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わ、プレッシャー(笑)

ものすごい雨の中、用事があって遠出した。高速を走っているとき、雨は滝のようになり、前も見えないほどだった。それでもけっこう飛ばす車が多いから、もう死ぬかと思ったぜ。
私だって飛ばすのではほんとは負けちゃいないのだが、何しろもういつ買い替えてもおかしくない、20万キロ以上走っている車だから、いまひとつ勝負に出られない。用心しいしい走って何とか目的地に着き、用事もすませて、帰りはもう高速はいやだと一般道を通ったら、今度は道があっちこっち冠水していて、ざぶざぶと水の中を走るはめになり、これまた生きた心地がしなかった。車は幸い、がんばってくれて、エンストも起こさず無事に帰宅できた。

「断捨離狂騒曲」をさしあげた大学の先輩の先生が、お返事の手紙といっしょに、ご自分の以前書かれたエッセイのコピーを送って下さった。全文引用したいほどに魅力的な文章だが、それも失礼だろうと思いとどまる。その中に引用されていた、森鷗外の、戦場で落としたカフスボタンの片方を惜しむ詩というのが、私は知らなかったのだが、とてもいい。というか、えっと思いながら笑ってしまう。その金色のボタンをベルリンの店で買ったときのことやいろんな思い出をよみがえらせて、「ますらをの 玉と砕けし ももちたり それも惜しけど」、この身になじんだボタンも惜しい、という詩である。

すごい。「百人千人の戦死者も残念だけど、このボタンも同じぐらい残念」って、書いちゃうんだ。負けた(笑)。完敗。さすが鴎外。あたりまえだけど。

「死ぬ気まんまん」で佐野洋子が、戦後民主主義の悪口をいろいろ書いてて、「人の生命は地球より重い」なんて嘘っぱち、と言い切ってたのを、なぜか思い出した。

検索したら、この詩の全文も見られたけど、やだ、これ有名な詩なのね。知らなかったのが恥ずかしい。しかも「舞姫」のエリスがらみで有名なのか。でも、それは何だかあまり考えたくないな。具体的なイメージより、漠然としてる方が素敵だ。

先輩の先生がこの詩を含んだエッセイを送ってくださったのは、もちろん、私が「もの」にこだわる心境を描いた「断捨離狂騒曲」へのお返事でもあるのだが、何だか平安朝の人たちが和歌の返歌をもらったような、ときめきとわくわくと幸福感を味わってしまった。

それから、数人しかフォロワーがいない私のツイッターに、新しい方がフォロワーになって下さったのだが、どうやら私の、しょうもないプロ野球ネタをごらんになった野球ファンの方らしい。わー、プレッシャー。仕事が行き詰まって、まともなことをしたくないとき、気晴らしの息抜きにのぞいてる、2ちゃんねるの野球関係のスレッドなんだけど、これからはときどき、面白そうな記事は紹介しとこうかしら。

それでふと、大リーグをネタにしたリング・ラードナーのユーモア小説「アリバイ・アイク」を思い出し、ついでに(ラードナーも新聞記者だったから)、ジャック・レモンとウォルター・マッソー主演の映画「フロント・ページ」(ビリー・ワイルダー監督)も思い出した。DVDを数日前に見直したばかりだったのもある。

これDVDの字幕が本当につまらないので面白さが半減してるが、めちゃくちゃ笑えて面白い。予告編はまじめな社会派ぶっているが、それもきっとジョークなんだろと思うぐらい、ジャーナリズムの良心なんかかけらもない記者たちの、のんきでのどかなドタバタ劇が、逆に痛烈で楽しい風刺になっている。これと「新聞記者」を比べるのはまちがいなのだが、それでも、この、「フロント・ページ」の、腐りきった政治と無責任なマスコミの絶望的な状況を、のほほんと笑いのめして、しかもきっちりヒューマニズムとリベラリズムの骨格を骨太に持ち、どこまでも暖かい底力がみなぎる、このセンスを、この精神を、抱きしめたいぐらい私は愛する。

ちょっとテンポが悪くてもたつくのは、マッソーがワイルダー監督にしごかれすぎて萎縮したらしく、いまいちノリきれてないのだよね。必死でがんばっているのが、ちょっとわかってしまう。でも、それでも最高。まだ若いスーザン・サランドンも最高に魅力的だ。

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カツジ猫