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ところで、みけねこシナモンは

◎ずっと具合の悪い三毛猫シナモンは、ときどき食べていたエサもこの数日はまた食べなくなり、ますますやせてきて、椅子やベッドにも飛び上がりにくそうになりました。
しかし、私が横に小さい台をおいてやっていても、それをさけてわざわざ飛び上がります。まったく、どういう心境なんだか。(笑)
そして、いつも落ち着いてゆうゆうとしていて、立ち居振る舞いも変わりません。

10年前に死んだ愛猫キャラメルは、堂々とした立派な猫でしたが、それでも死ぬ前のしばらくは何となく、私に「何とかしろ」と言っているような感じがありました。彼は口内炎で水もほとんど飲めなかったので、その分シナモンよりは苦しかったのかもしれませんが。
しかし、シナモンは、こんな状態になってもまだ、私を頼りにする気配がまったくなく、私には何もできるはずがないと達観している気配が伝わってきて、多分それで私は随分救われていると思います。

◎シナモンは、キャラメルが死んでまもない頃、落ちこんでいた私がホームセンターの店先にあった、グラジオラスの球根を入れた箱の中で見つけた猫です。まだ小さい子猫で、店の人に聞いたら「捨て猫だと思うから、拾ってくれたら猫ちゃんも喜ぶでしょう」とのことで連れ帰ったのですが、わざわざそう確認したくなったほど、彼女は妙に幸せそうにしていました。私に甘えるのでもなく、陽射しの中でグラジオラスの球根にじゃれて、一人でころころ楽しそうに遊んでいました。
その後で獣医さんに診てもらったら、内臓に異常があるとのことですぐ手術しなければならなかったし、空腹でもあったようだし、決して幸福でも快適でもなかったはずなのに、彼女はとても、満ち足りていて満足げでした。

私はそれからも忙しかったし、他の猫もいたし、カツジ猫も来たしで、彼女をあまり熱心にかわいがったとは言えません。それでも彼女はいつも満足そうで、そういう状態の中でもいつもきちんと私と交流する方法を彼女なりに見つけていました。
一時、あまりにも忙しくて、数匹いた猫たちをほとんど外猫状態にしていたことがあります。庭に面した一部屋だけを猫部屋にして、寝室にも居間にもキッチンにも入れなかったから、エサをやる以外にかわいがってやる機会がほとんどありませんでした。

にゃあにゃあうるさく抗議する猫や、半分ノラ猫になった猫もいる中、シナモンはいつも静かで文句も言いませんでしたが、ある時期から彼女は門柱の上に飛び乗って、私の見送りと出迎えを欠かさずするようになりました。私が出かけるとき、帰宅したとき、彼女は他の猫に気づかれないまま、いつもひっそり一人でそこにいて、あまり鳴きもせずにただ全力で私にまつわりついて、盛大にのどを鳴らして甘えました。しかも家に入りたがるのではなく、ただそこに座っていつも私を見送るだけでした。

そういったことのすべてに私はどんなに力づけられ、どんなに彼女に感謝したでしょう。今でも何の変哲もない安物の二本の門柱を見ると、抱きしめたくなるほど愛しいです。毎日その上に座っていたピンクのような淡いオレンジと白と黒のやわらかく丸い姿が目に浮かんで。
胸にがんができて、二度の手術も克服して14歳になって、今こうなってやつれてしまって、いっしょに暮らせる時間もあまりなくなったような状態でも、彼女の様子はあのダンボールの小さい箱の中で、グラジオラスの球根相手に一人遊びをしていた幸福そうな子猫とまったく変わりません。本当に、みごとなまでに、彼女はいつも彼女です。

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カツジ猫