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六年生の夏(28)

これも今となっては、なつかしい情景。

8月27日 水曜 天候◎ 起床6時0分 就寝10時30分

安本さんが来たので、二人で本を読んでいると、玄関がガラガラと開いて、「よう子ちゃん。」と声がする。あの声だと、松岡さんらしい。部屋に入って来て、「ふうむ、やっぱし、まあちゃんやったな。おれの予想は絶対くるわん。頭がねえ。おお、おお、おれの予想。」とわけのわからん事を言いながら、私達のそばに来て、「本か、トランプの方がいいぞ。皆、せんか。」と言う。皆と言っても、たった二人だ。決めるのはやさしい。私はすぐトランプを出して来た。三人とも、それぞれ一回づつ勝った。松岡さんと安本さんは、いつでも口げんかがたえない。「あっ、松岡さん、一回、ぬかしたで。」「おれがぬかすもんか。いつぬかした。」「ぬかしたあんた。なあよう子ちゃん。」「さあねえ。」「いいよ。今度二回すりゃいいんじゃろ。」「いいや、つまらん。よう子ちゃん、あんたも出したろ。取りよ。うちゃ9やった。へい、これでいい。さあ、置きない。」万事この調子だ。全くたまらない。

えーとですね、まずは方言から翻訳。「ぬかしたあんた」は、「抜かしたよ、あなた」が強まって「抜かしたったら抜かしたよ!」みたいな感じ。「食べたあんた」「行ったあんた」みたいに使う。「つまらん」は「だめ!」、「取りよ」は「取りなさい」、「置きない」は「置きなさい」。「せんか」は「しないか」ですね。
 何のゲームをしてたのかわからないけど、松岡さんが一回飛ばしたのを、安本さんが気づいて、その後で出した自分と私のカードを引き上げさせて、再スタートさせてるのですね。
 こうして書いて、読んでると、安本さんの声まで聞こえて来そうです。「まあちゃん」は安本さん、松岡さんは「よっちゃん」でした。思えば家族も友人もいなくなった今、もう私のことを「よう子ちゃん」と呼ぶ人もほとんどいないのじゃないかしらん。

わが家には、女子や男子がよく遊びに来ていて、私がうるさがって怒ったり、近所の他の子どもたちから集団で襲撃を受けたり、いろいろありましたが、とにかくしょっちゅう誰か来ていて、松岡さんも常連でした。彼はフェイスブックにもときどき来てくれていたのですが、最近はずっと音沙汰なくて、元気なのだといいけど、わかりません。同じく常連だった「ゆうちゃん」も、もういないしなあ。まあ、そんなもんですかね。

写真は、わが家(今は友人が買ってくれています)の玄関。二十年ほど前の写真かな。「ガラガラと開いた」格子戸は、、この時はもう新しくなっています。クリスマスの時らしくて、大きなリースがついてるけど、ふだんはもちろん、ありません。このガラス戸は多分今もそのままでしょう。

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カツジ猫