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有終の美ですってよ奥さま

つれづれなるままに車のテレビでちらっとワイドショーを見たら、首相の入院問題をやってた。あきれかえってものが言えなかった。これだけ仕事をサボタージュして、国も文化も法律もぶっこわして来た首相に、何をまあ同情やら評価やらしようとしてるんだか。人がいいとか通り越して間抜けだろ。レイプ犯に快感が得られなかったんじゃないですかと心配してる被害者よりひどい。コメンテーターも司会者も、そろいもそろって、どこまで骨抜きにされてるんだ。

そして例によって判で押したように「代わりがいない」「野党がだらしない」「民主党政権がトラウマ」って、いったいあんたら、民主党政権の何を覚えてるんだ。野党の政策や要求の何を知ってるんだ。無責任なイメージ操作もいいかげんにせんかい。

毎日新聞では首相は「有終の美」を飾ろうと苦心してるんだそうな。知ったことかい。だいたいそもそも、私がこの首相とその支持者の頭のねじのずれ方が最低だと思うのは、憲法を変えたきゃそれもいいが、それが何でもう、首相個人の「悲願」なんだよ。柳田悠岐が三冠王ねらうとか、藤井聡太が王位ねらうとか、羽生結弦が金メダルねらうとか、そういう基準で何をいったい語ってんだよ。

国政は個人の生きがいや達成感のためにあるんじゃないぞ。何をいったいトチ狂って、自分の人生目標に全国民をつきあわせてんだよ。その感覚がすでにもう、はなっから首相でも政治家でもないって言ってんだよ。あんたの悲願も有終の美も知ったことかい。ひそかに自分でトイレの中かベッドの中で考えるのは勝手だが、それをマスコミに書かれてしまうような姿勢でいてくれちゃ困るんだよ。書くマスコミももちろんバカだが、書かれて怒りも訂正もしないのだから、本人もそれを変とも思ってないんだろ。

あんまりくだらんから、こっちも「有終の美」で連想したこと書いといてやる。
私は学生に卒論指導するとき、最終的に提出するときに綴じて出す、黒表紙や綴紐は早めに買っておきましょうと必ず言う。せっぱつまって一秒を争う事態になったとき、そういうものを買う暇が案外なくなる。そして、人間とはおかしなもので、わりといい内容の論文ができあがってたら、表紙も紐も適当にそのへんにあるので間に合わせたりして苦にならないが、できの悪い論文を書いてしまったときほど、妙に表紙や紐がちゃんと立派なものでないと絶対にだめみたいな気分になって、こだわって、下手すりゃ提出さえしそこなう。

ついでにつけ加えて言うときもある。彼女や彼と別れるとき、それなりにきちんときれいに別れるときは、どこでどう最後の話をしても、そうこだわりはない。もう、思い残すことありすぎで、どろどろのぐちゃぐちゃの生煮えの救いのない別れ方になりそうなときほど、人間はなぜか、絶対にあのきれいな店でとか思い出の場所でとか、今さらもうどうでもいいようなことに必死になる。情けないけど、それがまあ人間の心理ってやつで、どうしようもないものだ。

自分で何度も言っといて何だが、それはこういうことだったかと、あらためて、つくづく思っているよ。

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カツジ猫