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それで思い出したことがある

◎その連想から、またどうでもよすぎて書かずにいたことを思い出しましたが、先日、家の代金を払おうと銀行に行って、白髪まじりのばばあが巨額の金を送金するのに心配させては悪かろうと、「家を建てたので大工さんへの送金ですが、ATMでは送れないから」と、わざわざ言って手続きをしたら、窓口の女性行員が通帳を見て「口座がマイナスになりますけど、いいですか」と言うので「しかたないでしょう」と笑うと、「定期を下ろすと・・・あら、でもこれはまだ満期じゃないのか」と、勝手に検討している。

私はこの銀行は、別の支店でアホな女性行員に一度遭遇して以来、行員教育に何の期待も持っておらず、近くにあるから利用しているだけですが、それでも、男女を問わず老若を問わず、いろいろ的確な応対やアドバイスをしてくれたこともあって、それほど悪い印象も持っているわけではない。
しかし、その行員に限って言うと、その態度や雰囲気が、もうまるで自分の通帳、自分の口座という感じなのですね。きっと、わかる方にはわかると思いますが。

ちなみに年金生活者として大金を動かすからには、もう、定期の満期がいつで、これは使えないとか、遠くの町の銀行に残っている貯金をこの次に行く予定のある時、下ろしてこっちに振りこんで口座のマイナスはさしあたり消しておこうとか、それまで一週間近くここの口座はマイナスになるが、月はまたがないし、どうせ利息はいまどき微々たるものだから、わざわざ出かける電車賃ほどもないはずとか、あらゆる要素は検討しているのだ。

それでも、プロの見解は聞いておかないとと思ったから、「マイナスになると何かまずいの?」と尋ねてみた。
そこでもし、このまま月が替わると利息が高く取られますとか、でもそれは預金を満期前に解約するのと比較したらマイナスの方が何十円かお得ですとか、そういう返事が返ったら、私は彼女が他人の通帳を自分のものであるかのような顔をしているのも、まあそれだけのことはあると思ってやるところだが、彼女はそこで「いえ、すぐ入金ができるならかまわないんですけど」と、雲をつかむような返事しかしやがらなかった。

「でも定期預金は解約しない方がいいんでしょ、満期前だから」と言うと、「そうですね」と言う。「じゃ、他にしかたないんじゃないの」と笑うと、また「すぐお金が入るんならいいんですけど」と言う。

私はものすごくいらっとした。今書いていてあらためて思うが、これは責任逃れだよね、知らず知らずの、無意識の。
何も役に立つことは言わないが、一応は注意したという、役人や公務員の悪癖としてよく指摘される、あの姿勢。自分に自信がないものだから、とりあえず「無難な」注意だけして、アリバイを作るというやつ。

私はかなり気分が悪かったので、ふだんはしない意地悪をして、「すぐって、具体的にどのくらいの期間?」と聞いてみた。
彼女はもちろん答えられず、ええとかはあとか言ったまま、手続きをすませ、私もあまりつまらないけんかは売りたくなかったので、そのままにした。
今もつくづく思うことだが、あれはあの銀行の行員教育のせいではない。ああいう人はもう資質の問題で、学歴が高くても教養があってもどんな社員教育を受けても、あの体質はあのままだろう。

◎つまりまあ、こちらはそれなりに、いろいろ考えぬいた上でやっていることだが、人にはそう見えないし、それをこっちもいちいち説明できないという状況には、まったくげんなりする。
まあ、私などはこれでも相当恵まれている方なのだろうが。

私の学生たちはよく、私が戸棚をあけっぱなしにしていたり、家の戸締りを忘れていたりすると、「何かきっと理由があるのだろう」と、そのままにしてくれていた。その結果、どきっとすることがあったとしても私は、私の自業自得、身から出たさびと、あきらめていたし、どちらかというと、うれしかった。
授業でまるっきりの間違いを教えて、学生がそれに気づいていても、「何か理由があるのだろう」と思って指摘をしなかったというのには、さすがに困ったが。

今回の新築でも、大工さんはかなり職人気質の親分肌の皆に恐がられている人だったが、私の要求は皆、ヒツジのようにおとなしく、すべて聞いてくれた。スタッフの人たちには「常識は通用しない家だから」と説明していたらしい。(笑)
職場にいたときも、私と価値観も哲学もすべてちがっていつも正反対の意見を述べる人たちとでも、そういう点では互いにいつも信頼関係があった。「考えた上でのことだ」「何か理由があってのことだ」ということだけは、いつも双方、承知していた。
いや、まったく、私はぜいたくすぎる人生を送ってきたのかもしれない。いろいろと。

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カツジ猫