松江城の松の木
◎じゅうばこさん
で、紀行文の方ね。
今のところ、出雲の紀行を次々読んでいます。大半は森為泰という歌人の作品。いやもう、書くわ書くわという感じで書いています。清書するひまがないので、旅先の寺(神社だったかな)にこもって清書しようとしているのですが、それにも中途で挫折している。何しろ交友関係がものすごい。出雲(島根県)のあちこちを歩いていますが、宿にも泊まらず茶屋にも寄らない。どうするか?行く先々で知人がいて、いきなり訪問しても大歓迎して、昼食を出したり泊めたりしてくれる。
いきなり行くから主人が留守のことも多いんですよ。ほとんど留守じゃないかな。それでも妻とか母とか息子とかが大歓迎してくれる。何か、松江藩の歌所の訓導だった人らしいですが、それでここまで人脈ができるものでしょうか。すごい。
しょっちゅう歌会をするんですよ。そして、しょっちゅう弟子入りの申し出がある。いやもう、これを見ていると、日本の文化はすごい。俳諧もよく普及しているのはわかっていましたが、歌の底力もすごい。十一歳の男の子が、昔の子だから礼儀正しくて言い出せないが、作者の歌がほしくて回りをうろうろするから、作者も歌を書いてやる。家が去年燃えた人が土蔵も家も何もかも新築したので、それを見に行って例によって歓待されていると、その家を建てた大工が来て、その家を建てたという歌がほしいと望むので、作者は作ってやる。
もう何なの、これ。大工も子どもも歌をほしがるこの文化度。
森為泰が紀行を書いているのは幕末から明治にかけてで、明治の方が多いかな。「佐陀詣」という明治四年十月二十四日、佐陀の神在祭に詣でる紀行は短いですが、冒頭に家を出てすぐ振りかえった松江城の松の古木が皆伐採されている風景をいたく嘆いている記述があります。これなんか、なかなか貴重な資料じゃないでしょうか。その後、佐陀詣の人で街道がにぎわい、路傍でみかんを売る女性の姿なども描かれていますよ。
◎どうでもいい話をいくつか。
昨日の晴天を「有効に利用しましょう」とラジオは何やらSFに出てくる全体主義国家の放送のようなことを言っていました。ならばと思ったわけでもありませんが、カツジ猫がおしっこをして汚して、捨てようかなあと迷って床下に放りこんでいたカーペットとクッションを洗濯し、カイガラムシがついた玄関前のユキヤナギをノコギリと剪定ばさみでぎこぎこ切って、今朝小雨の中をゴミに出し、まあ私の有効利用は、こんなもんかなと思っています。
カツジ猫の歩くのをぼうっと見ていますと、「長靴をはいた猫」という童話ができたわけが、よくわかります。猫の後脚は、つけねの所がふかふかと毛でふくらんでいて、そこから丈夫で固い細い足が膝から下はまっすぐに、きゅっと伸びている。そして足先は靴の先のようにきゅんと巻き上っている。それがちょうど、昔のヨーロッパの男性が、ちょうちんブルマーのようなズボンとブーツをはいている様子に酷似している。アニメでなくても、あそこに細い剣をつりさげたくなるんだよなあ。
カツジのこの後脚がうまく写真にとれたらいいんですが、まあ無理だろうね。やっては見るけど。(笑)