マブーフ。
◇「塀の中のジュリアス・シーザー」という映画がすっごく見たいんだけど、ネットで調べたところじゃあ、九州じゃやってないんだよね、まだ。その内にフィルムが回って来るんだろか。
まあ、それまでに「レ・ミゼラブル」もう何回か見に行きたいし、「ホビット」も見たいし。「スカイ・フォール」は見逃したみたいだなー。
◇レミゼ(ファンはこう言うらしい。笑)と言えば、原作の小説が机の上にあるんで、ついついだらだら読んでしまって、すごっく時間のロスになってる。だけどしかし、面白いったらない。
キャラママさんが読んだら、身につまされて涙しそうな、マブーフっていう学者のおじいさんの話なんか泣けるよ。
彼は植物学者として、ちょこっとは有名だった人だけど、もう忘れられて、ひとりで淋しく暮らしていて、本を読むのだけが楽しみで、政治体制はもうどんなのでも別にまったく興味ないんだけど、だんだんお金がなくなって、食べるものにも困ってきて、最愛の本を一冊ずつ売って行くんだよね。
そして、とうとう最後の本も売っちゃって、もうそこまでの話もいろいろ、やたら泣かせるんだけど(これって、ギッシングの「ヘンリ・ライクロフトの手記」の本を愛する老作家の姿とも重なる…あっちは幸福な老後だけど)、何の望みもなくなって、ぼーぜんと歩いている時、バリケードに行く学生たちのデモに遭遇して、黙ってその先頭に立つ。
何も知らない学生たちは、昔の革命の闘士か?とか思ってるんだけど、彼はそのまま、バリケードに行って、ほとんど最初の銃弾で倒れる。(あ、以下は映画のネタばれ)彼の遺体は学生たちによって、店の奥のテーブルに寝かされ、やがて、あの少年ガブローシュも死んでその隣に横たえられる。
天使のように美しいと書かれた、かのリーダーの青年アンジョルラスは敗北が決まって退却するとき、この二人…少年と老人の額に口づけする。それが彼の生涯でのただ一度のキスです。
マブーフはミュージカルにも映画にも、まったく登場してませんけど、そりゃそんな人たちまで描いてたら大河ドラマでも終わらん話だからそれでいいんだけど、いいなあ、こういう人物の描写。彼が何者なのかは誰も知らないまま、バリケードに来た事情も心情も誰も知らないまま。
こんな死に方、ちょっとしてみたい。てか、ほっといても、私もキャラママさんも、これに近い死に方しそうな気がする何となく(笑)。
あー、学生たちの中じゃ、何の役にも立たなかったグランテールの死に方もいいなー、考えてみると、私、子どものころ、こんなのばっか読んでたから、いろんな局面であわてなかったし、わりとすること迷わなかったんだよなー。
読んでると、ふるさとに帰ってきたような気がします、何となく(笑)。
◇キャラママさん。
もう、この10年の大学への処置のさまざまときたら、角をためて牛を殺すとか、赤ん坊をたらいの水といっしょに流すとか、そういう水準に近いですもんね。
私、絶対、こういう改革がはじまった最初は、政府や財界は、大学や知識人への憎しみがあったと思ってます。ほとんど、ポルポト政権と同程度の。ただつぶしたくて、ただ弱らせたくて、ただなくしたかった。そうとしか思えない。
それがある程度成功したから、残ったものを自分たちのいいように使えないかと思いはじめたのが、ここ10年ぐらいの大学改革なんでしょうけどね。憎しみや攻撃からはじまった介入や干渉が、何かよいものを残すわけがないじゃないですか。尊敬もなく愛情もなく関わっておいて、今さら役に立つ大学にしようなんて思ったって、もう遅いですよ、はっきり言って。
若者だって妻だって国民だって、手ごわい、荒々しいものと四つに組んでこそ、老人も夫も政府も強くなれるし、たがいの力がたがいの中に流れこむ。それを恐れて、自分がコントロールできないものの存在を許さなかったら、結局は自分以上のものは生れないし、その自分もどんどん貧弱になって行く。
まだ遅くないと、私も思いたい。