ぼくと、ミルクさん(カツジ猫)
みなさん、おはようございます
しろねこの、みるくさんは、あいかわらず、いえにいて、
よるは、かならず、かいぬしのかおのよこに、くっついて、ねています。
そこは、ぼくのいちだったから、ぼくもまけないように、
かいぬしが、べっどにいくと、おおいそぎでいって、
ばしょとりをするんだけど、
みるくさんは、よぼよぼの、ぼけたとしよりみたいなくせに、
へんに、しゅんびんで、いつも、ぼくよりさきに、かいぬしのそばを、げっとします。
きゃらめるさんと、あにゃんさんは、はなれたところでねていて、
それをみて、おもしろがっているみたいです。
ぼくたちは、もうみんな、しんでいるので、かいぬしのめにはみえません。
でも、なにかを、かんじるのか、ときどき、てをのばして、
ぼくたちをなでて、「そこにいるの、みるく。かつじも」とかいいます。
みるくさんは、たまに、ぼくがさきに、かいぬしのかおにくっついても、
べつに、きにしてないようで、へいきで、ぼくにくっついて、
かいぬしと、ぼくをはさんで、ねてしまいます。
ぼくは、あついのが、きらいなので、そうなったら、しばらくして、
ぬけだしてしまうので、けっきょく、ばしょをとられます。
まいばん、すごく、くやしいです。
もうすぐ、ぼくの、つきめいにちです。
おさしみを、そなえてもらえるかなと、ぼくがそわそわしていたら、
めずらしく、みるくさんが、「つきめいにちって、なんじゃね」と、きいてきました。
きっと、きゃらめるさんか、あにゃんさんから、ぼくが、たのしみにしてるって、
きいたのだとおもいます。
みるくさんは、だいたい、あんまり、ひとのはなしを、おぼえてないので、
ちょっと、びっくりしました。
みるくさんは、たしか、きゃらめるさんのしんだあと、
かいぬしが、のこされたみるくさんを、みているのがつらくて、
いなかの、おかあさんにあずけて、そこで、かわいがってもらってたけど、
そのうち、いえでして、ゆくえふめいになったと、きいてたから、
とうぜん、めいにちも、わかりません。
かいぬしは、きゃらめるさんが、だいすきだったので、
しんでから、にじゅうろくねん、めいにちをわすれたことはなくて、
おはなや、たべものを、そなえますが、
あにゃんさんのめいにちは、おぼえてないらしくて、なにもしません。
あにゃんさんも、きにしていません。
みるくさんは、どうなのか、わからないので、ぼくは、びびって、
「つきにいっぺん、いろいろ、ごちそうを、もらえるんだ」といいました。
きゃらめるさんが、むこうのほうで、かおをあらいながら、
「この、へたれ」というように、しっぽをうごかしていたけれど、
じぶんだって、せつめいできなかったくせに。
みるくさんは、「ふうん。それはたのしみじゃの」といって、
ほんとうに、たのしそうなかおをしていました。
なんだか、はらがたったので、つい、
「ぼくの、しんだひだから、おそなえしてくれるんだ。
みるくさんは、いつしんだの」と、きいてみました。
すると、みるくさんは、ちょっと、かんがえてから、
「おぼえておらんのう。しんでるか、いきてるかも、よくわからんし」と、
いいました。
きゃらめるさんは、むこうのほうで、かおをあらいながら、
みみを、ぴくぴくさせていました。
「どこで、どんなにして、しんだかも、わからないの。
としをかんがえたら、あなたがいきてるはずないよ」というと、
みるくさんは、あいかわらず、つかみどころのないかおで、
「そうかのう。わしは、じかんというのは、よくわからん。
そういわれてみると、いつかはしんだのじゃろうが、
それが、いつのことか、どういうときだったのか、きめられんのう。
くるしいときも、たのしいときも、
さむいときも、あたたかいときも、
はらいっぱいのときも、ひもじいときもあったが、
そのなかの、いつが、しんだときか、おぼえとらんよ。
だれもが、そんなもんじゃないかの」と、いいました。
「そんなことないよ。
あんたが、ちゃんといきてなかったんじゃないの」と、
おもわずいったら、むこうで、きゃらめるさんが、
かおをあらうのをやめて、こっちをみていました。
ぼくは、やけになって、
「いじめられたとか、かわいがられたとか、
だれかとくらしたとか、いろいろ、あるでしょ」といいました。
みるくさんは、あいかわらず、ぼうっとしたまま、
しろいけのなかの、あおいめで、ぼくをみかえして、
「うん、それはそうじゃ。
ひとりで、ながいこと、もりのなかを、あるきつづけたこともあるし、
たくさんの、こどもや、おとなにかわいがられて、
まいにち、うれしくて、たのしかったこともある。
きょうだいと、めぐりあって、うみべの、すなはまで、
ひがくれるまで、かにや、かいを、おいかけたこともある。
じゃが、いまとなっては、もうそのどれが、
じっさいにあったことか、あったらいいなあとおもっただけのことか、
わしには、くべつがつかんのじゃ。
いきていたあいだのことか、しんでからのことかもな。
まあ、いきているあいだから、わしは、そんなふうだったのかもしれん」
と、いいました。
みるくさんが、そんなにながいこと、しっかりしゃべったのは、
はじめてで、ぼくは、すっかり、びっくりしました。
きゃらめるさんは、また、かおをあらいだしていて、
「おまえがはじめたことだから、じぶんでしまつをつけろよ」と、
そのせなかが、いっているみたいでした。
ぼくが、こまっていると、みるくさんのほうが、
「つかれたのう。わしゃねるよ、わかいの」といって、
べっどにあがって、ぼくのすきな、まくらのうえで、
あっというまに、ねてしまいました。
ぼくもつかれたから、ねることにします。
なんだかよくわからないけどさ、
みるくさんって、きらいだい。
かいぬしが、てばなしたくなるのも、あたりまえだよ。
