ぼくの、なきごえ(カツジ猫)
みなさん、こんばんわ
きょう、かいぬしのぱそこんのかんりをしている、わかいひとが、
ぼくの、おはかまいりに、きてくれました。
とてもりっぱな、おはなのかごを、もってきてくれて、
かいぬしは、すっかりきょうしゅくして、おれいをいうのもわすれて、
「まああ、かつじ」と、なぜか、ぼくによびかけながら、
ぼくの、にわのおはかから、みえるところに、
おはなをかざりました。
ちゅーるも、もってきてくれて、それもならべました。

「なんてことでしょう。こんなに、いろんなかたから、
にんげんでももらえないような、りっぱなはなを、
なんどもいただいて、みなさんに、いろいろ、おしんでもらえて、
こんなねこ、ほかには、いなかった」
と、うれしがりながら、とまどっていました。
きゃらめるさんと、あにゃんさんも、
ぼくといっしょに、にわから、みながら、
「おまえ、すごいなあ」と、かんしんしていました。
ぼくも、うれしくて、とくいなきもちもあったけど、
きのう、もう、ぼくはしんだから、
「いきてるねこのなかでは、おまえがいちばんすきよ」と、
かいぬしに、いってもらえないんだと、きがついて、
(だって、しんだねこたちのなかでは、かいぬしが、
いちばんすきなのは、きゃらめるさんなんだし)
なんだか、すこし、かなしいままでした。
でも、おはなはきれいだったから、
きぶんは、だいぶ、よくなりました。
わかいひとは、そのあと、かいぬしと、
しごとのうちあわせをしていました。
まえになんどかきたときに、
かいぬしが、うえのいえにいっていて、
ぼくと、ふたりきりでいたときに、
「どうが」をとっていたからと、いって、
それを、かいぬしのぱそこんと、すまほに、
いれてくれました。
ひとつは、ぼくが、てーぶるのうえをあるいていて、
しっぽをおもちゃにされて、ふりむいているところで、
もうひとつは、かえりがけに、かなあみのなかから、
かおをすりよせているところです。
かいぬしは、どうがをもっていなかったので、
「あー、かつじがうごいてる」とかんげきして、
「あなたに、すっかり、きをゆるしてるね」と、
かんしんしていました。
「あとは、こいつの、こえがきけたらねえ」と、
かいぬしがいうと、わかいひとは、
「こえも、でますよ」といって、おとをだしてくれました。
ぼくが、にかいほど、にゃーおとないています。
ひとつは、かいぬしが、いやがっていた、しゃがれごえで、
ひとつは、わりとあまくて、かわいいこえです。
かいぬしは、きくなり「わーっ」とよろこんで、
「あー、こえがきけるなんて」とくりかえしていました。
わかいひとが、かえったあとも、
なんども、さいせいして、ぼくが、うごくのと、なくのを、
にまにましながら、たのしんでいました。
みていると、ほんとうに、こうふくそうで、
ぼくも、みていて、うれしかったです。
きゃらめるさんたちが、へやのむこうで、
とっくみあいして、あそんでいるのをほうっておいて、
ぼくは、かいぬしのそばで、ずっと、かいぬしをみていました。
なにかのはずみで、「かつじ、いちばんすきよ」と、
いわないかなあと、おもったけど、
むりなのは、わかっていました。
かいぬしは、ほんとうに、きゃらめるさんをだいじにしているから、
ほかのねこに、そのことばはいうはずがないもん。

きゃらめるさんは、ぼくがこないので、
ぼくのそばにきて、ぼくをなめながら、
うっとり、すまほをみている、かいぬしをみて、
「おまえ、しあわせだなあ」といってくれました。
べつに、うらやましそうじゃなく、
じぶんも、けっこうまんぞくそうでした。
「うん」とぼくはいったけど、
じぶんのきもちは、よくわかりませんでした。
でも、やっぱり、しあわせなのかな。
とにかく、ぼくのこえが、のこっていて、よかったです。
「わたしが、うっかり、けすといけないから、
あなたも、このどうが、ほぞんしておいてね」と、かいぬしは、
わかいひとに、たのみこんでいました。
それって、けっこう、はずかしくないかい。
ぼくのことになると、なりふりかまわなくなるんだからな。