六年生の夏(21)
当時は風呂は皆、まきで焚いていました。ここで書かれているのは叔母の家の風呂ですが、伊佐子ちゃんが風呂焚きをしています。私も田舎の家ではよく風呂を焚いていました。子ども一人に火を扱わせるなんて、考えると大胆な時代です。
8月20日 水曜 天候◯ 起床9時30分 就寝10時30分
図画 色をぬる
食事がすんでから、庭へ出た。いちじくの木は、相変わらず、すました顔で突ったっている。下の方に一つ、少し赤くなったのがある。少し、青いようだったが、まあいいとあきらめて取って食べながら、今日の図画はどこを書こうかなと考えていた。台所でも書いてみようかな?。
足音がして伊佐子ちゃんが走って来た。「何、食べよるの、もうすぐ、夕ごはんよ。」そう言いながら、自分も一つもぎ取って、ムシャムシャやりはじめた。「何ね、人の事ばっかし、自分も食べよって。―何しよるの?。」
まったく伊佐子ちゃんは変な事をしていた。鉄のぼうをふろ場の火の中に突っこんで真っ赤に焼いているのだ。
「エヘヘへへ。面白いんよ。」と言いながら板切れを一つ持って来て鉄を当てる。ジューッと音がして煙が上がり、黒い穴が開く。伊佐子ちゃんがこっちを向いて、ニヤッと笑い、又、鉄を突っこもうとした時、手がすべって、足に軽い火傷をしてしまった。私は、死ぬほど笑った。
家や庭の広さということでなら、私の暮らした田舎の家の方がずっと大きく、広かったです。ただし暮らしははるかにつましく、切り詰めた生活でした。これは、私たちがいつも過ごしていた廊下で、多分私の知っている初代の猫ミイだと思います。こんなところでお目にかかれるとはねえ。