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六年生の夏(24)

従姉の伊佐子ちゃんと私の、イチジクとの対決も、いよいよクライマックスです。
 この日記、普通は一日一ページ使って書いてるんですが、この日は二ページ使ってます。私も力が入ってる(笑)。
 あんまりイチジクの話が続くので、今日買い物に行ったとき、ついイチジクを一パック買ってしまいました。この地に来てもう何十年か、毎年イチジクをスーパーで買うんですが、昔、田舎の家でもぎって食べていたのとちがって、皮はよくむけないわ、あまり甘くもないわで、いつも物足りませんでした。

それがあーら不思議、本当に昔のようにきれいに皮がむけて、ぱっくり食べたら味もまた、昔田舎で食べたと同じ、濃い甘さとおいしさ。こんなの初めてです。時空を超えて日記の世界から飛んで来たのかな(笑)。このくらいおいしいと、幼い私たちのイチジク狩りへの執念もわかろうというもの。
 普通の「とよみつひめ」だったけど、産地がちがうのかな。あまりたくさん出ていなかったから、明日はもうないかな。もう一パック買いたい気もするんだけど。

8月23日 土曜 天候◎ 起床7時30分 就寝11時30分

図画 色をぬる

寝イスで本を読んでいると、伊佐子ちゃんが、片方の手に火ばさみをぶらさげてやって来た。何か用と聞くと、ニヤニヤしながらよう子ちゃん、ちょっと手伝ってくれんと言う。何をと聞くと、木のてっぺんの所に、それは良くうれたイチジクが一つある。どうしても一人じゃ取れないとむずかしい顔をして、考えている。
「なら、いいよ。私も行って手伝うから。」「本当?。そりゃ大助かりよ。とてもかんたんよ。ただ枝を下の方に引っぱって曲げとくだけだもの。さあ、早く来んね。ふろ場の方から回っておいで。」
庭に出ると伊佐子ちゃんはじれったそうに足ぶみしながら待っていた。「おそいのねえ!! 永久に来ないのかと思った。さあ、この枝よ。力一ぱい引っぱってよ。」「いやよ、こんな大きな枝?。折れないかしらん?。」「イチジクが折れるもんね!!絶対大丈夫よ。理科で習ったもの。イチジクは外国の何だったかしら、何でもいいさ、とにかく何とか言う木と一しょでね。昔から折れた事ないのよ。」
私が力一ぱい引っぱると、とたんにボキッと音がした。そしてメリメリバリバリバーンドサバサバサザーッとピストルをうったような音がして、木の半分がボッキリ折れて、私の上に、のしかかって来た。私は危く下じきになるはずだった。死にものぐるいで木の下からはい出して伊佐子ちゃんを見ると、ゲラゲラ笑いながら、折れた枝を調べて、イチジクを取っている。
私はそっちへ寄って行きながら文句を言った。
「大うそつき!!見てよ。イチジクがどんなにみごとに折れたか!!。」
伊佐子ちゃんはそれを聞くと一そう笑った。そしてイチジクを私の鼻の先に突き出してまあ食べろと言った。もちろん食べなきゃ損だ。私は食べながらおじを呼んだ。おじはすぐ来て、ひゃあ、こりゃどうもと言った。おばも来て、何ね、こりゃと驚いたようだった。それにしても伊佐子ちゃんの学校の理科の先生の顔が見たいものである。

写真は伊佐子ちゃん。カートの前に「ラクテンチ」の文字が見えるので、別府の楽天地のゴーカートかな。

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カツジ猫