でかくなってたなあ
うちにいた子猫、旧名じゅんぺいの近況が入ってきました。
もらわれたおうちを訪れた方が、玄関で撮った写真を見せて下さいました。
いつどこで、どんなときにどこから撮ってもイケメンに写る猫で、しゃくにさわるぐらいでしたが、やっぱりそうで、「とっさに撮ったんですよ」と言われる写真なのに、申し分なく安定のハンサムぶりでした。
あれ何ですかね。目鼻や毛皮や顔かたちの造型だけじゃない気がする。精神の安定というか、ゆらがぬ自信というか、ぶれない落ち着きというか、体幹がしっかりしてるというか、とにかく賢くて強くて、バランスの悪いところが何もない。それが表に現れているのね、常に。
ただ、ちょっとの間にでかくなっていました。飼い主の方の両腕で抱かれてぶらさがっていましたが、顔が、うちにいた時の全身ぐらいの大きさでした(笑)。どこからどう見ても、もう強い若猫で、青年団の団長か、若手政治家みたいな雰囲気でした。戦隊物のヒーローのリーダータイプというか。聖クリスピンの戦いでも生き残りそうな(何のこっちゃ)。
生き残ると言えば、周木律の「大聖堂の殺人」読んでしまって、全巻読了したのですが、毎回誰が生き残るのか見当もつかなくて、今回もおおという感じでした。どうせ、ものすごいトリックなのはわかってたのですが、それにしてもこれは想像つかなかったのが、ちょいとくやしい。満足しました。
さしあたり、ベッドで読むものがなくなった。どこかに読みさしの本があるはずなので、さがさないといけない。
「大聖堂の殺人」、悪の権化の老科学者は確かに悪なのだけど、あの人が悪として跋扈するためには、同じ程度の知性を持った人がいないとだめなのが弱みよねと思って読んでいました。同じ程度でないまでも、あの人の迫力とかオーラとかを感じとって圧倒されるには、少なくともナメクジかゴキブリ程度以上の知覚や感覚は必要なわけで、それがまるで受けとめられないアホやバカばっかりの中だったら、あの人の力は通じなくなってしまうんじゃなかろうか。電気がない無人島じゃ、パソコンの能力があってもだめみたいに。そういう点では、あのシリーズの舞台となる建物は、すぐれた知性や感性がつどう、この世の理想境だよね、いつも。
それとも、あの人の生命力は、単に知性だけなのではなく、クマとか愚か者にも効力を発揮するたぐいのものなのかしら。
話はななめに飛ぶけど、このごろ毎日新聞が、ネットで無責任な悪口書いて、人を苦しめて時には死なせて、今さら罪を自覚して愕然としている人たちを取材してる。インタビューに応じてくれたのはありがたいし、いい記事だ。だけど、私の感覚じゃ、こういう人たち、きっとたくさんいるだろうけど、その一人ひとりの方が、「堂」シリーズの悪の権化の老学者より、よっぽど巨大な悪って気がするのよね。卑小でチンケで、もう言っちゃうとアホすぎる、まさにそのことが。
何度読んでも目を疑ってあきれかえるのが、赤の他人を攻撃し中傷するのに、調べればすぐわかるアカウント使ってやるんだよね。
ちなみに私の母は、匿名や偽名で何かを投書したり攻撃したりする時でも、いやそんなときほど必ず非難した相手が、自分に連絡取れるようにしていた。「反論や弁明や抗議があるのだったら、ちゃんとそれが私に届くようにしていないと、人の悪口は書いてはいけない」というのがモットーだった。私もそれは今も守ってる。
でも、この人たちはそうじゃない。匿名や偽名だと本当にばれないと思ってやってる。しかし調べればいくらでもわかるだろうということを考えてもいない。そのうかつさと詰めの甘さが信じられない。
また、正義感から知らない相手をたたく人にしても、ネットやテレビの映像や新聞記事や人の噂で、事件や人間をあっさり判断する、その無邪気な単純さが、ほんともうおぞましい。脳みそに筋やらしわやら、一本もないんかい。
昔からこういう人はいたろうし、数もそんなに増えても減ってもいないと思うけど、ただ以前なら沈黙してたよね、そういう人は、公的な席では、どうかすると家族の中でも。それを今ではさしたる能力がなくても、パソコンで世界に発信できる。本当に何とかに刃物を持たせるとろくなことにならない。
私は、大学の授業のレポートでも試験でも、カンニングやコピペに一番腹が立つのは、そういった不正やインチキを、ものすごい手抜きでやってくることだ。たとえば人の文章を引用するのに、主語さえ直さず、あるいはキーワードをちょんちょんとたたき込んで検索したらあっという間に盗作した文章がずらずら出て来るような、文字通り「粗悪」な作業をしているやつが、一番むかつく。「不可」以下の評価がないのが残念でならないぐらいだ。
犯罪を犯すのなら、せめて完全犯罪をねらえよ、努力点ぐらいはやるからさ。もうどうせばれるでしょうみたいな、無気力の手抜きでやるやつが、この世で一番私は嫌いだ。「堂」シリーズの老学者なんて、そりゃ被害者にはなりたくないが、なってもひょっとしたらあきらめがつくかもしれないほど、努力してるし精魂傾けてるしがんばってるわけで、気の毒なぐらいである。しかもあの人、そういう自分の偉大さをわかる優秀な相手を次々抹殺して行くわけでしょう。恐くないのかね。そういう知性が絶滅した世界で孤独になるのが。そう思うと根本的に、あの人もどこかとことん愚かに思えてしかたがない。
写真は、ちっちゃかったころの、じゅんぺい。かわいかったなあ。はあ(ため息)。