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ぼくの、ききたいことば(カツジ猫)

みなさん、こんばんわ

ぼくは、いきていたとき、ずっとかいぬしから、
「いきているねこのなかでは、おまえがいちばんすきよ、かつじ」
とよくいわれていました。

そのときは、もう、かいぬしは、ぼくいっぴきしかかってなかったから、
「へんないいかたするなあ」と、ちょっとおもったけど、
だんだん、かいぬしには、もうしんだ「きゃらめる」さんというねこがいて、
そのねこに、えんりょして、「いちばんすき」とはいわないんだとわかりました。

ぼくはしんで、かいぬしのめにはもうみえないけど、
いまも、このいえで、きゃらめるさんと、くろねこのあにゃんさんと、
いっしょにくらしています。

しんでから、ぼくのめにみえるようになった、きゃらめるさんは、
たしかにりっぱで、どうどうとしていて、みためもよくて、
ぼくはかなわないと、すぐあきらめたけど、
もうぼくもしんだのだから、かいぬしに、
「いちばんすき」とはいってもらえなくなったとおもうと、
そこはちょっと、くやしかったです。

でも、かいぬしも、そこのところは、いろかんがえていたようで、
このまえは、とうとう、ぼくに、
「ながいきして、しんだおすねこのなかでは、おまえがいちばんすきよ」
といったので、ぼくは、やったーとおもいました。

かいぬしも、きっとなんとかして、ぼくに、
「いちばんすきよ、かつじ」といいたかったんだとおもいます。
 きゃらめるさんも、あにゃんさんも、はやくしんでいるし、
うえの、おもやに、いまもすんでいる、しんだねこたちのなかには、
としをとってしんだ、めすねこはおおいけど、
おすねこは、いません。

それでも、ながすぎて、めんどうだったのか、このごろは、
「はいいろのねこのなかでは、せかいじゅうでおまえがいちばんすきよ」
といっています。
 ときどき「せかいじゅうで」はしょうりゃくするけど、
どっちでも、ぼくはまんぞくしています。

ききたかったのは、とにかく「いちばんすき」という、ことばだったから。

さいきん、このことで、ぼくがおちこんでいたので、
きゃらめるさんがきがついて、
「なにを、ふけいきなつらしてんだ」としんぱいしました。
 みみも、なめてくれました。

そのときは、いえなかったけれど、もういいかとおもって、
このまえそのはなしをしたら、きゃらめるさんは、「ふーん」とあきれて、
「おまえも、へんなねこだなあ。そこがかいぬしは、きにいったのかもな」
といいました。

「にんげんが、おれたちのことをどうかんがえても、
べつに、きにすることはないのさ。
 ねこってのは、そういうもんだ。
そのほうが、にんげんにも、きらくだろ」といったけど、ほんとかな。
 きゃらめるさんのほうが、かわってるのかもしれない。

きゃらめるさんは、そのあとで、
「おまえ、そのはなし、あにゃんにするなよ」といいました。
 「あいつは、くろねこだし、かいぬしは、くろねこはいっぱいかってたし、
はやじにしたのもおおいからな」だって。

「はなさないけど、かいぬしは、きっとまた、
あにゃんさんにだけあてはまる、いいかたをかんがえつくよ。さいあくのばあい、
『あにゃんというなのねこのなかでは、おまえがいちばんすき』
とか『あにゃんが、あにゃんだから、それでもう、だいすき』とか」というと、
 きゃらめるさんは、しばらくかんがえていてから、
 「まあ、このうちにいまいるくろねこのなかでは、おまえがいちばんすき、
はありかもな」といって、
ぼくは「あー、それいいね、さいこう」とよろこびました。

きゃらめるさんは、「それにしたって、いうんじゃないぞ。
だいたい、いちばんとか、にばんとか、かんがえるのが、わるいくせだ。
 いちばんどころか、だいすきよとか、すきよとかさえ、いってもらえないまま、
しぬねこも、せかいでは、たくさんいるのに」といいました。

きゃらめるさんは、やっぱりすごいとおもったけど、
でもぼくは、やっぱりかいぬしに、「いちばんすき」といわれたいんだよな。
 きゃらめるさんとぼくと、どっちがかわってるのかな。

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カツジ猫