クラリスとトラ。
◇一週間分もらっていた風邪薬がそろそろ終わりかけている。まあよくなったみたいだから次のをもらいに行かないでも大丈夫とは思うのだが、なくなるまでは呑むことにしとこう。
血圧関係の薬と合わせると、けっこう種類が多くなる。これは年よりはまちがえるよなあ。って、私も年よりだった。私なんかよりよっぽどしっかりしている、大学の同級生だった友人が、先日、薬を何というんだっけ、あの銀色の包装紙ごと呑んであわてたけど、まあ無事にすんだと言っていて仰天した。そういう話を聞くたびに、とても考えられない、自分もいつかそうなるのだろうか、年を取るとは恐ろしいことだとか思っていたというのに。
風邪薬は三種類あって、二つが一回二錠、一つが一錠だ。どれもこれも白くて丸くて区別がつかない。封を切ったらすぐに呑まないとどれがどれかわからなくなるが、それやると今度はどれを既に呑んだか忘れそうになる。やっかいだ。
どれが一錠でどれが二錠だったかも覚えていなくてはならない。一錠の薬はクラリス何とかで、二錠の分はトラなんとかだったので、「羊たちの沈黙」のヒロインでFBI捜査官のクラリスは強いから、一人でトラ二頭ぐらいやっつけられるんだと覚えておくことにした。
私はいろんな暗証番号やパスワードも、この調子で覚えるので、まあ自分ではわかるのだが、他人には絶対に無理だろうなあ。それでいいわけだが。
忘れて、自分で書いておいた「パスワードのヒント」というのを見てみると、「名島の正月」「世にも美しいしっぽ」「エリックの認識番号」「剣闘士の先祖」などという謎の文言が並んでいて、自分でもときどき「はい?」となる。時には、ずっと昔に廃車にした車のナンバーに、アメリカ発見やフランス革命の年号を足したりした四けた番号だったりして、自分で言うのも何だが、ひどすぎる(笑)。
◇それでまた思い出したが、さっき見ていた海外ドラマの「ナポレオンソロ」の第三シーズンで、悪人たちが大学を乗っ取ろうとしていて、ソロとイリヤと悪人じゃない大学教授二人と女子学生を教室の椅子にしばりつけて、最終講義とか言って、テレビでいろんな問題を出し、ボタンを押して選択した答えがまちがっていたら、自動的に毒ガスが出て死んでしまうというしかけをして放置するという場面があった。自分たちは卒業式に出て、別の悪事(ウェーバリー課長の暗殺)をしなきゃならなくて忙しいから、ソロたちが「ナポレオンの没年なんて君当然知ってるだろ?」「名前が同じでもそこまで詳しくない!」みたいにあわあわやってるのを見られるわけじゃないし、いつもながら中途半端なサディズムぶりがアホらしすぎて面白かったが、それよりちょっと感無量?だったのは、その教室のテレビ機器の装置が、今の大学や多分小中高の教室のそれとまるで見た目が同じで、ちっともレトロじゃなかったことだった。50年前のドラマだぞ、どうでもいいけど。それより、やっと追いついたと喜んでおくべきなのかしらん。
◇福岡教育大学の再生を願う署名は、あと10人ほどで300になります。コメント欄を見るだけでも、教育大に限らず、日本の大学の実態がいろいろ感じられて勉強になるので、皆さまぜひのぞいて見て下さい。私は中野三敏先生の「師恩」を読んで、昔の大学関係者は気骨もあってちゃんとしてたなあと思ったりしていましたが、この署名のコメント欄の文章を見ると、誠実で素直で勇気もある人たちは今も変わらずいるのだなあと、あらためて思います。
多分今日が新しい学長に辞令が出る日です。教職員の過半数が明確に退任を要求している大学で、どのように運営を行っていくのかとても見当がつきません。今の学長も次の学長も私は存じ上げているのですが、この状態を力で押し切ろうとするような方ではなかったという印象があります。しかし、新学長が就任して、一段落して無事にすんだという印象を持たれたら、これまでもそうだったように、粛清とか報復とか思われてもしかたないような措置がとられることもあるのではないかと恐れます。そうなっても事態が改善することは、まったくあり得ないでしょうから。
私が危惧するぐらいですから、署名を呼びかけ賛同している現職の先生方は、きっとそれを予測も覚悟もしておられるのでしょう。その覚悟がどうか無駄に終わりますようにと心から祈らずにはいられません。彼らを孤立させないように、どうぞよろしくお願いします。