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ぴゅうぴゅう。

◇気持ちいいぐらい寒くて、冷たい風が吹く日でした。夜は「戦場ぬ止み(いくさばぬどぅどぅみ)」という三上智恵監督の沖縄の映画を見に行くことにしていて、朝、仕事に出る前に、ネットでささっと上映会場の隣町のコミュニティセンターを検索して、だいたいの位置を確認したので、そのまま出ました。

仕事が終わって時間に余裕があったので、よく行く雑貨屋で、掘り出し物の十字架のネックレスを衝動買いし、近所に開店した大きなナフコに寄って、祖父の椅子の脚をとめるボルトを買い、これまた近くに新しくできたコメダ珈琲店でゆったりミルクとトーストを注文してくつろいでいて、はっと気がつくと時間を一時間まちがえていて、映画は今にももう始まりそう。

場所をはっきり知らないけど、時間に余裕があるから、ぼちぼち探しながら行けばいいやと思ってたのですが、それどころではない。トーストをミルクで流しこみ、事故だけは起こすなよーと自分に言い聞かせながら、うろおぼえの地図と目印を頼りに見知らぬ夜の道を車で飛ばして、奇跡的に数分遅れただけで間に合いました。一度だけ暗い道のそばにぽつんと開いていたお店で場所を聞いたら、そこがもうすぐそばで、店のご主人は寒い中、外に出て来て「あの信号を…」と教えて下さって、いやーありがたかった。

映画は前作の「標的の村」同様、よかったです。(「標的の村」は、もともとテレビ局の映画だったか何かで、もうすぐ今のようなかたちで上映できなくなるそうで、もしどこかで見る機会があったら皆さん今のうちです。)辺野古の基地に反対する人たちの、切なく尊くおもしろい(と言っちゃ語弊があるけど、ほんとに皆がいとおしくなる)群像が生き生きと描かれ、賛成反対派の分裂も、抗議が成功しない悲しみも、すべて描かれて、つらくて見ていて苦しいのに、決して暗くも苦くもなく、無邪気に未来と世界と人間を愛して信じる人たちの温かさと明るさが、いつも画面にみなぎっています。
単に市民運動とか平和運動とかの範囲だけでなく、生き方や考え方そのものを、教えられる映画です。

描かれる戦いは、決してカッコよくない。みっともないところも多い。でも、それでもいいんだと見ていてわかる。悲しくてもぶざまでも、しなくてはいけないことがあって、それを続けていけば必ず何かが動いて行くし、変わって行く。それが伝わる映画です。

参加者が少ないのが残念でしたが、実はむなかた九条の会でも、この映画、来年二月に上映するのですよね。ものすごくたくさんの人に、ぜひ見てほしい。特に、新学長が決まって、何だかすごく暗くなっていた福岡教育大学の先生たちに、とても見てほしい。できたら新学長にも、見てほしい。

https://www.facebook.com/gakuchousen/

◇私が心配しているのは、教授会の投票もしないまま、決定された学長は、それでなくても皆の声を聞いたりまとめたりすることが至難の業の、大学と言う組織で、「構成員の声を聞き、その実現をめざす」ということがめやすにならなかったら、学長や執行部は、その行動のよりどころを、目上や外部の評価におくしかなくなるのではないかということです。それももちろん必要だけど、それしかなくなったらマジで危険です。

大昔、少女小説とか書いて商業雑誌に載せてもらってたことがあるのですが、その時初めて知ったのは、出版社や作家というのは、自分の書きたいことや出したい本があって、それを人に読ませるために、あの手この手の工夫や苦労をするのではなく、最初からただもう人に読んでもらうために、何を書けばいいか何を出せばいいかを考えているしかないのだ、という衝撃の事実でした。なんかこう、イメージで言うと、どでっと太ってねそべっている生き物に対して、「これ食べる?これはだめ?」と、いろんなお皿を差し出しつづけているみたいな。
あくまで一般論ですが、大学がそうなったら、どうしようもない。

そして、悪いこととは続くもの連鎖するもので、指導者や権力者が構成員の意見を聞かずにいる状態があまり長いと、今度は構成員の方が個人も組織(講座とか学科とかセンターとか)も生き残るために、指導部の要求に合わせ始めて、正しい競争ではないぬけがけや裏切りが跋扈しはじめる。それは、その組織も大学全体も限りなく劣化させ弱体化させます。

この場合も、個人にせよ組織にせよ、自分なりの要求や展望があって、それなりの美学やモラルもあって、それを守りながら指導者たちの要求とすりあわせて行く、ということももちろんあるわけでしょうが、分断されて疑心暗鬼になっている状態では、構成員どうしでも、「あの人は裏切った」「あそこは学長についた」「あの人は私利私欲に走った」みたいに、おたがいを攻撃し敵対してしまいます。

指導者としては、その方がやりやすいと思っているかもしれませんが、こういう状態は結局は上に立つ者にとっても最低最悪の結果を招くものです。あらゆる意味で、ろくなことにはならない。

あくまで一般論ですが、ものすごく心配です。こういう時に結局一番大切なのは、「どのように生きるか」「何を一番大切にするか」という、アホらしいような根源的なことに戻って、じっくり考えることです。そして守るべき生き方を決めたら、とにかく目をつぶってそれをつかんで、しがみついて離さない。そのくらいしておかないと、絶対に混乱してするべきことや、すべきでないことを見失ってしまう。

そういう時に、この映画は、ものすごく参考になります。

◇映画が終わっても私の冒険はまだ終わらなくて、実はぎりぎりですべりこんだので、車のガソリンがゼロに近かったのです。帰りの道をうっかりまちがえでもして、ガソリンスタンドが見つけられなかったら、それこそこれまたえらいことになる。

なので、映画の感動は助手席においといて(笑)、地雷原を進むように慎重に元来た道を引き返し、無事に大きな道に出て、ガソリンスタンドにすべりこみました。やれやれです。

◇そうそう、少し前に昔のドラマの「ナポレオンソロ」で、私が覚えてるのは、野沢那智も吹き替えてなかったイリヤのアヒルの鳴きまねとか、そんなんばっかと書いたんですが、映画の人気は恐るべし、その場面が動画でアップされてました。
ほんの数秒で、ばかばかしすぎますが、まあ気晴らしにお楽しみください(笑)。

https://www.youtube.com/watch?v=B6Ehxp2iumA

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カツジ猫