危うく泣きそう
昨日の虎に翼、さすがにやってくれました。私だけではなく、多分ほとんど誰も予想してない同性愛問題を、ここで登場させるとは。それも決して決めつけない、やわらかく微妙で繊細な配慮をしながら。中には、男装で硬派?のよねと一見バンカラの轟を、安易な恋愛関係に結びつけない作劇上の工夫じゃないかと、解釈している人までいるほど(笑)。そして結果として、この二人を多くの視聴者が夢見ていた、単純な恋愛関係ではない男女の絆に結びつけて限りなく満足させる。お見事というしかない。
その手腕にかぶとを脱ぎながら、個人的にはよりずしんと胸をなぐられ、いやはやほんとに涙しそうになったのは、壁にはった憲法を見ながら、よねが口にしたせりふ。「これが、ずっとほしかったんだ、私たちは」。
付け焼き刃ではない、スローガンではない、手垢がついたと感じさせそうな決まり文句ではない、これまでの長いドラマの展開から、いやというほど否応なしに必然的に生まれ出し、立ち上がってくる、このせりふ。
初めて日本国憲法の誕生の瞬間を目にしたような、気さえした。その直後、「できたら、自分たちで手に入れたかった」という、つぶやきの苦さと重さも、その輝きをかえって高めているようでさえあった。
適材適所に正しくはめこまれることば。それはどんなに型通りでも言い古された決まり文句でも、まっさらの新鮮な光とともに、不死鳥のようによみがえるのだ。
よねと轟の新たなスタートへの共感と祝福の嵐のようなファンサイトには、また次のような、私に似た驚きと感謝も書き込まれている。
◯壁に大書きされてる日本国憲法14条 「ずっとこれが欲しかったんだ、私たちは」 「これは自分たちの手で手に入れたかったものだ」 民法改正が成って14条の話は一段落かと思ったところでこの演出、痺れました。 しかも、よねの主語が「私たち」「自分たち」!!!!
◯憲法研究者(のはず)なのに、毎日 #虎に翼 で日本国憲法の素晴らしさを痛感しているワイ。 11条から14条の一気読み、素晴らしかったです!
◯まさか自分が生きてるうちに朝ドラで日本国憲法12条が全国津々浦々、各家庭の茶の間に届けられる日が来るとは、つゆほども思わなかった。
◯「「個人のための国家/家族か、国家/家族のための個人か」がずっと問われている。前者が憲法の思想だけど、後者にしたがる人達がずっと憲法を変えたがっている。寅子の「個人としての尊厳を失うことで守られても大きなお世話」最高でした。「個人の尊厳」は #憲法24条 の言葉です
◯ライアンと寅子のやりとりの途中から、神保教授登場まで粛然として観入ってしまった。 同時代ドラマ。戦後の民主化・革新を描くことで「戦前の美徳」とやらにしがみつく「いま」の為政者をはからずも炙り出してしまう。これは凄い。