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博多座ミュージカル「三銃士」感想(つづき、これでおしまい)。

はい、つづけまーす。

枢機卿リシュリューは、原作でもそうだが、わかりにくい人物で、この原作のラフなようでしっかり描きこまれた時代背景を、一人で体現してみせてるような人物だ。映画「仮面の男」では、彼はもちろん、そういう要素が出てもこないのは、成功した理由の一つだろう。過去の友情、分裂する旧友の哀しみを基調にしたことが、あの映画を原作に忠実なものにしている。

今回の舞台では、リシュリューのそういう、あいまいさ、複雑さ、得体の知れなさはいっさい省いて、気持ちいいほど、ただの悪役で、それにふさわしい退場をする。快い娯楽作になるためには、それはしかたがない、正しい処理だろう。
でも、重要な役であることはまちがいない。演じた山口祐一郎は、今回の舞台では私が知っている唯一の俳優で(笑)、その昔、まだ若手だった彼が「ウェスト・サイド物語」でトニーをやったとき、「映画よりいいじゃん。あー、こういう人がトニーと思って見たほうが、あの話よくわかるわ」と思って見ていた正統派のハンサムだったが、しっかり重厚なおじさんになって、歌も迫力が増していた。彼がイギリスとの戦争の先頭にたって、「清教徒をほろぼせー!」と、迫力たっぷりに歌いあげる場面は、宗教の名のもとに戦争を遂行する権力者のすごみをあますところなく、ほとばしらせて、この華やかでにぎやかな芝居を、重厚な奥深いものにしていた。

原作がそうなのだが、軽薄で乱暴でむこうみずな明るさ、若々しい友情や恋を描きながら、どうかすると、統一感なんか知ったことかというぐらい、暗い沈んだ展開になる。その落差も、ちぐはぐにならず、うまくまとまっていたのは、これも原作の力か、いい舞台だったのか。全体に、弱点がなく、バランスのよくとれた、快適な芝居だった。
カーテンコールのあとに、三銃士とダルタニャンを演じた四人が、エプロンステージでトークショーとやらをサービスしてくれて、アトスはダジャレ、ポルトスはダルタニャンのものまね、アラミスはそのしょーもないやりとりに、自分でうけて、四人でじゃれあって笑ってたのが、妙に役柄そのものに見えて、めちゃくちゃかわいくて楽しかった。三銃士の話は、演じる人たちにも、こういう雰囲気をもたらすのかもしれない。

でも、あんなサービスをするぐらい、客の入りがいまいちなのだろうかと、ふと心配もしてしまう(笑)。けっこう客席はいっぱいに見えたが、帰りに予約状況を見たら、まだ空席はありそうだったし。
くりかえすけど、ほんとに私は博多座の回し者じゃないけど、興味のある方、行かれた方がいいですよ!

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カツジ猫