六年生の夏(20)
ここからしばらく、いちじくの木と私たちの格闘が続きます(笑)。ただ私にはこの一連のできごとが、すごいぐらい全然記憶がありません。これだけのことをしておいて。
8月19日 火曜 天候◯ 起床9時0分 就寝10時30分
図画 ひひょうする 形をとる
朝、散歩がてら庭を歩いていると、いちじくの木に気がついた。青い小さな実が一ぱいついている。うれたら、食べてやろうと思いながら木の回りをグルグル回っていたら、てっぺんの、一番高い所に、一つ、よくうれたのがあるのに気がついた。どうかして取ろうと思って下の方の葉を一まい引っぱって見た。何のきき目もない。今度は木のみきを、力一ぱいたたいて、こすって、又たたいて見た。そんな事ぐらいではいちじくは取れない。そこへ伊佐子ちゃんが来たので、二人で力を合わせて、みきを曲げ、かろうじてもぎ取った。ところがひょっと見ると、うれたのが、あっちこっちにポツポツなっている。そら、あれも取れ、これも取れと二人で大さわぎして、やっと九つ取った。冷ぞうこに冷やしてある。明日、ゆっくり食べる予定だ。
叔母夫婦は仕事の関係か、よく引っ越しをしていました。この家が、そのどれだったか、わかりません。叔母一家は当時としてはまちがいなく富裕層だったと思うのですが、それでも住まいはごらんのように、いつも質素でした。わりと最後まで、あまりインテリアに凝る人たちではなかったような気もします。そういう時代だったのかも。
もし、いちじくの木があったのが、この家だったとしたら、裏に庭があったのでしょう。その風景も、まったく覚えていません。家の内部の様子は何となく記憶にあるのですが。