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そりゃ買わずばなるまい

家の近くを縄張りにしてるらしいウグイス君は、ずっと「ホーホケッ」としか鳴けなくて、私が隣のご夫婦と「下手ですねえ」と心配するほどだったが、最近は最後までちゃんと鳴けるようになって、「うまくなりましたねえ」と、私たちは喜んでいる。

しかし、私に言わせると、このウグイス君、「ホーホケキョ!」と最後をきちっとしめられなくて、毎回「ホーホケキョケキョ」とくり返すのが、まだまだだ。でももうこれはこのままだろうなあ。きっと、「ケキョ」の鳴き方ができるようになったので、うれしくて二回やらなくては気がすまないんだろう。まあ別にウグイスの鳴き方グランプリに出るわけじゃなし、ここまでできるようになったのを祝福して、生暖かく見守ってやることにしよう。

望月衣塑子さんの「安倍晋三の大研究」という本が五月二十四日に発売になるって。
安倍晋三に関する本は、これでもいくつか読んだのだけど、あまりにもすみからすみまで面白くない人柄だし、どこをどうとっても、ああなるほどこういう人なのか、それで納得できたということがひとかけらもないので、あいつはいったい人間か、こんなに面白くない、何考えてるのかわからないやつも珍しいぜ、私の残り少ない貴重な人生を、こんなやつの分析に費やするなんて、どう考えても効率が悪すぎると思って、さじを投げていた。

言っちゃ何だが、そりゃ私が専門で研究してる貝原益軒とか本居宣長とか小津久足とか、気晴らしに見てる野球ニュースで見るホークスの柳田とか西武の山川とか日ハムの栗山監督とか、そもそも身近な九条の会の仲間とか、隣近所の方々とか、それなりに、その人らしい人柄や面白さがすぐに伝わり読み取れる。

そうそう、いらんこっちゃが、柳田選手が膝がどうとかでしばらく出場しないそうで、ネットでは大騒ぎになってる。今日から対戦の日ハムのファンがさぞ喜んでいるだろうとスレッドを見たら、「それでも勝てる気がしない、もっとハンデがほしい」と、皆ものすごく弱気なので笑ってしまった。

柳田選手が怪我で休むのは、わりとよくあることらしいが、かねがね私は江戸文学史で、歌舞伎の「助六」について話すとき、男の理想像みたいな主人公の助六が、どんなに魅力的かと思って読んだら、ものすごく子どもっぽくてアホなので(そこがかわいい)動転しないように、と学生に注意するついでに、「いろいろ、ちがうところは多いのだけれど、この雰囲気って、ギリシャ神話の英雄アキレス(その映画化の「トロイ」のブラッド・ピットも)や、ホークスの柳田選手の持ち味や魅力と、共通する部分もある。その連想でわかりやすい人は、連想しておきなさい。もちろん、ちがうところも多い」と言いたくてしかたないが、絶対誰かに文句を言われそうだから、毎年がまんしている。
しかし、こんなことがあると、トロイ戦争でいきなり離脱して味方を困らせるアキレスを(事情はいろいろちがうけど)思い出して、またしゃべりたいという誘惑に負けそうになる。

あ、「助六」については、こちらの第八章、アキレスについては、こちらの「トロイ」のページでも、適当にごらん下さい。

というわけで、たいがいの人は、よかれあしかれ、どんなにいいかげんな伝記でも著作でも、それなりに人生や個性が見えてくるものだ。首相については本人の「美しい国へ」を含めて、何を読んでも顔が見えない。まあ憲法を変えるのが悲願とか言ってるわりには、なぜ変えたいか一度もちゃんとまっとうに熱く本心を話したことない人だから(小手先のちょろまかしはしょっちゅう、のべつまくなしですがね)、不思議でもないけれど、本当にこの正体不明の個性のなさは、ジブリ映画のカオナシどころじゃない。

望月さんの本で、少しは何かがわかるかな。

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カツジ猫