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博多座ミュージカル「三銃士」感想。

28日までやってるのかな。私、博多座の回し者じゃないけど、迷ってるかた、ひまな方、行かれて損はないですよ。面白かったです。

「三銃士」ものは、わりと見てるんですが、いつも思うのが、原作は相当いいかげんで、ぐちゃぐちゃなのに、基本的にバランスがよくてパワフルで、楽しめる要素が満載なので、現代風にでもどんなにでもアレンジできるし、どこにポイントをおいても、それなりに何とかなる。こーゆーのが、ほんとの意味での古典文学なんだろなー。

今回の舞台も、今風な視点を入れながら、よくまとまってたけど、これは原作がそれだけ豊かってこともあるんだろう。悪役ミラディーをフェミニズムとまでは行かないけど、女性の悲劇としてすごく同情できるように描いてるのも、うまく行ってた。すごく、現代的で自立した女性の悲劇に見えるのが、笑えたし感心した。
あれはそもそも、原作でも彼女は悪役になってるけど、そんなに悪いことしてるわけじゃないもんなー。あ、たしかに悪いことはいっぱいしてるけど、どういうか、異常な狂人とかじゃないもんなー。彼女にからむアトスやらダルタニャンやらが、けっこうひどいことしてるってのがあるしなー。

ダルタニャン役の井上何とか(ファンの人がたくさん来てたようで、名前も知らんと怒られそうだが)って人、あれは地なのか演技なのか両方なのか知らんけど、カルくて元気で、えーかげんな感じが大変ダルタニャンらしくて、よかった。
私は映画「仮面の男」は、銃士たちが老境という、ある意味キワモノなのにもかかわらず、原作の精神が最もよく再現された、三銃士ものの映画の中では一番好きな作品なのだが、ただ、文句はないけど、アトスのイメージだけは原作とかなりちがう。でもそれは、誰もがきっと言うことだろうが、あの映画じゃダルタニャンが原作のアトスのイメージなんだから、重ならないようにしようと思えば、ああなっちゃうのはしかたがない。

んで、今回の舞台では、ダルタニャンが原作どおりにしっかりむこうみずなアホ(笑)なので、その分ちゃんと、アトスがほぼ原作どおりの線でいけてた。やたらカッコよくて、大人で、深い悩みをかかえてるって、従来のイメージのままで、なかなかよかった。ときどきずっこけてる時もあったが、あれも原作のアトスがまじめで高貴が基本のようで、ちょこちょこぶっとぶ人なんだから、まったく、あれでいいんである。

その分、欲を言うと、ポルトスはもっと大兵肥満、アラミスはもっと線が細くて女性っぽくてもよかったかもしれないのだが、まあ、なかなかそういう俳優はそう、おいそれとはいないよね。
映画「仮面の男」でも、ポルトス役のドパルデューがそんなにでかかったわけじゃないし、アラミス役のアイアンズがそう華奢だったわけじゃない。それでもアトスとダルタニャンに比べて、もう二人とも原作そのものに見えたのは、演技のうまさもさることながら、やっぱり映画と演劇の差なんだろうか。舞台だと、ごまかしがきかなくなるものなんだろうか。でも、それは逆なのかな。わからない。

今回の舞台でもポルトスとアラミスは服装や演技で、かなりそれらしくなってはいたし、イメージも基本的には合ってるのだが、まあ要するに似たようないい男が三人そろってしまってる観はあった。その分見てて目の保養にはなるから、別に文句はありませんけど。

王妃の気品、コンスタンスの純情、国王のたよりなさ、バッキンガムのカッコよさ、ロシュフォールのすごみ、いずれも原作の描き方がはっきりわかりやすいから、やりやすくもあるんだろうけど、演出も演技も、イメージにあってて、見てて楽しく、多分演じてても楽しそうだった。あらためて、「三銃士って、いい意味で、やりやすい劇なんだなあ」と痛感した。いつの時代でも、どんな役者でも、新たな命を吹きこまれて、生き生きよみがえられる作品なんだって。
俳優たちの魅力を味わいに行く若いファンたちもうれしかろうが、そういう良質な古典の底力をまざまざと目で見て、体感するためにも、行ってみて、損はない舞台だ。

わー、長すぎた。いっぺん、切ります。

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カツジ猫