大拡散!
◇政府が今回の共謀罪を成立させるための、重要な理由としていたのが、国連のテロ関係の条約に参加するために必要だ、ということでした。
そうしたら、その国連から、この共謀罪について、懸念を示す文書が送られて来ました。
新聞もテレビも、これをほとんど報道していません。
政府は求められた回答をするどころか、「個人の手紙にすぎない」として「抗議」しています。
信じられない対応です。国連を口実にしていながら、国連からの文書は無視や黙殺どころか攻撃しかえす。
国内では天皇を無視し、世界では国連を無視する。もちろん世論調査の結果にも目もくれない。安倍政権は自分たちをいったい何だと思っているのでしょう。
選挙で審判を下すのはもちろんですが、このままでは日本は世界からも孤立します。北朝鮮どころではありません。
◇以下は、福岡の市民連合の方から「大拡散して下さい」と回ってきた、国連からの文書の全文翻訳です。少しわかりにくいところもあるのですが、とりあえず見て下さい。これが「個人の手紙」ですか?
可能な限り、あらゆるところで拡散して下さい。それも大至急に。
世界が危惧して見守っている共謀罪は、日本国民の名誉にかけても参議院で時間切れの廃案に追いこみましょう。
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プライバシーに関する権利の国連特別報告者 ジョセフ・ケナタッチ氏
共謀罪法案について安倍内閣総理大臣宛の書簡全体の翻訳
翻訳担当 弁護士 海渡雄一・木下徹郎・小川隆太郎
(質問部分の翻訳で藤本美枝弁護士の要約翻訳を参照した)
国連人権高等弁務官事務所
パレスデナシオンズ・1211ジェネバ10、スイス
TEL:+ 41229179359 / +41229179543・FAX:+4122 917 9008・EMail:
srprivacy@ohchr.org
プライバシーに関する権利に関する特別報告者のマンデート
参照番号JPN 3/2017
2017年5月18日
内閣総理大臣 閣下
私は、人権理事会の決議28/16に基づき、プライバシーに関する権利の
特別報告者としての私の権限の範囲において、このお手紙を送ります。
これに関連して、組織犯罪処罰法の一部を改正するために提案された法
案、いわゆる「共謀罪」法案に関し入手した情報について、閣下の政府に
お伝え申し上げたいと思います。もし法案が法律として採択された場合、
法律の広範な適用範囲によって、プライバシーに関する権利と表現の自由
への過度の制限につながる可能性があります。
入手した情報によりますと次の事実が認められます:
組織的犯罪処罰法の一部を改正する法案、いわゆる共謀罪法案が2017年
3月21日に日本政府によって国会に提出されました。
改正案は、組織的犯罪処罰法第6条(組織的な殺人等の予備)の範囲を
大幅に拡大することを提案したとされています。
手持ちの改正案の翻訳によると、新しい条文は次のようになります:
6条
(テロリズム集団その他の組織的犯罪集団による実行準備行為を伴う重大
犯罪遂行の計画)
次の各号に掲げる罪に当たる行為で、テロリズム集団その他の組織的犯罪
集団(団体のうち、その結合関係の基礎としての共同の目的が別表第三に
掲げる罪を実行することにあるものをいう。次項において同じ)の団体の
活動として、当該行為を実行するための組織により行われるものの遂行を
二人以上で計画した者は、その計画をした者のいずれかによりその計画に
基づき資金又は物品の手配、関係場所の下見その他の計画をした犯罪を実
行するための準備行為が行われたときは、当該各号に定める刑に処する。
ただし、実行に着手する前に自首した者は、その刑を減軽し、又は免除する。
安倍晋三首相 閣下
内閣官房、日本政府
さらにこの改正案によって、「別表4」で新たに277種類の犯罪の共謀罪
が処罰の対象に加わることになりました。これほどに法律の重要な部分が
別表に委ねられているために、市民や専門家にとって法の適用の実際の範
囲を理解することが一層困難であることが懸念がされています。
加えて、別表4は、森林保護区域内の林業製品の盗難を処罰する森林法
第198条や、許可を受けないで重要な文化財を輸出したり破壊したりする
ことを禁ずる文化財保護法第193条、195条、第196条、著作権侵害を禁ず
る著作権法119条など、組織犯罪やテロリズムとは全く関連性のないよう
に見える犯罪に対しても新法が適用されることを認めています。
新法案は、国内法を「国境を越えた組織犯罪に関する国連条約」に適合
させ、テロとの戦いに取り組む国際社会を支援することを目的として提出
されたとされます。しかし、この追加立法の適切性と必要性については疑
問があります。
政府は、新法案に基づき捜査される対象は、「テロ集団を含む組織的犯
罪集団」が現実的に関与すると予想される犯罪に限定されると主張してい
ます。
しかし、「組織的犯罪集団」の定義は漠然としており、テロ組織に明ら
かに限定されているとはいえません。
新たな法案の適用範囲が広い点に疑問が呈されていることに対して、政
府当局は、新たな法案では捜査を開始するための要件として、対象とされ
た活動の実行が「計画」されるだけでなく、「準備行為」が行われること
を要求していると強調しています。
しかしながら、「計画」の具体的な定義について十分な説明がなく、
「準備行為」は法案で禁止される行為の範囲を明確にするにはあまりにも
曖昧な概念です。
これに追加すべき懸念としては、そのような「計画」と「準備行動」の
存在と範囲を立証するためには、論理的には、起訴された者に対して、起
訴に先立ち相当程度の監視が行われることになると想定されます。
このような監視の強化が予測されることから、プライバシーと監視に関
する日本の法律に定められている保護及び救済の在り方が問題になります。
NGO、特に国家安全保障に関する機密性の高い分野で活動するNGO
の業務に及ぼす法律の潜在的影響についても懸念されています。政府は、
法律の適用がこの分野に影響を及ぼすことがないと繰り返しているようで
す。
しかし、「組織的犯罪集団」の定義の曖昧さが、例えば国益に反する活
動を行っていると考えられるNGOに対する監視などを正当化する口実を
作り出す可能性があるとも
言われています。
最後に、法律原案の起草に関する透明性の欠如と、今月中に法案を採択
させようとする政府の圧力によって、十分な国民的議論の促進が損なわれ
ているということが報告で強調されています。
提案された法案は、広範な適用がされる可能性があることから、現状で、
また他の法律と組み合わせてプライバシーに関する権利およびその他の基
本的な国民の自由の行使に影響を及ぼすという深刻な懸念が示されています。
とりわけ私は、何が「計画」や「準備行為」を構成するのかという点に
ついて曖昧な定義になっていること、および法案別表は明らかにテロリズ
ムや組織犯罪とは無関係な過度に広範な犯罪を含んでいるために法が恣意
的に適用される危険を懸念します。
法的明確性の原則は、刑事的責任が法律の明確かつ正確な規定により限
定されなければならないことを求め、もって何が法律で禁止される行為な
のかについて合理的に認識できるようにし、不必要に禁止される行為の範
囲が広がらないようにしています。現在の「共謀罪法案」は、抽象的かつ
主観的な概念が極めて広く解釈され、法的な不透明性をもたらすことから、
この原則に適合しているようには見えません。
プライバシーに関する権利は、この法律の幅広い適用の可能性によって
特に影響を受けるように見えます。更なる懸念は、法案を押し通すために
早められているとされる立法過程が、人権に悪影響を及ぼす可能性がある
点です。立法が急がれることで、この重要な問題についての広範な国民的
議論を不当に制限することになります。
マンデートは、特にプライバシー関連の保護と救済につき、以下の5点
に着目します。
1 現時点の法案の分析によれば、新法に抵触する行為の存在を明らかに
するためには監視を増強することになる中にあって、適切なプライバシー
保護策を新たに導入する具体的条文や規定が新法やこれに付随する措置に
はないと考えられます。
2 公開されている情報の範囲では、監視に対する事前の令状主義を強化
することも何ら予定されていないようです。
3 国家安全保障を目的として行われる監視活動の実施を事前に許可する
ための独立した第三者機関を法令に基づき設置することも想定されていな
いようです。このような重要なチェック機関を設立するかどうかは、監視
活動を実施する個別の機関の裁量に委ねられることになると思われます。
4 更に、捜査当局や安全保障機関、諜報機関の活動の監督について懸念
があります。すなわちこれらの機関の活動が適法であるか、または必要で
も相当でもない手段によりプライバシーに関する権利を侵害する程度につ
いての監督です。この懸念の中には、警察がGPS捜査や電子機器の使用の
監視などの捜査のために監視の許可を求めてきた際の裁判所による監督と
検証の質という問題が含まれます。
5 嫌疑のかかっている個人の情報を捜索するための令状を警察が求める
広範な機会を与えることになることから、新法の適用はプライバシーに関
する権利に悪影響を及ぼすことが特に懸念されます。入手した情報による
と、日本の裁判所はこれまで極めて容易に令状を発付するようです。2015
年に行われた通信傍受令状請求のほとんどが認められたようです(数字に
よれば、却下された令状請求はわずか3%以下に留まります。)
私は、提案されている法改正及びその潜在的な日本におけるプライバシ
ーに関する権利への影響に関する情報の正確性について早まった判断をす
るつもりはありません。ただ、閣下の政府に対しては、日本が1978年に批
准した自由権規約(ICCPR)17条1項によって保障されているプライバシー
に関する権利に関して国家が負っている義務を指摘させてください。
自由権規約第17条第1項は、とりわけ個人のプライバシーと通信に関す
る恣意的または違法な干渉から保護される権利を認め、誰もがそのような
干渉から保護される権利を有することを規定しています。
さらに、国連総会決議A/RES/71/199も指摘いたします。そこでは「公共
の安全に関する懸念は、機密情報の収集と保護を正当化するかもしれない
が、国家は、国際人権法に基づいて負う義務の完全な履行を確保しなけれ
ばならない」とされています。
人権理事会から与えられた権限のもと、私は担当事件の全てについて事
実を解明する職責を有しております。つきましては、以下の諸点につき回
答いただけますと幸いです。
1.上記の各主張の正確性に関して、追加情報および/または見解をお聞
かせください。
2.「組織犯罪の処罰及び犯罪収入の管理に関する法律」の改正法案の審
議状況について情報を提供して下さい。
3.国際人権法の規範および基準と法案との整合性に関して情報を提供し
てください。
4.法案の審議に関して公的な意見参加の機会について、市民社会の代表
者が法案を検討し意見を述べる機会があるかどうかを含め、その詳細を提
供してください。
要請があれば、国際法秩序と適合するように、日本の現在審議中の法案
及びその他の既存の法律を改善するために、日本政府を支援するための専
門知識と助言を提供することを慎んでお請け致します。
最後に、法案に関して既に立法過程が相当進んでいることに照らして、
これは即時の公衆の注意を必要とする事項だと考えます。したがって、閣
下の政府に対し、この書簡が一般に公開され、プライバシーに関する権利
の特別報告者のマンデートのウェブサイトに掲載されること、また私の懸
念を説明し、問題となっている点を明らかにするために閣下の政府と連絡
を取ってきたことを明らかにするプレスリリースを準備していますことを
お知らせいたします。
閣下の政府の回答も、上記ウェブサイトに掲載され、人権理事会の検討
のために提出される報告書に掲載いたします。
閣下に最大の敬意を表します。
ジョセフ・ケナタッチ
プライバシーに関する権利の特別報告者