に死んではだめですよ。こんな人のために傷ついたり死んだりしたら、絶対もったいなさすぎです。そんな価値のある相手じゃないんだから。
あ、「キャッチ22」つながりで、つい思い出しちゃった。別に全然悪質な話とかじゃないから、ここで並べて書くようなことじゃないんだけど、昨日だっけプロ野球でホークスが日ハムに負けて、それでまたリチャード選手が(いいプレーもしてたのに)肝心のとこでエラーするやら何やらで、ファンはまた激怒して、ネットでめちゃくちゃ悪口を書いてる。その気持ちはわかるけど、中に「こいつは『フルメタル・ジャケット』に出てくる、あのデブとそっくりだ」と誰かが書いてたのは、思わず二度見してしまった。「キャッチ22」と同時代の、いやまあいい映画だけどさ、いったい何歳ぐらいの人なんだろう。私と同世代だったら、リチャード選手は孫みたいな年代だろうに、大人げないと言いたいけど、まあそこが若さの秘訣なのかもしれない。
だって、「フルメタル・ジャケット」なんて知ってる人います?いや、いい映画ですけど、団塊の世代以降の若い人は多分見てないと思うのよ。(と思ったら、さっき検索したら「一年前に学校で見せられた」って書いてた人がいたから、団塊の世代とは限らないのか。それにしても何の授業だったのかな。)