キラキラネーム
高校野球は大会で一番面白いとも言われる準々決勝だ。大相撲と同様、特にひいきのチームはないので、気楽に楽しく見ていられる(笑)。先日、校歌が草野心平作詞、山本良純作曲とかいう高校があって、すごいやんと思わず目を見張ったが、どこだったっけ、もう残っていないのかな。
それにしても、聞いていて、どういう漢字なのか留学生かしらんと思わず画面を見てしまうのは、女の子だけじゃなく、男の子たちにも、このごろはものすごいキラキラネームっぽい名前が多いなあ。タレントか女子か外国人かと思うような。それも一人や二人じゃない。昔ながらの素朴な名前の方がむしろ珍しい。
もう一つは、これはもう数年前からだが、機動力重視というやつで、盗塁やヒットエンドランや、足を使ったプレーを駆使するチームが増えて来た。おかげで見ていても息が抜けずに目まぐるしく、スモール野球が好かんというファンの気持ちもちらっとだが、わからんでもない。あれはやっぱり、よっぽど上手い選手が時々華やかにやるのが楽しいのかもしれない。
とは言っても、その華やかさに憧れて、努力する選手が多くなるのは無理もない。そしてホームランと同様に、これらの走塁や盗塁がそういう憧れの対象に最近特になって来たのは、やはりホークスの周東選手を主としたプロ野球の影響だろう。周東選手という人が、またプレー以外にもいろんな要素で注目を集めるキャラだから、しかたがないのかもしれない。
先日プロ野球の開幕前ということで、福岡のテレビ局が二時間ばかりの大盤振る舞いの特番を組んだ。面白そうだったから、いつも見る「開運!なんでも探偵団」もあきらめて、しっかり視聴した。藤本元監督のおおらかさや、変にクールな明石コーチなど、出演者たちもそれぞれ魅力的で面白かったが、妙に笑えたのは周東選手がらみの話題が多く、それも本人よりも周囲の発言がやたらおかしかった。
幸運にもYouTubeがあげてくれてるのでリンクしておく。それを見ればわかるが、選手たちに聞いたいろんなアンケートが多くて、その中で、「チームメイトの中の誰に一番憧れるか」というのがあって、近藤・柳田選手の打撃や、杉山投手の投球を抑えて一位になったのが周東選手で、しかもうらやまれる理由というが他の選手とちがって、本職の俊足だけではなかった。
まず牧原大成選手が「スタイル。顔。着こなし。カッコいい」と言っているのに、あんたまた&まだそれかよと大笑いした。昔、今は広報スタッフで活躍している西田選手と移籍した上林選手の人気をうらやみ、顔としゃべりが人気の理由だと言ってたり、後輩の周東選手の人気や活躍に「天狗の鼻を折ってやる」と対抗意識を燃やしてたり(周東選手はその発言を知ってるかとインタビューで言われて「聞きましたよ。もうっ!」と答えてたが、その後結局仲よしになってしまったようなのは、牧原選手の人の良さか周東選手のしたたかさか、どっちもなのかどっちでもないのか知らない)してたのと全然変わってないじゃないかと思った。でも、そのことも含めて、最近大人びてきた周東選手に比べて牧原選手はいつまでも変わらず若々しく、見た目もだんだんきれいになって行ってるようなのは、その変わらなさのせいもあるのだろうか。
さらに輪をかけて笑ったのが谷川原捕手が「根拠のない自信」、秋広選手が「声量。何でも平気で大声で言ってしまう。面白くても面白くなくても大きな声で言うから、あれでいいんだと思わされる。自信がすごい。メンタルが強いと思う」と、二人ともけっこうな先輩のスターに向かって相当失礼なことを言ってるのにも全然気づかず、本当に感心して不思議がっているようなのが、最高だった。そして二人ともがちゃんと活躍もしていて、特に秋広選手はものすごく背も高くて最近は打撃開眼したのか成績もいいのに、何だかどちらも軍隊映画の脇役の新兵みたいに、もぞもぞぼそぼそ自信なさそうに口ごもって考えながらつぶやくのが、ああ、本当に先輩の切れ味や迫力がうらやましくて、圧倒されるのが自分でもなぜかわからないんだろうなと、つくづく伝わるのが、また最高だった(笑)。
周東選手本人はそれを聞かされて「顔はないでしょ」とあっさり流し、「自信はないです。だましてるだけ。だませてますね」と笑っていた、自覚のほども立派と思う。
秋広選手は二メートルと大柄だし、周東選手も実は長身だが、見た目は細身の小柄に見える。それでも大柄なチームメートと並んでも、たしかにどこか周囲を支配する迫力や圧を感じる。でも考えれば小柄でもこういうオーラで他を圧するのは、番組でも再三登場する、もっと小柄な今宮選手などは、それ以上にはっきりしている。(柳田選手のオーラは、ちょっと二人とは異質で、もっとのどかで、暖かに人を包み込む。)どうやらスタメンを今年ももぎとりそうだが、気迫や切れ味は多分、周東選手以上にすごい。私はときどきスタインベックの小説『ハツカネズミと人間』の主人公ジョージを、今宮選手に演じさせてみたくてたまらなくなることがある(笑)。相棒の怪力の大男で優しい知的障害者のレニーも誰かがやってくれたらいいんだけど、さすがになかなか見つからない。
ちなみに周東選手はWBCで仲間をいたわる心遣いが高く評価されてファンも増え、「選手会長として成長した」と分析する人が多い。だが、前にも書いたように、彼のこのような気遣いや、自分が出場できなくても皆に目を配り励まし力づけるのは、前回のWBCや、それ以前からも一貫して変わっていない。
ただ、選手会長の仕事が、それをさらに徹底させたことはあるかもしれない。私が憶えているのでは、去年、死球などの負傷続きで満身創痍だったときのいつだったかにグラウンドに来たとき、「僕のチームだから」と口にした一言がある。もちろん「僕のチーム」にはちがいがないが、あの言葉は明らかに、その一員としてのものではなく、指導者、管理者、保護者、責任者としての意識で発せられたものだと強く感じた。監督やコーチ、オーナーとの住み分けはもちろん理解しつつ、それらと共通する立場の人間としてのまなざしで、声だった。
彼は切り替えの速いのでも有名らしいから、選手会長を辞してからは、多分もうその意識は捨てている。選手会長を譲ったあとの「これからは自分のことしか考えない」という発言もそれを裏打ちしている。
だが、そういう体験も含めての視線や態度が、後輩たちの、失礼な発言であることさえも忘れて、実感にみちた変な評価をしてしまう存在感やオーラを生むのだろう。それが実際の成績で、「だませてる」のじゃない本物になるかどうかは、これからの課題だろうが。
でも、この番組で、とても印象的だったのは、「誰が今年のキーマンになると思うか」とのアンケートに若手やベテランさまざまの選手(近藤・柳町・栗原・大関・野村勇・松本晴・前田悠伍・スチュワート)たちが「僕ですかね」「自分自身」「僕じゃね」「自分ですかね」「僕じゃないですか」などと、「自分だ」と回答していたことで、結果がどうなるかは知らないが、これは本当に驚いたし、愉快だった。私が首脳陣だったら、どんなにうれしいだろうと思う。
椿を切って飾ってみました。つぼみもちゃんと室内で開いて、偉い(笑)。
