マダムとコミー
昔々も大昔の写真です。
まだカメラさえもあまり使われてない時代だったよなあ。私が大学生のころかな、つまり今から五十年も前、もう今は亡くなった小学校の同級生の近所の男子が撮ってくれた写真じゃなかったっけか。それをもらったのを、あとで私が写真屋さんで引き伸ばしてもらったけど、こんな程度の画像にしかならなかった。
それでも、田舎の家の座敷の壁に額に入れて飾ってたと思うんだけど、どこかに行ってしまって完璧に忘れていたら、昨日、片づけていたがらくたの中から、写真だけがぴらっと出て来た。
田舎の実家では代々たくさんの猫を飼っていたけど、これはその中でも歴史に残る名猫の「マダム」です。もうでかくなったのにお乳を飲んでる黒キジ猫は、彼女の娘の「コミー」です。
マダムについては、「雨の夜のある町から」の最後の方に登場しますので、よければ読んでやって下さい。ふっくらとした輝くような陽気で聡明で気概のある立派な大きな三毛猫でした。
娘のコミーは母親に比べると地味で、へまな猫でした。彼女も子猫を生んで育てていましたが、子猫たちが動き回ってどっかに行ってしまうのを、いつも苦にして、一生懸命、首をくわえて集めていました。一方、おばあさんにあたるマダムは、どたっと横になって、長いしっぽをぱたんぱたんと動かして子猫たちを何の苦も無く楽々と、あやしてやっていましたっけ。
子猫が大きくなると、親猫と不仲になって、どっちかが出て行ったりすることもあるのですが、コミーは自分が大きくなっても、ずっと母のマダムに忠実で、ぴったりくっついて行動していました。よその猫が庭に侵入して来ると、二匹で攻撃して高い木の上に追い上げ、下りて来られないように下で見張っていましたが、交代でごはんを食べに来ては、一方が木の下で見張りを続けているので、母たちがあきれたり感心したりして笑っていました。
コミーは多分病気で死んだんじゃなかったかな。よく覚えていないのですが。マダムは忠実な娘がいなくなっても、一人で長生きしていましたが、近所の犬とけんかして、かみ殺されてしまいました。そのへんのことは、「雨の夜のある町から」で、ごらん下さい。彼女は私にとって、故郷や生家や少女時代の象徴でもありました。
昨日は猛暑で、エアコンをつけっぱなしていても、上の家での作業ができず、へなへなとベッドで一日過ごしてしまったのですが、この写真が出て来ただけでも満足してしまいそうで自分が情けない。また額に入れて、どこかに飾るつもりです。片づけの方は、いよいよもう、後がないなあ。かと言って、熱中症で死にたくはないし、何かいい方法を考えなければ。