ストックと金魚草。
◇私はいまだにストックと金魚草の花の区別がつかないのだよね。今ネットで検索したら、「見分け方」の説明や画像まで、いろいろあって吹き出しました。そうか、私だけではなかったか。
https://ameblo.jp/flow-art/entry-12252838574.html
昨日、スーパーの花屋の店先で一束180円のどっちか(おいおい)が売ってあったので買って来ました。ひとつまちがったら変な匂いになりそうな、独特のかぐわしさがあって、でもこれも、どっちの花の香りなんだろう。
いつも見るたび、嗅ぐたびになつかしいのは、もう20年近く前に死んだ愛猫のキャラメルを庭に埋めたとき、いっぱいに入れてやった花が、この二つだったからです。3月の初めだったので、店にはたくさんこの花がありました。
今の私の同居人?カツジ猫は、大きな洋猫風の(実は見掛け倒しのやせっぽち。笑)ふかふか毛皮ですが、首筋やおなかに顔を埋めても、ふしぎなほどに、何の匂いもしません。途中までしか読んでない「香水」という小説に出てくる主人公がたしか何の体臭もなかったのだけど、それを思い出します。
キャラメルは、和猫と洋猫がまじった、最盛期には7キロの堂々たる体格で、毛も微妙に長いという感じでしたが、エイズと白血病で板のようにがりがりにやせて死ぬその日まで、首筋に顔を埋めると、ふわあっといい匂いがしました。昔むかし、母が文通していたアメリカやドイツの女性たちからときどき贈ってくるプレゼントの人形やリボン、叔母が買ってくれる舶来物のお菓子や服に共通する、外国のお洒落な品物の香りと同じでした。あれはいったい何だったのだろう。今でもふしぎな気がします。今もそういうものの匂いを嗅ぐと「あ、キャラだ」と思います。
その香りと、この二つの花の香りと、二つがキャラメルの思い出につながるのは、何だか平安朝の貴公子の思い出みたいで笑えます。まあ匂いのしないカツジ猫も、多分狩りなんかする時はすごく有利なんだろうね。敵や獲物は存在がわからないから。問題はその他の殺し屋としての能力がカツジには皆無ってことなんだけど(笑)。いかんいかん、こんなにカツジをバカにしたり、先住猫と比べたりしちゃ。
◇殺し屋と言えば、「博多豚骨ラーメンズ」は6巻まで文庫本が出ていて、どーせ息切れしてひでえことになるんだろうとたかをくくりながら、全巻注文してしまったのですが、ネットの感想で読むと、評判はさんざんのようですね。ちょっと安心しています。あらら、でも今、別のところで見たらけっこう好評だったりして、あせる(笑)。
https://bookmeter.com/books/7928279
私は自分の意見や評価や趣味や嗜好が、世間と一致すると落ちつかないのよね。ほんとに小さい子どものころから、好きでたまらない小説や俳優や食べ物やその他もろもろが、ついでに言うと政党や思想の好みも主義主張も、どこがいいんだと人に言われ、さっぱりわからんと首をかしげられ、そうなることを予測して口にも出さずに一人でこっそり楽しんで、ごくたまに思いがけなく同好の士を遠くや赤の他人や敵の中に見つけて、ひそかに喜ぶ少数派というのが自分の中で定位置でした。
今でも覚えているのは、最初三人娘としてデビューして私の母なんか、ずっと桜田淳子と区別がつかないと言ってた山口百恵がどんどん頭角を現して人気が出て来たときの違和感ですね。私は見た最初から声も顔も口調も彼女が狂ったように好きで、当時の「週刊朝日」の小磯良平さんの絵で、彼女に似た顔の少女の表紙を切り取って額に入れてたぐらいでした。こんなに外見や見える部分が好きな人なら、たとえ中身がどうだめでも文句はないと思っていたけど、その後ずっと今にいたるまで、彼女の言動行動は寸分も私の好みを裏切らず、こんな人が現実に存在した時代に生きていられただけで、もう自分の幸運は使い切ったのじゃないかと思うぐらい私は満足しています。
が、しかし、だからこそ、世間が彼女を評価し支持し大スターになって行くのを見て、ものすごく微妙にどこかあせりましたねえ。いかん、私の目も好みも鈍ったぞ、世の中に追いつかれてしまった、って(笑)。
だもんですから、自分の好きなものが評判が悪いと、ものすごく「ああ、私はまちがってなかった、センスは鈍っていなかった」と、ほっとしてしまうんですよ。何だろねえ、この感覚は。とんがって、周囲となじめなくて、がりがり傷つけあって、ひりひり傷をなめていないと、どうにもこうにも落ちつけない。
◇ところで、行き当たりばったりに借りてきた、ロシア映画の「バタリオン」は、冒頭からおおっとのけぞる面白さの堂々たる大作でした。まだ30分ぐらいしか見ていないからどうなるかわからないけど、こういう映画、劇場でちゃんと公開してくれないかなー。最近のシネコンの大画面でやってる、ちまちました日本映画なんて、いい作品でも、別に大画面で見るようなもんじゃないと思うけど。むしろ小さなお洒落な映画館で見た方がいいようなものばかりでしょ。大劇場の大画面でやるべき映画は、こうやって世界ではいっぱい作られているんだろうに。