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つくつくほうし

今日は長崎原爆投下の日。数ヶ月前、片づけていた古い荷物の中から、三菱重機長崎工場の人たちが出版した古い小さい本が出て来た。被爆の折の体験記だ。序文を書いているのは私の親戚で、被爆して身体中にガラスが刺さって大怪我をしたのを、部下の若い人たちが汽車にのせて市外に運んでくれた。彼は生き延びたが、その時の若い部下たちは皆まもなく原爆症で亡くなった。

子どものころ、よく私は母から、その話を聞いた。満員の汽車の中で、死にかけていたその上司を、部下の若い人たちは、汽車の床に寝せて回りに立って上におおいかぶさるようにして守ってくれていたのだそうだ。傷もなく元気だった、その人たちが、その後すぐに皆死んだのだと母は話した。古い物語を語るように。一族の歴史を語るように。

その親戚の男性が話したのか、別の親戚だったか忘れたが、私の田舎の家によく遊びに来ていた二人の少年の死について語ったことも、母は話した。少年のどちらかは、幼い弟か妹かの赤ん坊をかばって死んでいたそうで、「○○は、赤ん坊の上におおいかぶさるごとして死んどったばい」と、その人は母たちに伝えたそうだ。
大田洋子の「人間襤褸」その他のいろんな話が伝える、死者累々の広島や長崎の町の姿を見聞きするたび、私はその中に、その少年もいたのだと思う。

朝、水まきに外に出たら、つくつくほうしが鳴いていた。セミも普通に鳴いてたが。
おおっ、そろそろ夏も終わりが始まったかと思って油断して、つい外出してあちこち歩き回り、クリーニングに出していた羽根布団ももらって来たりしていたら、昼食を食べ忘れたせいもあって、めちゃくちゃバテて、これは軽度の熱中症かと思いながら、ベッドにひっくり返ってた。危ない危ない。

家の近くの道の脇に、ヤマユリ(テッポウユリ?)がいっぱい生えているところがある。去年までは気づかなかったがどうしてだろう。
もちろん花もきれいなのだが、道のそばの、すぐ手が届くところなのに、誰もとって行かないところがまた、美しさを倍加させている気がする。でも、考えてみたら、昼間は交差点の近くでいつも車が通るし、夜は逆にあたりに家もないからまっ暗で物騒だから、なかなかうっかりとりに行くのは難しいのかもしれない。

今日、道の横の空き地に車を寄せて、写真をとった。どうせ写真にしたら大したことなく見えるんだろうなとあきらめていたが、まあまあだった。実際にはもっと広い範囲で、向かい側にも群生していて、みごとである。

海外ドラマの「ハワイ・ファイブ・オー」は、予算が少なくなったのか、新シリーズは妙に地味で、金が全然かからない話ばっかりになっているのが見ていて笑ってしまう。その分、妙に人情話めいた会話がだらだら続くので、見ていて爽快感がない。金がないならないで、もうちょっとスカッとする話にできそうなものだがな。

昨日、授業はもう終わっていて試験期間なのだが、学生の希望者にはレポートの最終チェックをしてやることにして教室も予約しておいたら、何だか予定をまちがえていて、危うくすっぽかすところだった。学生が事務に訴えたらしく、電話がかかってきて、「なーにー?」みたいな、のんきなノリで応じたら「すみません、学生が待っているようで…」と言われて、ギャーっとあわてて飛んで行って、何とかぎりぎり間に合った(というのか、あれは)。それにしても学生も偉いよなあ、一時間以上もおとなしく待ってるなんてと思っていたら、ここのお手紙コーナーからいくつかメールが入っていたのに、後で気づいた。やれやれ申し訳ないことをした。

連絡をくれた事務にも、今日、お礼とお詫びに行った。「ご自宅にまでかけてすみません」と、あくまで丁重な応対で恐縮した。「以後気をつけます」と言って帰って来たが、最近でこそこういうポカはしないものの、昔の私はこんなミスはしょっちゅうやってたのだよなあ。老いを自覚するというより、変に若返った気がして、困ったことだ。

夜になっても、むし暑い。カツジ猫はおやつやかつぶしをもらって満足したのか、ベッドの上で死体のようなかっこうで長くなって寝ている。

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カツジ猫