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何と何と何と。

◇ずっと昔から、カリモクのがっしりした四角いテーブルと椅子のダイニングセットを使っていて、田舎の家やこちらの家を車で何度も移動し往復させて、あっちこっちで愛用していた。
ドライバー一本でテーブルが分解できるので、たやすく運べるのもよかった。

田舎の家の祖父の代からあった古い家具を、こちらの家に移したとき、人にあげたら即捨てられるだろうというもの(実際、昔使っていたなつかしいすきやき用の四角いテーブルなどは、一度庭のごみに出されているのを危ういところで救出した)を基本的には残して、他人が使ってくれそうなものは、泣く泣く田舎の家に残した。叔母の大きな茶色のソファベッドもそうだったし、このカリモクのセットもさんざん迷ったあげく、ついに田舎に運んだ(まだ心のどこかでは、あわよくばこちらの家に戻せないかとと思っている)。家具が減ってきれいに片づいた田舎の家では、正直、こちらの家でぎゅうづめになっているよりは、家具も生きてカッコいいのが、せめてもの慰めだ。

ところがショックだったのは、今回初めて、このカリモクのテーブルを田舎の家で組み立てようとしたら、ねじがゆるんで、側板や脚がきっちりはまらなかった。これまでこんなことは一度もなかったので、どうしたことかわからなかった。
少しゆるいまま、さしあたり物置き代わりの小部屋において、来る人には使わないよう頼んでおいた。

◇このところ、ありとあらゆる雑貨や家具を運んでは片づけているので、いろんなものが床に落ちている。どんなかけらでも破片でも用途不明のものでも、基本的に私は絶対に捨てずに保存している。
その中で、銀色の小さい筒のようなのがあって、私は昔の猫のどれかがつけていた、迷子カプセルの部品かなと思いつつ、例によって、そのへんの棚の上の更にひょいとのせて保存していた。

先日、布を張り替えてもらった椅子を、玄関から運びこもうとして狭い廊下でサンショウウオ状態の糞詰まりになり、悪戦苦闘したあげく、一部を分解してめでたく通過して奥に運びこんだ話はここでもしたが、その時に、ころんころんとねじ穴から何かが転がり出して、どうやらそれを横の穴から差しこんだ上で、ねじをしめないと、しっかり締まらないことがわかった。
無事にはめて、締めつけて、椅子もちゃんと元通りになったが、その数日後、玄関先で、それと同じ銀色の筒を拾った。あっと思ったのは、例のカリモクの机にもこれがついていて、運び出すときに外れて落っこちていたのだなということだった。

では、これと同じのをナフコで買って補充すればいいのだと、それを財布にしまってほくほくしていたら、その後、家の中を片づけていて、前に猫の迷子カプセルかなと思って棚にのせていた筒も、それと同じものだと気づいた。これで元からついていたのが、二個そろったわけだ。

さっそくナフコに行って、店員さんに見せたら、山のようにずらりと並んだねじの中から、同じのを見つけてくれて、浮かれた私は、絶対に生涯でもう二度と必要ないのに10個近くも買いこんでしまった。首狩り族みたく、ひもに通して首にさげとく気かしらんと、自分で自分をあざ笑いながら。

◇田舎に帰る時に使う大きなバッグにねじをしまって、今度帰ったらちゃんとねじを締めてやるからなと楽しみにしていたら、今日さっき、郵便局から帰って車から降りたら、足元の砂利になかば埋もれて、きらりんと銀色に光るものが。三個目だ。

あと一個はもしかしたら机にくっついて残っていたかもしれない。一か所だけきちんと締まったような記憶があるから(ちがうかもしれないけど)。ともあれ、三銃士か八犬士のように、ばらばらになった元仲間がこうしてそろったとは感無量だ。ってまあ、私も安直に感動するなあ(笑)。
でもこうなると、あの山椒魚戦争も、まるきり無駄ではなかったわけで、運命というものを感じてしまう(だから、大げさなんだったら)。

◇実は気軽に読めるものと、東直子「とりつくしま」の文庫本を一気読みしたのだが、ほのぼのもするし残酷でもあるし、でもすべてが涼やかで軽やかで、生者も死者も深いところで慰められるのが、これももしかしたら震災の日に読むのにふさわしい本かもしれない。
だが、また、それとは別に、断捨離をしにくくなる本かもしれない(笑)。死者が何か(無生物限定)にとりついて、親しい人のそばにいようとする、優しいかわいい、清々しくて心温まる話だから。

私はクモが好きじゃないので、殺さないまでも家の外に追い出すのだが、小さいかよわそうな、ぴょこぴょこはねてるハエ取りグモを、凍え死にそうな極寒の夜に戸外につまみだす時、毎回、昔の愛猫キャラメルや、祖父母や叔母たちが生まれ変わった姿だったらどうしようと、ちらと思わないでもない。しかし、それだったらゴキブリだってムカデだって、その可能性はあるわけだから、気にしていたらきりがないけど。

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カツジ猫