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処刑人Ⅱ・感想(つづき)。

つづけまーす(笑)。

ただ、今回私が、そんなことに気づいたのも、兄弟の方に目が行ってたからで、一作目ではそれをかすませるスメッカー捜査官のデフォーに目を奪われっぱなしだった。兄弟の軽い楽しいカッコよさを、全然かすませず、むしろ増幅しひきたてながら、それをしっかり受けとめて浮遊させなかった、スメッカーの存在は、デフォーの演じた役の中でも最高の部類に属する。ある意味、兄弟が普通に見えるほど、とんでもない異常で傲慢な天才で、ベッドで男と寝てようが、女装して敵の唇に吸いつこうが、もうまったく不自然でない説得力?は、ただもうすごいの一語につきた。

今回デフォーの代わりとして登場する女性捜査官も、よくがんばっている。見ている誰もがデフォーの演技を重ねてみてしまうという点では、こんな大変な役はない。それをきちんとやってのけ、そんなに不満も感じさせない。ほんとに、よくやっている。
よくやっているのだが、それでもやはり、それは不満がないというにとどまる。それだけでも大したものだが、あたりまえだが、ものたりない。役の上でも現実でも、彼女がデフォーのスメッカーを尊敬し愛して奮闘しているのが伝わるから、がんばってと応援してしまうのだが、それだけになお、スメッカーの不在が胸にしみる。その淋しさも効果となって映画の魅力を高めているから、確信犯の部分もあるが。

スメッカーは今回の映画にも、ちらと登場はする。いかにも円熟して、以前の狂気めいたすごさはないが、それだけに大物というか聖人というか、すごいものになっている感じは伝わる。デフォーは実は格調高い正統派の文芸大作でも、きちんと平気で楽々主役を張れる演技力を持っているので、そういう存在感も自然に表現していて、さりげなく観客を幸福な気分にさせもする。
多分、一番いい使い方をしているんだろう。第一作のような使い方をしないとすれば、だけど、あくまでも。

デフォーは前作でも、主役をかすませていたわけではない。ただ、今回は彼がいない分、主役二人に注目が注がれ、そうしてみたら、ちゃんと二人がそれなりにとても魅力的だったのは、第一作からそうだったのか、今回二人の演技も前よりよくなっているのか、いずれにしてもめでたいことだ。

この映画を見て、影響されて、暴力による世直しを自分もやろうと本気で思う若者は多分いないだろう。今はとても、そんなことを妄想して実行できるような世の中ではない。
だからこそ、そういうことをアピールしているように見せかけていて、この映画は、それとは逆の、あるいは、その手前のことを、若者もふくめたすべての人に呼びかけているような気がする。のんきに行こうよ、自由になれよ、楽しもうよ、とんでもないことを、きちんとやってみようよ、そういった程度のことを、せりふや設定ではなく、映像や演技や表現で。何かを訴えるのではなく、見る者が気づかずにしばられている、いろんなものを、ただするするとほどいて行くだけの映画。

ああ、ほんとにもう、このノリと精神で、「ロビン・フッド」の映画を作ってくれたらなあ。

キャラママさん。
それで、バギイちゃんの鳴くのは、やまったのですか?(笑)

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カツジ猫