出たな~
朝ドラ「虎に翼」が最終回に向かって、ますます充実して来ている。政治や社会や歴史を、背景でもなく小道具でもなく主役たちと、がっちり絡めて組ませて描いた新しさ。今の世の中を作ったのは勝者でも成功者でもなく、敗者や弱者や抵抗者の築いたものでもあったという、豊かな実感の伝達。過去が今を作り、今が未来を作るという盤石の事実の確認。無名のすべての人たちと結びつく記憶の糸の織りなしてゆく精緻さ。各俳優の演技の熱も切れ味も、それぞれにもう、凄みがあって圧倒される。
歴史的なドラマと思う。これが作られてしまった後、もう以後の作品も元には戻れないほどの視点と構成。
同性愛を堂々と普通に描くこのドラマに、思いがけない抵抗や反発も視聴者の中に見えたように、海外ドラマなどではとっくに珍しくもなくなっている、こういう姿勢や観点が、まだまだ日本では根づいていないのだと気づかされたように、さまざまのことをあぶりだしてくれたドラマでもあった。
最終回までの心配は何もしていない。むしろ私が怯えているのは、これだけ的確に日本の戦後と現在を描き出してくれたドラマに、もはや現政権とそれを支持するような人たちは、注目したし警戒するし、それにつながる今後の動きに、有形無形の圧力をきっとかけて来るだろうということだ。
思えば戦争反対や平和の希求は、程度や質の差こそあれ、朝ドラがずっと守って来た基本だった。毒にも薬にもならないぐらい日常にとけこんだものとして、さほど注目もされて来なかった。
これからは多分そうではない。また新しい戦場がひとつ生まれたのかもしれない。
などと緊張していたら、この終盤も終盤に来て、あの恐いミサンガ女性?が登場して、ここでやるかと、のけぞった(笑)。楽しみだこと。最後まで息が抜けない。