小津久足資料集♪
月光の中、近くのポストまでハガキを出しに行って帰ってきたら、家の中で寝ていたはずのカツジ猫が、庭に出てきて、金網の中の棚から、じっと外を見て待っていた。私が家に入ると大急ぎで自分も入って来て、安心したようにドライフードの皿に頭をつっこんでカリカリ食べだした。
ちょっと、かわいらしいかも(笑)。
「雅俗の会」から、「小津久足資料集」が送って来た。わくわくして読んだ。「総説」の「小津与右衛門家の文事」で、久足研究を徹底的に究めている菱岡憲司氏が解説を書いているのが、久足の全体像をあますところなく描き出していて、読んでいて快く楽しくてしかたがない。
菱岡氏は外国語もできるし外国文学にも詳しいし、文学以外の本も多く読んでいる。映画や音楽も好む。そういう幅広さと深さが、十分に活かされている。今の小津家のご当主の話や、一族にあたる映画監督小津安二郎の発言など、すべてが取り込まれ、それはしかも、たくさんの資料と知識の中から精選され選抜されたものだということも推測できる。
何もかも、贅沢すぎる久足紹介だ。久足もどれだけ満足だろう。国史の分野から青柳周一氏が執筆して下さっているのもありがたいし、村上義明、吉田宰といった若い研究者たちが、ていねいな解題を書いてくれているのも、喜ばしい。
江戸時代の紀行の代表作家と私が雑な論文で指摘したことが、こんなに立派なかたちで証明していただけるのが、ひたすらに幸福である。
そしてそして、翻刻された久足の文章は、いつもながらどこもかしこも面白い。「諸国遊歴の安文人をよせつけてはいけない。かまどに入るし、食べ物を盗むし、勝手にふとんにのるし、上下のへだてはないし、その上ネズミも取らないから猫以下だ(私が、すごくてきとーに現代語訳しました)」とか、いろいろ固定観念がなく柔軟で、予想がつかない。読んでいて、いつまでも飽きない。
どうやら注文もできるようなので、詳しくはこちらを。何ていうか、これだけでも今日は本当にいい日だった♪