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守り抜くしかない

むかーし、三原順の「はみだしっ子」という漫画があって、主人公四人の最年少の少年マックスが言ったんだと思うが、「何で急行列車の料金の方が高いの? 乗ってる時間は短いのに」というセリフ(このままじゃない)があったっけ。

豪華客船なんて聞くだけでもうらやましい上に、よっぽどのことがない限り死ぬような危険はそれほどない病気の感染を警戒して、船内に足止めされて、することもなく何週間もぼうっとすごすしかないなんて、もうどう考えても天国じゃないかいいないいなと、恐ろしくて誰にも言えないようなことを、ずっとひそかに考えていたのだが、さすがにこう長引くと、そういう感想を抱くのもはばかられて来る。

することが何もなくて、ぼうっとしているしかない毎日なんて、今の私には夢のようどころではなく、豪華客船というからには図書室ぐらいはあるんだろうから、かたはしから本を読むか、今どきならスマホでも世界の古典は読めるだろうし、信用できないところは多々あるにせよ、ウィキペディアを読み漁って無用な知識を仕入れまくるとか、配偶者や同行者がいるなら、この際とことん話をするとか、相手の肖像画をスケッチしてみるとか、いろいろすることを考えるだけでも、うっとりとろけそうになるのだが、考えてみると、一人きりになる時間がないというのは、かなり厳しいかもしれないな。

亡くなった叔母は医者で、保険所長だった。こんな事態が起こったら、さぞ忙しくしていただろうと思いやる。いろんな病気が流行するたび、水際でくいとめるのに、関係者が必死で苦労しているのが、叔母を通して何となく伝わって来た。
今もそうやって日夜走り回っている人たちがいるのだろうと思いやる。私は幸い、映画とジムに行く以外にはめったに外にも出ない毎日なので、被害も苦労も今のところは皆無で、だからこそ最初に書いたような、のんきなことを考えたりもするのだが、ただ、思いがけないところで、この件に関して中国をはじめとした他国の悪口を聞かされることがあるのが、一番精神衛生に悪い。そもそも、原発事故の汚染水を海にだばだば流して、空気中にもまきちらしてる国が、こんなことで、よその国に何か言う資格があるものか。鏡を見てからものは言えよ。

今日は、パソコンの管理をお願いしている若い方に来ていただいて、あちこちチェックしていただき、今後の計画をいろいろ確認した。さまざまな展望はあるが、結論はもう私が寝食を忘れる勢いで、原稿を書いて書いて書きまくらなければならないということに尽きる。わお。がんばらねば。

去年の暮れから、誰もお客が来なかったので、猫のカツジは私以外の人間が家の中にいるのを見て、ちょっと喜んでるようだった。おまけに九条の会の事務局長もたまたま来て、先日の映画会の報告などをしてくれたので、カツジはまたまたそわそわと浮かれているように見えた。
映画会は思った以上の参加者で、赤字にもならずにすんだようだ。映画も好評だったとか。

感想は昨日ここでも書いたが、あとになるほど、いろんなことが胸にしみて来る。子どもたちがいまわのきわに、熱いとか苦しいとか言っていたのを思い出すと、演劇集団の「さくら隊」の人たちが被爆して死んで行った記録のことも思い出される。丸山定夫を初めとした演劇人たちが、被爆後に熱にうかされ、血を流して苦しみながら死んで行った情景が、あらためて目に浮かぶ。ガンマ線は内蔵を破壊し、助かったと思って逃げ延びた人たちの命もやがて奪った。丸山定夫、園井恵子、仲みどり、高山象三。覚えるともなく覚えてしまった彼らの名前を、私は心にくり返す。その凄惨な死を、断末魔の苦悶を。

大の男がのたうち回って苦しみ抜いて死んで行った、それと同じ苦痛を、おそらくは、あの子どもたちも皆、小さい身体で味わったのだ。そう思うと、怒りで目がくらみそうになる。大人が許せない。人間が許せない。今もなおこうやって、原爆を世界からなくせないでいる自分自身が許せない。

カミュの「ペスト」は残酷な死の場面はほとんどない。でも、その代表のような感じで、幼い男の子が苦しむ場面を一度だけ、ていねいに描きつくす。医師たちが苦労して作ったワクチンが少しだけ効果を生み、助かるかもしれないという希望が生まれて、その少年がペストにかかった後、そのワクチンで治療するのだ。病状は少しだけ好転し、彼はすぐには死なないが、苦しみ続ける。見守っている人たちの一人がつぶやく。「もしこれが駄目だったら、不必要に長い時間苦しんだことになるが」。実際にそうなる。たまらない。その場面もまた、重なって思い出される。やりきれない。

でも、落ちこんでいてもしかたがない。残った命を守るしかない。及ばずながら。自分をふくめた、すべての命を。

写真は、今日教えてもらって、初めてiPhoneから、パソコンにとりこんだ画像です。少し前に買ってきた、アップルキッズとかいう植物。実物もきれいだけど、写真もいいな。

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カツジ猫